学院編最終話 卒業と涙が示す道筋
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「出ろ、ディオン・マクシミリア!」
───────頼んだぞ…───────
────何すか?オイラに頼むだの何だの、
オイラが言う通りに動くかどうかなんて
分からない筈っす。もしオイラが
言う通りに動かなかったら?それ以前に
そもそもオイラの無事すら保証さえされて
無いってのに!自分勝手が過ぎるっすよ。
じゃあ何でオイラにこんな事を頼んだか…
答えは…オイラの正体を知っていた
学院長先生。なら両親の事も…
それを知りたがってるのを見抜いていた?
いやその先に何があるのかも…
そして、それには少なくとも協力者が必要で
中には当然あの人の協力も──────
「全部筋書き通りって事っすか…。」
小さく笑いながらディオンは呟いた。
「何か言ったかディオン・マクシミリア?」
「何でも無いっすよ。で、何処に連れてく
つもりっすか?」
「…。上層部の方々がお待ちだ。」
「やっと対面って訳っすね〜。」
(何故って言う疑問は残るっすけど…)
────ガルバイン城・客室───────
「お連れしました。」
「入れ。」
扉の向こうから聞こえてくる低い男の声。
そしてディオンは中へと入り、その男と対面した。
───────ガルバイン国立学院───────
その頃、各教室ではHRが開かれていた。
「いいか、お前達!毎年の事だが、いよいよ
未来を決める為の時間だ。どの道に進むにせよ
自分で決めるんだ。自分の可能性を!」
各生徒は昇級を望み学院に残る者、
昇級を諦め家に帰る者、最上のクラスで
自由に道を決める者と定められた道を進む者。
様々に分かれるが悩める時間は多くはない。
各々、色んな思いを胸に抱き葛藤する時期。
ユーゴ達もまた例外ではなく────。
「ユーゴは何か決まってんのか?」
「ん?あぁ。ヒューズは?」
「俺はまだ何も決まってねえなあ。」
「私は決まっているよ!」
「誰もアンタの道なんて興味無いわよ〜。」
「リーシャ君!あんまりじゃないか!」
「リーシャって相変わらず容赦無いよねぇ?」
「アルティ。で、そんなアルティは?
何か決まってるの?」
「あたしはとりあえず家に戻ろうと思ってる!」
「そうなんだ…やっぱり体の事で?」
「うん。でもずっと家にこもるつもりは無いよ!」
「アルティナ君も大変だねぇ。でも、安心
したまえ!私が研究者となって様々な知識を
身に付けたあかつきには君の病弱体質も
何とかしてみせるさ!」
「え?!バーゲンさんは【王国魔術研究者】
志望だったんですかぁ?」
「意外かウィ?まぁ私も色々考える事があってね
自身の体質や病に苦しむ人達の為になりたいと
思ったのだよ…。」
「バーゲン…。」
(恐らく、家の事がキッカケなのだろう。)
「アウラさんは、どうするんですかぁ?」
「私…ですの?私は…」
皆がアウラに注目しているが、暫く沈黙が続く。
長い沈黙の後、口を開く。
「私は、母様を探します!例えどれだけ
時間がかかったとしても!」
そこには強い意思があった。誰も反対はせず
しかし肯定も出来ずにいた。
そして皆がそれぞれの思いを抱き運命の日を
迎える事となった。
───────学生寮・男子棟───────
いつも通り学院から寮へと帰るユーゴ達は自分達の
部屋へ戻るユーゴとヒューズは部屋の扉を開け
直ぐに異様な魔力を感じた。
「この魔力は…確か!」
特に部屋を荒らされた形跡もなく、ただ机に
一通の手紙が置いてあるだけだった。
「これは…ディオンからだ。内容は……?!」
「どうしたユーゴ!何て書いてあるんだ?」
「この内容が事実なら…ヒューズ。この内容は
聞いたら後戻りは出来ないが、それでも
知りたいか?」
「少なくともお前はその内容を知った。なら
俺が関わるには十分だぜ。」
───────翌日。
ユーゴ達はいつものメンバーで集まった。
「今日集まってもらったのは皆に
聞いてほしい事があるからだ。だが
聞く義務は無い。」
「でも兄さんはこうして皆を集めた。
少なくとも聞く権利はある筈だわ!」
「まぁ、そうだな。これから話す内容は
皆の未来を変えてしまうかもしれない内容だ。
そして…アウラ。お前は知っておくべきだ!」
「…私?」
「ああ。実は昨日、俺達の部屋に手紙が
置いてあった。そしてその内容は───。」
──────────────
「母様が地下牢に囚われてる…ですって?
