魔王を討伐した勇者パーティの生き残りは、最弱の俺だけだった
初投稿です。小説を書いてみたいな〜という気持ちがあったので練習にとりあえず書いてみました。
魔物を創造し、人類の生存圏を40%以上減らしたとされる有史以来最悪とされる魔王を討伐する勇者パーティ。
俺はその一員だった。
けれど、俺は他の勇者や僧侶、魔法使い達のように国に選ばれた最強の存在って訳ではない。
たまたま俺と冒険していた幼馴染が勇者に選ばれ、そいつと俺の約束があったから着いていった。それだけだ。
正直言って、俺は勇者パーティの中で圧倒的に弱いし、魔王との戦いでも俺の役割は勇者が回復するまでの時間を命懸けで稼ぐことだった。
その後、魔王の攻撃を受け、塔の下まで落下し、微睡みの中でアイツの勝利を願って……
気が付けば塔は破壊され、戦闘音は止み、目の前には俺の親友が座り込んでいたんだ
「良かった、生きてたんだ」
勇者は微笑む
「どうなった!?魔王は!?皆は!?」
「魔王は倒せたよ」
「でも、もう皆居なくなっちゃったんだ」
「私ももうこの怪我じゃ帰れない」
勇者の手が俺の手を握る
よく見ると、勇者は喋れているのが不思議な程に満身創痍だ。力も使い果たしたのか、聖剣の光も消えている。
「ずっと後悔してたんだ」
「君を巻き込んでしまったこと」
「だから、君だけは助ける」
勇者は穏やかな表情だ
脳が単語の意味を認識する。そうだ、俺も満身創痍だったはずだ。まだ体は動かないが、傷はほぼ消えている。
脳が状況を理解する。勇者は、自分に使うべき回復魔法を俺に使った。
脳が感情に支配される。
視界が滲む。
「俺は……いや、生き残るべきなのはお前だろ……」
今、俺はどんな顔をしているんだろう。
「君が居なかったら勇者なんて引き受けなかったって、前から言ってたよね」
「同じだよ」
「私だって生きて帰れるなら帰りたいよ」
「でも、君が生きてなきゃ意味がないんだ」
(私は勇者なんて器じゃないって分かってるでしょ!)
(でも、力があるなら……助けるためなら)
(私が勇者になるから、君も着いてきてよ!)
勇者の顔も、もうよく見えない
「俺だって……お前が居なきゃ……」
「そうなんだ、嬉しい」
「でも」
「また我儘を許して欲しいんだ」
「私の分まで、生きてよ」
握られている感覚が消える。俺は体が動くことに気づいた。俺から勇者の手を握る。まだ脈はある。
何かを言わなければいけない。
「俺に出来る事なら」
「何でもしてやるって言っただろ」
「だから」
生きてくれ。そう言いたい。
「だから」
「だから」
「安心しろ」
「ありが……と……」
勇者は瞼を閉じる。
騒がしさにハッと目を覚ます。
「また……あの時の夢を」
俺はどうやら、ギルドの酒場で突っ伏して寝てしまっていたらしい
勇者が死んだ後、なんやかんやあって五年が経った。
勇者パーティとしてほとんどの人に認知されていなかった俺は、国王にこそ感謝されたものの、今は日銭を稼ぐために一応冒険者として暮らしている。
「お兄さん、何も頼まないならそろそろ出て行ってもらいますよ」
「今日は外で魔王討伐記念日のパレードが行われているそうですし、見に行ったらどうですか」
入り浸り過ぎて顔見知りになってしまったウェイターが困ったような顔で言う
「生憎、子供の頃からパレードは嫌いでね。飲み物を何か頼むよ」
「はいはい」
ふと大きな音が聞こえた方を見ると、ギルドの扉が空いたらしい。何か言い争っているパーティが入ってくる。
「君が回復魔法を使えるって聞いたからパーティを組んだんだぞ!それなのに一回も僕の怪我を治そうとしないじゃないか!」
