9話 陰謀
「実はだな。小僧を封印し地下牢へ
閉じ込めたのは帝国バロキアかもしれん。」
「帝国バロキア…このガルバイン王国と並ぶ
戦力を持つと言われる帝国が何故?」
「…私の推測通り、帝国が絡んでいるのだと
したら、王国の上層部に帝国との繋がりを
持つ者が居るのだろう。」
「つまり…帝国のスパイ…。」
「まぁ、まだ確定した訳では無いが私は
もう少し、この国の上層部に探りを入れてみる
つもりだ。」
「お願いします。ですが、どうして俺の為に
そこまで…?」
「何、小僧の為だけでは無い。前にも
言うたと思うが、貴様の知識と能力は
私の研究に役立つかもしれん。そして
小僧にかけられた封印魔法が私の研究の
邪魔になるのなら、排除するのは当然だろう?
それに…」
「何か気になる事でも?」
「うむ…。いや、これ以上は辞めておこう。
無駄に不安を煽る事も無かろう。
しかし、小僧よ。用心するに越した事はない。
敵となる者が身近に居てもおかしくない。」
「分かりました。肝に銘じておきます。」
少しモヤモヤとした気持ちは残るが、
ユーゴはミゼラと話し終えアウラ達の元へと
戻った。
────ニュー・ファーリア家、テラス。
「遅かったじゃありませんの!一体母様と
何を話してらしたの?」
物凄い剣幕のアウラ。
リーシャもアウラ程では無いが不満げである。
「大した事じゃない。少し相談事をしていただけ
だよ。」
「へえ〜?」
リーシャはたまに不思議な所がある。
全てを見透かしている様な、そう感じさせる
雰囲気を出す。
「まぁ良いじゃねーか!んでよ、さっき
ユーゴが居ない間に話してたんだが
これから街に出かけないか?」
「これから?俺は構わないが、アウラは
良いのか?」
アウラは小首を傾げ、何故自分から
了承を得ようとしているのか分からない
様だった。
「いや、折角自宅に招いてくれたのに
外へ出掛ける事になって不満に思わないのか…
と、思ってな。」
そう言われアウラはようやくユーゴの
言葉の意味を理解した。
「ええ、かまいませんわ!(少し惜しい気は
しますが……。)」
「なら良いんだが…具体的に何処に行くんだ?」
「オイラは本屋に行きたいっす!」
「俺は武具店だな!」
「私は兄さんが行きたい所なら何処へでも!」
「わ、私もユーゴが行きたい所なら何処でも
かまいませんわ!」
「何を熱くなってるんだお前達…」
「いやいや、お前さんよ〜。」
「こおゆうの何て言うんすかね〜。あ、
朴念仁っす!」
「なっ?!」
「兄さんの朴念仁っぷりは今に始まった事じゃ
あるまいしね〜。」
その言葉に皆はヤレヤレと言う様な顔で
納得している様だ。
「ん、ゔん!」
ユーゴは軽く咳払いをし、続けた。
「俺は───────。」
─────ガルバイン王国・城下町
町中は活気に溢れ、何処の店も繁盛している。
人族、獣人族、様々な人種の者達も皆笑顔に
暮らしていた。
そして、ディオン達の行きたい所を順に
周る事にした。
本屋、武具店…そして──────。
──────カフェ・オールタイプ───────
ここは、全ての種族が集まる町の人気カフェ。
スウィーツメニューが多いこの店は女性から
人気が高くて有名店である。
「ここが、ユーゴが来たかった所…ですの?」
「あぁ…男だけじゃ中々来れない場所だろ?」
「確かにそうだけど、兄さんがこおゆう
店を知ってた事には驚きだわ…」
「へえ、随分可愛い店だな!でも丁度
腹減って来た所だったから助かるぜ!」
「さぁ、何か頼もう──────。」
それぞれがメニューを頼み、それぞれの品を
楽しんだ。
ただ1人を除いて───────。
───────同時刻───────
「─────そうか。そろそろ潮時…か?」
「そうね。私達で終わらせましょう。」
─────────────────────
「今宵の会議であの邪魔者を排除出来るか?」
「たかが女狐1匹の為に会議を開かせるとは…。」
「ヒッヒッヒ。まぁ良い。それも今宵迄じゃ。」
「しかし、くれぐれも奴には気取られぬ様に
頼みますぞ。」
─────────────────────
「…後は頼んだぞ…小僧よ。」
──────カフェ・オールタイプ──────
「あー、美味しかったー!」
「中々に美味でしたわ!」
「じゃあ、そろそろ出ようか。」
───────カラン、カラン。
「おい、あいつらって…」
「あぁ、そうだな。話にあった奴等の特徴と
一致している。」
「へっ。やるか。」
────ユーゴ達は外を歩く内に人気の無い通りに
出た。
そして、ソレは待ってましたと言わんばかりに
待ち構えていた。
「へっへっへ。お前がユーゴ・ニルヴァーナだな
?」
「そうだが、お前以外にも居るだろ?
