10話 魔人
───────路地裏───────
「早く答えろ。依頼者は誰だ?」「」
ユーゴの凄みでチンピラ達は萎縮している。
更に問い詰めようとするが─────。
「お前等!避けろおおおおおお!」
叫び声と共にヒューズが飛ばされてきた。
「ちっ、痛ってって。こいつ無茶苦茶しやがる!」
リーシャとアウラは呆気に取られていたが
やっと口が開き、
「一体何なんですの?!」
ヒューズが飛んできた方向に目をやり
砂埃も落ち着いてきた頃、その姿は少しずつ
明らかになっていく。
「え…?どおゆう事?!兄さん、ヒューズ、何で
ディオンが……!?」
「ディオン・マクシミリアは、魔人だ。」
リーシャは何となく気付いてた様だが
アウラは驚きを隠せずにいる。
「俺もユーゴに頼まれる迄は半信半疑でよ〜
まさかこんな事になるなんてなあ!」
ヒューズとディオンは激しくぶつかり合いを
始め、辺りの被害が大きくなっていく。
「尋問してる場合じゃなくなったか。
…お前達を空間魔法で憲兵の目の前に飛ばす。
───────【空間転移門】───────」
魔法を唱えた瞬間、空間に扉が浮かび上がり
その扉が開くと共にチンピラ達は扉の奥へと
消えていった。
「その魔法は!?母様の…。」
「話は後だ!ヒューズ!俺たちも飛ぶぞ!」
ユーゴは再び空間魔法でその場にいた全員を
他の空間に移動させた。
────ガルバイン王国周辺・ガルバ平原────
ユーゴ等は城下町から平原へと魔法により
瞬間移動した。
「これで全力で戦えるぜ!」
「だからと言って、殺す訳にはいかない。
何としても捕獲する必要がある!」
「まさかディオンが魔人だったなんて…
私も参戦しますわ!」
「勿論私もよ!」
「ちっ、面倒っすね〜。でも全力で戦えるのは
こっちも同じっすよ!」
「お前達、無理はするな。相手は魔人。
個人でSクラス全員を相手に出来る程の力を持っ
ている厄介な相手だ。手加減は無用、だが
安全を最優先にするんだ!」
全員「了解!」
「作戦会議は終了っすか?なら先ずはこっちから
行かせてもらうっすよ!」
ディオンの背中に羽が生え、空へと飛び上がった。
「いよいよ、魔人そのものって感じだなぁ。」
「感心してる場合じゃありませんわよ!」
────ウオオオオオオオオオ!!─────
叫び声と共に、周りの大気が震え
ディオンの周りの空間が歪み始めた。
「何て桁外れの魔力…こんなのどうやって
立ち向かえば…」
「大丈夫だ、リーシャ。お前達の事は
俺が必ず守るから。」
「兄さん…。」
「魔人ニダケ許サレタ力ト魔力、
ソシテ───────。」
「皆!全力で防御魔法展開!」
「ソンナ物デ防ゲルッスカ?行クッスヨ。
魔力全開───暗黒魔法、闇の雷!!」
ディオンの周りに集まる黒く光る複数の
雷が高密度の雷の球となり、ディオンは
狙いをユーゴ達に定め、その球体を飛ばした。
轟音が鳴り響き、次の瞬間には
辺りに生い茂っていた草木が黒焦げになっていた。
「モウ死ンダッスカ?マァ、オイラノ
魔力全開ノ魔法ヲ食ラッタンスカラ、
塵一ツ残サズ消滅シテ…エ?」
「塵一つが何だってディオン?」
「何デ…生キテルッスカ?全員無傷デ…
何スカ、ソノ魔法ワ?!」
「合成防御魔法、【絶対守護者】だよ。」
白い大きな騎士がユーゴ達を包み込む様に
守っていた。
「ソンナ魔法知ラナイッスヨ!」
「だろうな。この魔法はあらゆる邪気をも
振り払う防御魔法だ。魔人の血を引くお前は
その領域に踏み込む事すら出来ん代物だ。」
「凄え防御魔法を使わせたもんだよテメェは。
おかげで魔力がすっからかんだぜ。」
「えぇ、私も限界ですわ…。」
「そう…ね。後は…兄さん…お願い!」
「任せておけ。」
ディオンはユーゴ達の話を聞き大声で笑い始めた。
「何がおかしい?」
「魔力ヲ全テ使イ果タシタ状態デ、ドウヤッテ
オイラニ勝ツ気ッスカ?シカモ動ケルノハ
ユーゴダケミタイジャナイッスカ!」
「ふん、そんな事か。俺1人だからどうした?