「だから!回復魔法は使える時と使えない時があるの!何度もそう言ってるでしょ!」
「一回も使えた試しがないじゃないか!もういい!真剣にやらない奴となんかコリゴリだ!今日でパーティ解散にする!」
「こっちこそあんたみたいな勝手に突っ込んで怪我する奴とは願い下げよ!」
どうやら、希少な(勇者パーティには二人もいたが)回復魔法の使い手らしい。
回復魔法の不発(雰囲気に不発かどうかすら怪しいが)には心当たりがある。
「なぁ、君」
思わず声をかけてしまう
「何よ、いつも酒場に居るオッサン」
「うっ、時々は依頼も受けてるさ……」
「それより、回復魔法の失敗の原因は分かってるのか?」
「俺の昔の仲間が回復魔法を使っていたから、アドバイス出来るかもしれない」
何故だろう。普段はこんな事する訳ないのに
「分かってなかったら回復魔法が使えるわけないでしょ」
「回復魔法を使ってくれる仲間がいたのにそんな事も分からないの?」
強い言葉が俺に刺さる。
「すまなかったよ」
「でも」
「知ってるなら、彼にも歩み寄ってよかったんじゃないか?」
「最初から拒否していたら、いつまで経っても変わらないだろう」
「アイツみたいな人の話も聞かない奴には」
「何百年経ってもどうせ成功しないわ」
「それと」
「なんで私に声をかけたのかは知らないけど」
「あんたみたいなだらしない人間にも永遠に成功しないでしょうね」
言葉のナイフを嫌という程投げ、彼女はスタスタと行ってしまった。
「珍しいですね」
「普段はパーティを組まないどころか、人ともほぼ話さないのに」
「というか、大丈夫ですか?回復魔法どころかかなりダメージ食らってますけど」
ウェイターが果実水を持って来て言った。
「そうだな」
「柄にもなく的外れなアドバイスなんてしようとしちまって」
俺は何をしているんだろう。
「まあ、良い薬になったんじゃないですか?」
「最近は依頼も全然やってないですし、これを機にもっと働いて酒場にお金を落として下さい」
「仮にも上級冒険者なんですから」
そうだ、彼女の言葉は俺にかなり効いた。
勇者が死んでから生きがいのようなものを見失い、ギルドマスターに働けと愚痴られても、昔の知り合いに変わったねと言われても、生き方を変えられなかった俺がだ。
回復魔法。相手に対する思いやりが現れる魔法。
俺にとっては。
勇者に託された思いそのもの。
多分、俺は彼女と勇者を重ねてしまったのだろう。
そして、思い出したのだ。俺は。俺は……
「安心しろ」
「え?」
「ああ、ごめん。口に出してしまっていたか」
「急に変なキメ顔でキメゼリフ言われたらビビりますって」
「どうしたんですか??」
「昔の仲間とした約束を思い出したんだ」
俺は、お前の分までちゃんと生きてやる。そうだったよな。
「ギルドマスターに伝えておいてくれ」
「これからは龍の討伐だってなんだってやってやる」
「パーティも適当に見繕っておいて欲しい」
「いや、私ウェイターですので」
「いやいや、俺が上級なの知ってて仕事急かしてくるのなんて、ギルドマスターの遣い以外有り得ないだろ」
「てことでよろしくな、今日は適当に外で熊でも狩ってくる」
そう言ってギルドを出る。外のパレードは終わったようだが、勇者が生きてたら見たがっただろうか。
何はともあれ。
「俺の、いや」
「俺達の戦いはこれからだ!」
「いやいやいや、本当に本当のウェイターなんだけどなぁ」
「というか、やっぱり覚えてくれてないんだ」
「あの時、上級の魔物から助けてくれたの」
後から読んだら恐ろしく短くて愕然としました
小説書いてる人ってやっぱ凄いんですねぇ