明確な欲望と不可解な真実
人は実際に見たものを否定することが出来るだろうか。
宗教、オカルト、ニュース。何もかもが「でも、実際に見た」と言う一声だけで証明できる。
神を見たと言えば何千年も神は存在し続ける。
幽霊や、それがフェイクニュースだとしても人間が信じるためには十分過ぎる。
何故かって?
無いと証明することは出来ないからだ。
カーテンから漏れる朝日に起こされた。
いつ以来だろうか、携帯の目覚まし以外に起こされたのは・・・。
・・・もしかして、今ヤバイ?
いやいや!夏だし昨日よりちょっと日が早くなっただけだ!
そう思ったが一つ不可解な事が有った。
僕の家、このアパートは事故物件じゃないのに普通より家賃が安い。
理由は立地だ。
窓は一つしか無く、入ってくるのは西日・・・・・
僕「遅刻してんじゃねえか!」
急いで携帯を見た。
会社から鬼のように電話が来ている。
ヤバイな・・・入社以降初めて遅刻した。しかも8時間ぐらい。
僕「とりあえず、電話だよな」
着信履歴を指で触ったと同時に携帯のバイブが震えた。
「会社」の2文字。
僕「・・・」
もちろん大きい声で携帯から
「おい!何やってんだ!。お前何時だと思ってんだ?お前みたいなクズは働かせて貰えるだけ有り難いと思え!今すぐ走ってこい!」
とてもうるさかった。
僕「うっせんだよ!クソ野郎」
・・・僕は自分の言葉が理解できなかった。
うっせんだよ?クソ野郎?
なぜそんな事を言ったのか全くわからない。
なぜそのまま電話を切ったのか全くわからない。
なぜその後携帯を便器の中に投げ捨てたのか全くわからない。
だけれども何故か一切の罪悪感を感じない。
僕は胡座をかき目を閉じて、今の状況を考えてみた。
現在の時刻は17時。天気は晴れ。
昨日買ったストロングのロング缶、新箱のメビウスが2箱・・・違う!そうじゃない。
上司にクソ野郎と言った・・・トイレに携帯を投げ入れた・・・手を洗わないと・・・違う!確かに洗ってないけど!
携帯電話には便器の10倍の細菌がついている・・・違う!手はちゃんと洗うって!
クソは便器の中に投げ捨てるだろ?・・・確かにそうだと思うけど・・・
おかしい、僕の頭の中がおかしい。
会社の事を考えようとしていない。
・・・ん?
と言うか会社の事を考える必要有るのか?
考えても答えは浮かばない。
手を洗った後に煙草を吸う。
久しぶりの休日。正しくはクビだけど。
口から離した煙草からドーナツ型の煙が一つ上がり、換気扇に吸い込まれる。
ヤニクラを起こしたせいで視界が少し揺れている。
ベッドの一部が黒く見え、一瞬だけしっかり見ることが出来た。
姿を表した「それ」は口を開けて死んでいる僕だった。
僕「え・・・」
その時僕の頭の中に一つ不可解な考えがよぎった。
もしかして僕は「目が醒めたらこの世界で昨日の次の日にそのまま転生していた」のではないかと。