隠れても意味を感じないが…」
「ちっ。ガキが調子に乗りやがって!」
「少し魔力が高いからって良い気になるなよ?」
「ふん。後ろの嬢ちゃん達にもタップリ
可愛がってもらおうぜ!」
「下衆な奴等め。そんな雑魚っぷりを披露
してるからこんな待ち伏せ攻撃しか
出来んクズ扱いされるのが分からんのか。
リーシャ、アウラ、下がっていろ。
念の為、防御魔法を唱えておいた方が良い。」
「ええ!」
「分かりましたわ!」
「やっちまえ!野郎ども!」
「ふん、台詞まで雑魚に相応わしい事だ。」
「何だと、こんのガキがあ!!!!!」
一斉にユーゴに襲い掛かるチンピラ達。
しかし、ユーゴは息をするかの様に次々と
攻撃を交わしていく。
「ちょこまかと…こうなったら…」
数人がリーシャ達を囲む。
「リーシャ!アウラ!防御魔法展開!」
「ー我が身を守れー【防御壁】!」
「魔法陣無しだと!?」
「ふん。腕を上げたな2人とも。よし、
行くぞチンピラ共!」
「ー我が足に宿れー【瞬足】。」
ユーゴの足に風が集まり、皆の視界から消え
次の瞬間…散らばった賊の背後を取り次々と
蹴り上げ一箇所へと集めた。
「目で追えない…だと?!」
「ー目の前の敵を閉じ込めろー【冰牢獄】!」
辺りの気温が急激に下がり
天から大きな氷柱が複数降り注いで
敵を一網打尽にした。
「な、何なんだ…このガキ共は…」
「お前達の言う通り、少し魔力の高いだけの
ガキ共だよ。」
「ユーゴ〜。【防御壁】かけてても
寒かったですわ〜。」
「鍛え方が足りないのよアウラわ!」
「五月蝿いですわ!」
「よし、こいつらをどうするか…」
「そりゃ勿論憲兵に突き出すでしょ?」
「その前に聞くべき事が幾つかあるからな。
リーシャとアウラは辺りを注意しといてくれ。」
「分かりましたわ!」
「さて、お前達は俺の事を知っていたな?
誰に頼まれた?目的は何だ?」
「お、お、教える訳無えだろうが!てか、この
氷の檻から出せ!」
「喋るまで出す訳無いだろうが。さっさと
話さないと凍り死ぬ事になるぞ?」
「畜生が…俺達はある方に頼まれたんだ。」
「ある方?誰だ。」
「それは───────。」
───────その頃。
「なぁ、ディオン。お前さぁ、もう無理だろ。
誤魔化すのは。」
「な、何の話っすか?急に…」
「俺も気付くのには時間がかかっちまったけどよ
〜、多分ユーゴはとっくに気付いてたと思うぜ?」
「だから、一体何の話してるっすか!」
「もう隠しきれねえだろうがよ!その眼の色は
よ!」
魔人族はある特殊な状況下に置かれると
眼の色が紅く染まる。
そして現在、ディオンの目は─────。
──────王国7人会議──────
「今日の議題だが…最近、王国内で
コソコソと動き回ってる件についてだが…」
「分かっているな?ミゼラ・ニュー・ファーリア
よ。」
「───────あぁ、分かってるとも。」
─────────────────────
その日、ミゼラ・ニュー・ファーリアは
投獄される事となった───────。
第9話も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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次回、学院編10話 魔人
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