一体何故…それに何でディオンが!」
「落ち着けアウラ!」
「落ち着ける訳ありませんわ!今すぐ助けに
行かないと!」
「気持ちは分かるわ!でもこれはそんな
簡単に動いて何とかなるとも思えない。」
「それで?ユーゴ君はどうするつもりだウィ?
今私達に話したと言う事は何か解決策でも
考えているんじゃないかね?」
「そうだ。だがそれが正しい事とは限らないし
必ずしも望んだ結果が得られるとも限らない。
…それでも聞く覚悟はあるか?」
皆の顔には迷いが無く、覚悟を決めていた様だ。
「え〜っとぉ、あたしは力不足かもですけどぉ、
皆の力になれるなら協力したいって思いますぅ。」
「流石アルティね!兄さん、私も同じ気持ちよ!」
「勿論私もだよユーゴ君!是非私の力も
利用したまえ!」
「よし、分かった。なら聞いてくれ、ミゼラ
学院長の救出作戦を────。」
───────作戦当日。
朝早くから皆は集まり作戦の準備を始める。
皆の決意は固くアウラの目には闘志が宿っている。
「よし、これより作戦の再確認をする。
先ずは撹乱するチームと救出するチームに
分かれる。撹乱にはヒューズ、リーシャ、
バーゲン。存分に暴れてくれ!」
「おうよ!任せとけ!」
「そして救出チームには俺とアウラ、そして
アルティナだ。こっちはいかに慎重に
地下牢まで辿り着けるかが鍵になる。」
「勿論ですわ!」
「頑張りますぅ。」
「でも撹乱に3人だけって大丈夫なの?
仮にも王国を相手にするって事なんだけど…」
「心配は無用だ。よし作戦を開始する。
頼んだぞお前達!」
「うん!」
「任せたまえ!」
───────ガルバイン城・門前───────
「何だ貴様等?!変な格好で怪しい奴等め!」
「捕らえろ!」
「そう簡単に捕まる訳にはいかないのだよ!
先ずは私から行かせてもらおう!」
───────【砂嵐】───────
「くそっ!砂が、目に!!!」
辺り一帯を砂荒らしが襲い門番兵の
視界を奪った。
───────救出チーム───────
「よし、向こうのチームは上手く始めたみたい
だな。俺達も行こう!」
城の裏側から侵入するユーゴ達。
「本当に裏から入れますの?」
「下調べは済んであるし、城内の構図も
頭に入ったある。」
「ユーゴさんってぇ、何者なんですかぁ?」
「さぁな。お喋りはここまでにしてそろそろ
動くぞ。」
ユーゴは知っていた。地下牢への入り口が
城の裏側にある事を、身をもって知っていた。
───────撹乱チーム───────
門前では未だ戦闘が続き、城から応援が
駆けつけ更に激しさが増す。
「早速は城守ってるだけはあるわね。」
「感心してる場合かよ!このままじゃ
ジリ貧だぜ。」
「私の魔力もそろそろ尽きそうだよ。」
撹乱チームは相手の数に圧倒され始めた頃…。
「そんなもんっすかあ?【黒闇】!」
「この声は?!」
「ディオン!!!アンタ地下牢に居る筈じゃ?!」
「結構前に解放されたっすよ〜。それより
今は目の前の敵っすよ!」
「頼もしい限りだ!」
ディオンが加わった事で一気に戦況が変わった。
───────救出チーム───────
奥深くへ続く長い廊下に長い階段を駆け下りて
いくユーゴ達はやっとの事で地下牢に辿り着いた。
「ここまで誰にも気付かれないどころか
誰とも合いませんでしたが王城っていつも
こんな感じなのかしら?」
「皆出掛けてるんですかねぇ?」
「いや、この地下牢に続く廊下には基本人は
居ない。恐らく今は地下牢にも人は
配備されてないだろう。」
「お詳しいんですのね?」
「…。それよりここからは手分けして探すぞ。」
ユーゴとアウラとアルティナは3つに分かれて
ミゼラを探す事にした。
「母様!?何処にいらっしゃるんですの?」
「学院長〜?居たら返事してくださ〜い。」
(何処だ?何処に居る?まさか…もう…。)
少ししてユーゴはある物を見つけ───────
───────「アウラ!」
アルティナとアウラはユーゴの元へ
駆け寄った。
「見つけましたのユーゴ?!」
「見つかりましたかぁ?」
アウラはユーゴの手に目をやる。
「そ、それは母様の…腕輪…」
「あぁ。いつも身に付けていた腕輪だな。
そしてアウラ、それがここに落ちてると言う事は
そう言う事だろう。」
「い…や…。嫌、嫌ああああああああ!」
アウラの叫び声は地下牢に響き渡った。
「アウラ!しっかりしろ!とにかくここから
出るぞ!」
ユーゴが叫び続けるアウラを外へ連れ出そうと
するが、アウラはそれを聞こうとはしない。
