刀比べと双六【一】
今回は東方茨歌仙の話が少し混ざってます
ネタばれが苦手な方はバックして下さい
( ・ω・)ノ"オーライオーライ
「刀を探している?」
俺の問いに華扇は頷く。
茨木華扇は名の知れた桃髪の仙人だーーと、巷ではなっているが、実際には鬼の四天王の一人だ。
因みにバレてないと思っているのは本人だけだったりするが、それについては言わないで置こう。
「ーーんで、なんて刀を探しているんだ?」
「……えっと、鬼切り丸と言う刀を」
「鬼切り丸、ねえ?なんで、そんなのを探してんだ?」
「……え?えっと、ですね?」
どうやら、詳しくは言えないみたいだ。
だが、なんとなく、察しは付く。
なんせ、鬼切り丸は茨木華扇とは縁のある刀だからな。恐らくは過去の二の舞にならぬ様に破壊するのが目的だろう。
鬼切り丸が無くなれば、華扇は暴れ放題だからな。
当然、そんな頼みは聞ける訳がない。
「残念だが、協力は出来ない」
「そこをなんとか、お願いします!
欠片だけでも良いので!」
「欠片だけでも良い?」
何を考えているんだ、こいつ?
鬼切り丸を破壊するつもりなら、本体である刀を破壊せねばならないだろう?
駄目だな。こいつの真意が読めない。
俺が返事に悩んでいると華扇が何かを決した様に目を伏せる。
「解ってはいるんです。ムラマサさんは私の正体に気付いているのでしょう?」
「ん?まあな?」
俺は頭を掻くと溜め息を吐いてから華扇に尋ねた。
「なら、言わせて貰う。
お前の本音を聞きたい。協力するかどうかはそれからだ」
「解りました。ですが、他言無用でお願いします」
華扇は頷くと俺に真相を話す。
それについては後々、解るだろうから今は黙って置く。
とりあえず、俺は華扇に協力する事を約束するに足る内容だったのは間違いない。
俺は華扇と別れると稗田家へと向かい、九代目稗田の阿礼の子である稗田阿求と面会する。
稗田家も幻想郷の守護者である存在は知っているし、それに関しては人妖問わず、平行な扱いをしている。
何故、そうまで平行な扱いが出来るのかは幻想郷戦乱を手にするまで疑問だったが、今は俺ーー幻想郷の守護者と人間の里との繋がりを維持する一つの要である事を理解しているつもりだ。
「ようこそ、ムラマサさん。最後にあったのは随分と前ですね?」
「お前とはほぼ初対面みたいなもんだ。
俺が会ったのは先代の阿礼の子だからな」
座敷に通された俺は阿求にそう告げると胡座を掻いて座る。
阿求はそんな俺を面白そうに見詰めて微笑む。
「それで今回はなんの御用でしょう?」
「いや、大した事じゃないんだが、過去の刃物系の売り買いの帳簿を見せて貰いたくてな?」
「構いませんよ。ただし、どの用な理由かをお聞かせ下さい」
「それについての返答は出来かねる。すまんな」
俺がそう言うと阿求は笑みを強める。
「成る程。裏に関する事ですか?」
「まあ、幻想郷縁起にゃあ、載せられねえな?」
「そうですか。それでは一勝負しましょう」
「あん?」
俺はその言葉に首を捻る。
稗田の阿礼の子は確かに特殊だ。
幻想郷縁起を完成させる為に転生を重ね、病弱で短命な人生を全うする運命を背負う代わりに物事を全て記憶する能力を持っている。
だが、それはあくまでも記憶すると言う一点であり、弾幕勝負どころか体力勝負で勝てるとは思えん。
そんな阿礼の子である阿求が俺と勝負しようだと?
まさか、妖怪の俺と知恵比べでもしようとしてるのか?
確かに阿求の能力なら千年前の事も記憶しているだろう。ならば、逆に俺が不利になる。
そう考えていると阿求がクスクスと笑う。
「そんな大した事ではありません。ちょっとした遊戯ですよ」
そう言うと阿求は俺に双六を見せる。
「今日は大勢、来客があるので引っ張り出して来ました」
「俺以外にも来客が?」
そう言うと阿求の使いの女が戸を開き、そこから現れたのは女の姿をした妖気を纏う化け狸とヒシヒシと気迫の伝わって来る和装の男だった。
「ご紹介します。此方はムラマサ様です」
阿求は男のプレッシャーなど感じぬ様に俺に説明すると黒い和装の化け狸がふぉっふぉっと笑う。
「なんたる奇遇かの?
阿求よ。お前さん、読んでいたな?」
「何の事でしょう?私とムラマサ様はほぼ初対面ですが?」
「そう言う事にして置くかの」
そう二人が納得すると化け狸が此方を見る。
「まずは自己紹介せねばな。儂の名は二ツ岩マミゾウ。そして、こっちがーー」
「マサムネと申します。ムラマサ殿と同じく刀の付喪神で御座います」