6話 魔術
───────Dクラス、三限目、魔術。
体術と同じく魔術の授業も専用の服に着替え
専用の訓練場が設けられている為、
クラス全員は魔術訓練場へと移動した。
「Dクラスの諸君、本日も切磋琢磨し
美しい魔法を見せてくれたまへ!」
「また随分個性が豊かな教師だな。」
「そうっすね〜。でも実力は確かっすよ!
その能力を学院長が高く評価して
全クラスの魔術授業を担当してるっす!」
「ディオンか…。」
「ウォーレン・バッカス。2年前の悪魔戦争にも
参加してたって聞いてますわ!その事からも
実力は折り紙付きですわ。」
「アウラ…。」
(2年前…まさか……。)
「それでは諸君、今日まで授業を受けてきた
君達の事だ。理解はしているだろうが
魔術とは何か───────。」
───────魔術とは。
魔法陣を形成し、魔法構築を理解し
その魔法に魔法名を与え、その魔法に
見合った魔力を込める事で成り立つ魔法の事。
魔力の有無も然り、魔力の高さによって
地位も権力も左右されると言う。
故に魔力ある者は国を支え、国の為に
働く事を義務付けられている。
魔術教師はその1つで、他には
───────王国魔導士───────
王国各地から魔力が高く、能力に長けた者達が
王国を護るべく集められた魔術組織。
───────王国魔術研究者───────
魔法とは魔の知識、魔術は魔法を理解し発動
する為の術。
その魔法と魔術の根源を追求する為に
集められた組織。
───────そして魔術教師。
大きく分けてこの3つ。
どれも並の魔力では成れないものである。
「─────である!そして今日、君達には
三人一組になってもらう!」
クラスの皆が動揺している。
「バッカス先生!魔術とは冷静さを欠けば
暴発する恐れもありますわ!だからこその
個人個人で腕を磨く必要があるのでは?!」
「うむ!なので、今日からはその冷静さをも
磨き、且つ時には協力が必要な事も知って
もらう為の授業であると心得たまへ!」
「でも、3人が1組になって一体何するっすか…。」
「ズバリ!合成魔法を学んでもらう!
合成魔法とは二つ以上の魔法を重ね合わせて
魔法として成り立つ魔法を作成する事。
勿論、どんな合成魔法を作成するかは
こちらで指示するので安心したまへ!」
「で、その3人1組の決め方はどうなさるおつもり
ですの?」
「……それは…く・じ・引・きだあああ!」
皆は同じ事を胸に抱く。
───────またくじ引きかよ、と。
くじ引きが始まり次々と3人1組が
出来上がっていく。
そして───────。
「まぁ、これも何かの縁だ。ディオン、アウラ。」
「ユーゴと同じ班で良かったっす!改めて宜しくっ
す!アウラさんも宜しくっす!」
「精々足を引っ張らないでくださいな。」
(またユーゴと一緒…!)
浮き足立ってるアウラを他所目にユーゴは
淡々と魔法陣を描き始める。
「俺達の課題は合成魔法人形だったな。」
土台となる土と、動力となる火と、ゴーレムを
動かす為の風の3つの合成魔法ー。
3人は各々魔法陣を描き進め、先ずは
アウラ、そしてディオンは魔法陣を完成させてい
た。
「ユーゴ、貴方って首席入学の元Sクラスなのに
何故そんな貴方がそんなに魔法陣如きに
手間取ってるんですの?!」
「…魔法陣を描くのは苦手なんだ。」
「そうなん…ですの?」
(魔法陣を描くのは久々だ…。いや、そもそも
魔法陣を初めて描いたのはいつだったか…。
くそ。どうにも記憶があやふやだ。
これも封印魔法の所為なのか?)