俺1人になら勝てると、そう言いたいのか?」
「何スカ、ソノスカシタ表情。ムカツクッス
ネエエエエエエ!」
ディオンはユーゴに飛びかかる。
2人は激しく打ち合い、その一撃一撃が
辺りの地形をも変える勢いでぶつかり合った。
(流石に暴走教師とは比べものにならない
戦闘力だな魔人は…。)
「ホラ!ホラ!ホラ!ホラ!」
「兄さん!」
「ユーゴが押されてんのか?!」
「ユーゴ!」
ユーゴが圧倒されてるかの様に皆の目に映る。
そして───────。
「ディオン、すまないが時間切れだ。」
ディオンはその言葉を理解出来なかった。
しかし、次の瞬間───。
「魔人には酷だろうが、精々踏ん張れディオン。
神聖魔法、──【天の裁き】───。」
天から光が差し、天の光が敵を焼く。
「コノ魔法…魔法陣ナシデハ行エナイハズ!
イッタイイツノ間ニィィィィ?!」
─────────────────────
こうして魔人ディオンとの戦いは決し、
ユーゴの指輪がまた一つ砕けていた。
「魔人1人でこれだけの強さとか…」
「恐るべしですわ。それを相手に1人で制した
ユーゴもユーゴですけれど…。」
「えぇ…そうね。」
「どうかなさって?リーシャ?」
「いや、何でも無いわ。気にしないで!」
(兄さんのあの力…私達とは比べ物にならない。
でも、それだけじゃ無い気がする…、まだ
本気じゃない気が…。)
「流石のユーゴも満身創痍って感じだな!
んで、この後どうするよ?こいつの処分は?」
「それは、まだ決め兼ねている。学生の身分で
どうにかするにしては大き過ぎる案件だからな。」
(それにさっきからミゼラ学院長の反応が無い。
通信魔具の調子でも悪いのか?)
「とりあえずは憲兵に知らせた方が…」
「────それには及びません。」
「誰だ?!」
ヒューズはその声に向かって叫んだ。
「私は王国魔導士のシュトリーと申します。」
そのシュトリーから放たれてる魔力からして
納得せざるを得なかった。
「王国魔導士の方がどうして
こんな所に?」
ユーゴは少し身構えた。
しかしシュトリーは不安を拭うかの様に答えた。
「私共の仕事は王や国民を守る事。勿論、
外敵から国を守る事も含まれます。ですから
王国周辺の見回りも仕事の内なのです。
異様な魔力を感知して駆け付けるのは
ごく自然な事なのですよ。」
と、微笑みかけ、皆は安堵した。
「では、ご納得頂けた様なので、そこの魔人を
預からせて頂きますが…異論ありませんね?」
「えぇ。宜しくお願いします。」
ユーゴはシュトリーに魔人ディオンを引き渡し
シュトリーはディオンと共にその場から
姿を消した───────。
「ユーゴ、良かったのかよ?すんなり引き渡して
よ〜。」
「あの場では引き渡す他無かった…。」
そうは言ったものの、ユーゴは何かに引っかかって
いて、アウラやリーシャも何か不満げである。
「一先ず、今日の所は解散にするか。
ディオンの事は後日考えるとしよう!」
「そうね、今日は疲れたし分からない事を
今考えても何も浮かばないでしょうし!」
「だな!」
「そう…ですわね!」
そしてユーゴ達は王国へ戻り、リーシャは自分の
屋敷へ。他の3人も各々寮へと帰りベッドに
倒れ込む様にして眠った。
───────王国地下牢───────
「ほら、さっさと入れ!」
鎖で引きずられた少年は、強引に牢へと
押し込まれた。
「いててててて。無茶苦茶っすね〜。
それにしても嫌な匂いっす。」
「ん?その声は…貴様、小僧の友人の
ディオンと言ったか?」
「誰っすか!」
「私だ。ミゼラ・ニュー・ファーリアだ。」
「!?何で学院長がこんな所に?!」
「大声を出すでない、馬鹿者が。言いたい事は
分かるが、先ずはこちらからだ。貴様は
何故こんな所に送られてきたんだ?」
「それは───────。」
自分の正体、今日の出来事を包み隠さず
ミゼラに話した。
「ふむふむ、成る程な。まぁ遅かれ早かれ
貴様の正体について問題が起きる事は
予想しておったが、良きタイミングと言うか
最悪のタイミングと言うか…。」
「オイラの事は話したっす。次はオイラの質問に
答えてほしいっす。」
少し間を置きミゼラは口を開いた。
「うむ、今から話す事は他言無用じゃ。
分かったな?」
「分かったっす。」
「何処から話そうか。───────」
まだまだ続きますので、宜しくお願い致します!
もし楽しんでもらえたなら感想や評価やブクマしてもらえるととても大変嬉しいです!
評価は下の方にボタンがあるのでポチッとお願い致します。
※設定やタイトル、サブタイトル、その他細かな部分などちょこちょこ変えたりしますがご了承下さい。
次回、11話 Sクラス再び。
お楽しみください!