影は常についてくるが、見ようとしないと見ない。
不可解な経験。いつもより長めの睡眠。
現在の時刻18時。奇妙な体験は1時間の間に起きていた。
人生で一番濃い時間。楽しい時間。キャバ嬢に話すには勿体無い大切な時間。
不可解な考えを突きつけられて15分後に僕は
僕「腹がへった」
腹が減っていた。
パニックは一切無い。転生した事実を受け入れられるか?って聞かれたとしたら、考えてもいないと答える。
とりあえず僕は腹を満たすためにコンビニに向かっていた。
夕日は沈み空は茜色に隠れていた。
久しぶりに見た空は少年時代を思い出させた。
家に帰らないとと思う反面、帰りたくないと思っているあの頃を。
コンビニに着いた。週刊誌の巨乳の表紙を横目に飲料コーナーへ。
ほろ酔いの新商品が入荷していた。アルコール度数3%の雑魚だ。
大学時代に公園で飲み会をしたことを思い出した。
「えへへ」と普段以上に笑う彼女は白いほろ酔いを持っていた。
働いてから僕は9%でしか酔えないようになった。
どんなに忙しくても仕事終わりはストロングのロング缶を開けていた。
僕「元気にしてるかな」
下心が有ったのは認める。
酒を飲むと大胆に成ると言うことは聞いていた。
でも今考えると、嫌いな奴とサシ飲みしないんだよ。
ホワイトサワーと牛丼をレジに通す時に
店員「煙草はこちらですか?」
25歳ぐらいの女店員がメビウス10mgを指差す。
僕「あ、まだ有るので大丈夫です」
店員「この時間に来るの珍しいですね!」
なんだこいつ、僕ってそんなに目立ってたのか? もしかして臭いか?
店員「あ!すみません。いつも11時ぐらいに来るので、つい」
僕「いや、大丈夫だよ」
よくよく考えたらいつも会社からの帰路で毎日通ってたからな。知ってても当然か。
それにしても・・・
会計を済ませた僕は家に向かって歩いていた。
もう街頭の光だけが辺りを照らしていた。
ふと道路の向かいに目をやると公園がある。街頭は木の枝に隠れて薄暗く光っている。
この街に引っ越して一度も行ったことのない公園。足はもう道路を渡りきっていた。
ベンチに腰を掛け、袋からホワイトサワーを出す。
プシュ。懐かしい甘い匂いがした。口につけて煙草に火をつけた。
ため息と共に白い煙が出る。
それにしても・・・さ。
僕「さっきの・・・子、少し似ていたな」
大学のときのあの子とコンビニの子がどこか重なる。
仲は良かったが普通の関係。好きだったのに、もっと一緒に居たいと願いながら変えられなかった関係。
だけれどもあの頃、僕らは幸せだった。きっとお互いに・・・。
気がついたら涙が出ていた。
なぜだかよく解らない。懐かしさに浸ったせいかもしれない。
いや本当はずっと引きずっていたのかもしれない・・・。
僕「帰ろう」
ベンチから立ち上がってホワイトサワーを飲み干す。
最後の一口はもうぬるく成っていた。