「アルティナ!」
「ひゃい!」
急に呼ばれ慌てるアルティナ。
「アウラに睡眠魔法をかけろ!」
「わ、分かりましたぁ。【スリープ】。」
「い…や…」
嫌がる無理やりアウラを眠らせユーゴはアウラを
抱えて城から脱出をし、撹乱チームに知らせる為の
信号弾を打ち上げた。
───────撹乱チーム───────
「おい、ユーゴ達が出てきたぞ!撤収だ!」
「兄さん…やったのね。」
リーシャ達が逃げようとしている事に兵は気付き
声を挙げた。
「奴等を絶対に逃すなああ!」
「ちっ、そう簡単にはいかないっすね!」
「私に任せたまえ!!【砂流壁】!」
地面から広範囲に砂の壁が現れ敵を囲み込む。
「よし、今の内にずらかろうぜ!」
リーシャ達はバーゲンの魔法により足止めされてる
兵から逃げ出した。
──────────────。
───────合流地点───────
後から合流したリーシャ達は既に辿り着いていた
ユーゴ達を見てただならない雰囲気である事を
悟った。
そしてアウラは俯いていた。
「リーシャ…お前達も無事だったか。やっぱり
来てくれたんだなディオン。」
「そりゃ来るっすよ〜。で、作戦は…成功
って訳にはいかなかったっすか…。」
「あぁ。一足遅かったみたいだ…」
(予想はしてたっすけど…。)
「アウラ…。こんな時に何か出来れば…。
私は何て無力なの…!」
リーシャは血が出るほど唇を噛みしめた。
「アウラさん。学院長、お母様の事は
本当にお気の毒でしたぁ。ですけどぉ、
何が起きても、前に進み続けないと駄目ですぅ。」
「ちょっ、アルティ!?」
「リーシャは黙っててくださいぃ。アウラさん。
前に進む為には何か目標や目的が必要ですぅ。
ですけどぉ、悲しい時は泣いても良いんですぅ。
涙は出せる時に出さないとぉ、そのまま進むと
出し方忘れちゃいますよぉ?
そして、泣いたらその分前に進みましょ〜!」
「アルティナ君…確かに君の言う通りだ!」
「母様…母様…!」
そのままアウラは膝から崩れる様に泣き崩れた。
泣いて泣いて泣き叫んで…涙が枯れるまで。
──────────────。
「皆さん、みっともない姿をお見せしましたわ。」
「仕方ねえよ。テメェの親が死んじまったんだ。
泣いて当然だ!」
「ありがとうございます。皆さんのおかげで
決心がつきましたわ!」
「決心?」
「ええ。学院を出た後に何をするかを。
それを実行する決心を!」
「こんな時に…いや、こんな時だから
こそっすか。」
「そうね。こんな時だからこそ私達も
覚悟するべきよね。」
「…そうだな。」
「皆で助け合いましょ〜!」
そうして、それぞれ進むべき道を自身で再確認し
新たに決意を新たにし覚悟を決めた。
─────────────────────
月日が経ち───────。
───────卒業式───────
学院長から生徒達へ送られる様々な言葉。
涙する生徒や教師達。
ユーゴ達も全員出席していたが涙は流す事は
無かった。
そのまま卒業式は無事終わりユーゴ達は集まった。
「皆揃ったな。ディオンが居ないのは仕方がない
として…。」
「まぁ彼は魔人だしねぇ。」
「魔人が卒業ってのも笑えるわなあ!」
「そんな訳だ。今後恐らくこうして皆が
顔を合わせる事も難しいだろう。だが
各自、すべき事は明らかになった!
進む道は違っても何れ集まる事もあるだろう。
だから今はこれだけ伝えておく。
またいつか、何処かで会おう!」
「十分ですわ!」
「そうですねぇ。またお会いしましょ〜!」
「ウィ〜!楽しみにしているっ!」
こうしてまた会おうと言う言葉を胸に
それぞれの道を歩み出した。
─────────────────────
──────────────
───────
そして時は経ち────。
────ガルバイン国立学院・学院長室───
───────コン、コン。
「入りなさい。」
「失礼します。本年度の新入生の試験結果が
出揃いました。」
「成る程…これはこれは。」
「どうか…なさいましたか?」
「いえ、本年度は中々の粒揃いですのでつい…」
「そうでしたか。
しかしその様に笑われるのは
初めて目にしました…。」
「ふふ。そうかしら?」
「ええ…」
───────。
───アウラ・ニュー・ファーリア学院長。──
12話も最後まで読んで頂きありがとうございます!
第一章学院編はこれで一区切りになります!
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