「すまない、遅くなった。」
ユーゴの魔法陣も完成し、3人は構え
魔法を唱える。
───────合成魔法人形!───────
周りの土塊から人型へと変形していく。
魔力は魔法の完成速度にも影響する。
他の班は次々と魔法を完成させていく中
ユーゴ達の班は未だ完成出来ないでいた。
「くっ…」
「ちょ、ちょっとユーゴ!」
「ユーゴ、もっと集中してくださいっす!」
───────集中───────
───────ゴ、ゴ、ゴッ。
「よし…!」
3人の前にはお世辞にも上出来とは言えないが
魔法人形が出来上がっていた。
「な、何とか出来たっす〜。」
「他の班は私達よりも早く完成させてますわ!」
そして他の班では────。
「お、おい!魔力を制御しろ!」
「うるせー!やってるっつーの!」
「ちょっと…喧嘩してる場合じゃっ。」
次々と───────。
魔力の暴走が伝染して行き、教師までもが
魔力を暴走させていた。
「一体何なんですの?!」
「ヤバイっすよ!皆の魔力が暴走してるっす!」
───────そして。
「な、何だ…これは?!」
(魔力が…)
「おい、お前等!魔法陣を消せ!」
「えっ?」
「いいから早くしろ!」
「わ、分かりましたわ!」
「了解っす!」
すると同時に魔法人形が崩れ落ちた。
だが、他の班は未だ暴走し続け、遂には───。
ユーゴ達の班を襲い始め、アウラとディオンは
その惨状に巻き込まれていった。
「何故だ…何故こんな事が…。」
「ユ、ユーゴ…」
「アウラ!」
アウラは傷だらけで倒れている。
ディオンは気を失ってる様だ。
「アウラ…待ってろ。すぐ助けてやる。」
(これは、ただの暴走事故じゃない…それに
さっき感じた魔力…皆の暴走した魔力と
それに反応した俺の魔力…一体どんな繋がりが…)
「いや、今はそんな事はいい。問題は
この問題をどう解決すべきかだ。
考えろ…こんな時どうすればいいか。」
───────自分を信じて。───────
(この声は…)
────自分の魔力と能力を信じて!─────
(あぁ、何度も夢に聞いた声だ。そう地下牢
で俺を目覚めさせようとした声。)
「信じる…自分を…か。」
集中、集中、集中、集中───────!
ユーゴの周りだけ風が渦巻き始め魔力が
集まっていく。
「まだ…だ。まだ…足りない!」
更に集中を高めるユーゴ。
「何だ…この頭痛は…!」
魔力が高まるにつれ頭痛が酷くなり、
ユーゴを襲う。
「くそ、もう少しなんだ…もう少しで…」
更に魔力が膨れ上がり───────。
───────パキんッ───────
ユーゴの手にはめられた指輪の1つが砕け散る!
その瞬間、様々なイメージが次々とユーゴの
頭の中へと入っていく。
「こ、これは…?」
光がユーゴを包み込み、渦巻いていた風も
落ち着き、コートの様に纏っていた。
ゆっくりとアウラとディオンの元に歩み寄りー。
───────癒しの光───────
アウラとディオンの体を光が包み込む。
「ユーゴ…?」
「少し休んでおけ。」
(全てではないが、記憶が少し戻ったおかげで
ある程度の魔術の行使が可能になった…か。)
「先ずは他の皆の魔法陣を消して、動きを
封じる所からだな。」
───────大地の裂け目───────
裂けた地面が魔法陣を消し、トゲの様に突き出た地
面が暴走した生徒達全員を捕らえた。
そして残ったのが、暴走した教師────。
「こいつは、骨が折れそうだ。」
(魔術教師の暴走を無傷のまま抑えるのは
中々に厳しいが…今の俺なら…!)
唸り声を挙げながらソレはユーゴに近付いてくる。
魔力は流石とも言うべきで、そこらの
生徒とは比べ物にはならない桁違いな密度だ。
ソレはユーゴへと攻撃を始めた。
ユーゴとバッカスが激しい戦闘を送る中────。
「アウラさん!大丈夫っすか?」
「あら、ディオン。目を覚ましましたの?」
「あ、はいっす。しかし、これは一体
どんな状況っすか?!」
「私にも分かりませんわ…でも、ユーゴが何を
するか、この状況をどう変えるのか見ものです
わ。」
他の生徒達も次々と目を覚ますが、状況を理解
出来ない者が殆どだ。
そんな生徒達を置き去りにユーゴ達の戦闘は
終幕へと向かって行った───────。
まだまだ続きますので、宜しくお願い致します!
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次回、学院編7話 封印魔法