8話 昇級試験
───────Dクラス学院寮───────
ガルバイン国立学院には、各クラス毎に
クラス分けされており、それは学院寮でも
同じくDクラスにはDクラス専用の寮があった。
ユーゴが寮生活を始めて数ヶ月が経ち
実質、半年間しか学院生活を送っては
なかったが、入学して1年が経とうとしていた。
そして───────。
「兄さーん!」
寮の外から声が聞こえて来る。
窓を開けてみると───────。
「あ、兄さん!学校遅刻しちゃうわよー!」
「リーシャか。おはよう。」
───────。
「寮生活も数ヶ月もあれば慣れてくるもんだな…」
「お、やっと起きたかユーゴ!」
「おはよう、ヒューズ。」
(ヒューズ。寮生活初日にルームメイトとなった
Dクラスの生徒。基本的には良い奴だが…
暑苦しさは否めない。)
「いやあ、お前の妹もまぁ良く毎日迎えに
来るよなぁ!成績優秀、容姿端麗!
この、羨ましい奴め!」
「そうだな。俺には勿体ない妹だよ。」
「その余裕さが腹立つ!」
「相変わらず正直者め。」
───────ダッダッダッ。
「ユーゴ!」
「おやおや、またしてもユーゴガールズが来まし
たよっと。」
「アウラ。おはよう。そんな慌ててどうした?
それにここは男子寮だぞ…」
「あら、ヒューズさんもいらっしゃったんですの
ね。お二人ともおはよう御座います。
じゃなくて!門前で待っててもいつまで経っても
いらっしゃらないので迎えに来ましたわ!
ヒューズさんもいらっしゃるんでしたら
何で一緒にだらだらしてるんですの?」
「あー、えーっと、見てて楽しいから?」
「何が楽しいんですの!」
「直ぐ支度するから外で待っててくれ。」
そう言い、アウラは渋々、外へと出て行った。
ユーゴも支度を終え、ヒューズと共に寮を出て
外で待たせていたアウラとリーシャと合流した。
2人は相変わらず口喧嘩をしていた。
「ユーゴも鬼だよな、あの2人を同じ空間で
待たせるなんて…。」
最早、アウラとリーシャの馬の合わなさは
学院の名物と成り立つある。
「お前達…もう少し仲良く出来ないのか?」
「無理ね!」
「無理ですわ!」
「息ピッタリじゃないか。」
「やっぱ鬼だ…」
と言いつつ、この状況を楽しむヒューズだった。
───────ガルバイン国立学院───────
「じゃ、兄さんまたね!」
「あぁ。」
───────Dクラス。
「ユーゴ、ヒューズ、アウラさんおはようっす!」
「おはようディオン。」
「いよいよ今日っすね!」
「昇級試験かあ。そう言えば今日だったな!」
「貴方、そんな事で試験に臨む気でしたの?」
────そして、始業のチャイムが鳴り
教師もやってきた───────。
この学院では年齢問わず昇級試験は1年に1度
行われる。
そして、成績次第ではDクラスから
飛び級でSクラスになる事も可能で、
昇級試験は任意で受ける事が出来、
卒業以外は学院の退学も在学も自由である。
しかし、Dクラスで卒業するのと
Sクラスで卒業するのとではその後の
地位や権威、働き口なども左右される。
試験内容は魔法構築学、体術、魔術の3つ。
(この半年、ディオンやヒューズ、アウラ達と
共に過ごしてきたが恐らくSクラスにも
届く潜在能力がある。
まぁ、どちらにせよ試験も難なくクリア
出来るだろう。)
───────試験開始。
始まった試験も難なく解け、体術、魔術共に
満足のいく出来で、ヒューズを除き
ディオン、アウラも満足げである。
───────試験終了後。
「いやぁ、試験も終わったっすね!」
「楽勝ですわ!」
そして、─────ヒューズは燃え尽きていた。
「終わった…色んな意味で終わった…」
「ユーゴに散々しごかれた体術と魔術は余裕
だったけど、魔法構築学が…。」
「まぁ、昇級は総合点数で決まるんだ、まだ
捨てたもんじゃないだろ。」
「そうですわ、気にしてても仕方ありませんわ!」
「そうっすねぇ、こればっかりは試験結果が
出るまで考えてても仕方ないっすよ!」
「…だなぁ。」
試験結果が出るのは1週間後。
それまでは自由に過ごして良い事になっている。
「ユーゴ…良かったら試験結果が出るまでの
間にお暇がありましたら…是非私の家に…」
「お!アウラの家か!良いじゃねーか!」
「急に元気になったなヒューズ…」
「だってずっと寮生活だったからよ〜。
誰かの家に行くって楽しそうじゃん!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいな!私は
ユーゴを…」
「へえ、皆行くならオイラも行ってみたいっす!」
「ですから…!」
アウラの思惑とは違う方向で話は進み
皆でアウラの家にお邪魔する事になった…。
────アウラ家、門前──────
「おー!でっけえ家だなあ!」
「流石、ニュー・ファーリア家って感じっすね!」
(ニュー・ファーリア家…つまりミゼラ学院長
の…流石に家に居るって事は無いだろうが…。)
少しして門が開きアウラが出迎えてくれた。
普段の制服とは違い、華やかさの中にも
色気がある銀髪が映えるワンピースで
髪も普段は下ろしてあるが、アップにしてあり
新鮮な姿だった。
すると、ユーゴの後ろから…
「馬子にも衣装ね!」
「何で貴女も居るんですの?!」
「あら、言ってなかったかしら?兄さんが
行くなら私も行くって言わなかった〜?」
「そんな話1度もしてませんわ!」
結局、学院の外でもいつも通りの光景である。
2人とも言い合いで既に消耗し切っていたが
とりあえず家に上がる事になった。
「…はぁはぁ。とにかく、ようこそ我が家へ
いらっしゃいましたわ皆さん!」
(本当はユーゴだけを招待するつもりでしたが…)
「流石アウラだな。」
「え?」
「何を着ても良く似合う。そしてこの広い屋敷
にもピッタリな印象だ。」
アウラ、リーシャ(な、な、何ですとおおおお!)
「お前…良くそんな恥ずかしい台詞を
スラっと言えるよな…。」
「間違いないっす…。」
「ん?それよりアウラ…」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「兄さん…はぁ…。」
リーシャも呆れ顔である。
「で、アウラ。お前以外の人は屋敷には
居ないのか?さっきから人の気配が全く
しないが…」
「うっうん。流石の気配察知ですわね!今は
皆出払ってますの。」
「こんな広いお屋敷に1人なんて寂しいわねぇ。」
──────貴様の察知能力でも私の隠匿魔法を
見抜く事は出来ん様だな!───────
何処からか聞き覚えのある声がする。
「母様?」
「え!学院長っすか?!」
すると、目の前の空間が歪み、その歪みから
ミゼラが姿を現した。
「ミゼラ学院長…」
「私、姿を見るのは入学式以来だわ…」
「母様…今日は学院に用があると仰ってません
でしたか!?」
「あぁ、すまぬなアウラよ。お前が
小僧共を家に招くと言っていたのでな
ちょっとしたお茶目をしてみたんだが…
うんうん、結果は上々だ。」
皆は呆気に取られた。
「ミゼラ学院長にも可愛らしい一面も
あるんですね。」
「ユーゴ?!」
「兄さん?!」
「はっはっは、私にその様な言葉を
発する奴は小僧ぐらいだぞ!」
少し嬉しそうにしているミゼラの顔を見て
アウラとリーシャはユーゴを激しく睨み付けた。
「して、小僧。少し付き合え。」
「母様!」
「何、別に取って食おうって訳じゃない。
少し話があるだけだ。ではついて来い。」
───────ミゼラの自室。
「ここは…」
「うむ。驚くのも無理は無い。ここと
学院長室は繋がっているのだよ。」
「それも魔法…だと…?」
「あぁ、私が得意とする魔法の一つで
空間魔法だ。凄いだろう。私のオリジナルだ。」
「…確かに凄い魔法です。ですが、その
オリジナル魔法を見せたくて呼んだ
訳ではないですよね?」
「もっと驚いてもいいのだが…まぁよい。
実はだな───────。」
第8話も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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次回、学院編9話 陰謀
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