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鬼の節分返し

 節分が終わり、俺は豆だらけの人里を巡回する。

 今年の節分も無事終わった訳だが、節分中、華扇の姿がなかった。

 まあ、理由が理由だからな。

 そんな華扇から俺はある頼まれ事をしていた。


 ーーー


 ーー


 ー


「よう。伊吹萃香いぶき すいか

 俺は霊夢の家の縁側で酒を飲む伊吹萃香に軽く手を上げて近付く。

 相変わらず、太い二本の角が重いのか、それとも酔っ払っているからフラフラしているのか俺には解らん。

 伊吹萃香はトロンとした目で俺を見る。

「おおっ。あんたかい、ムラマサ」

 伊吹萃香は俺に気付くと愉快げに笑い、瓢箪に入った酒を飲む。

 伊吹萃香は祭り好きで節分の鬼役も買って出る程、面白い事に反応するのが早い。

 俺のーーもとい、華扇の頼み事とはそんな伊吹萃香に関する事である。

「実はお前に頼みがあってな?」

「んあ?あんたが私に頼み?」

「正確には俺ではない。ちょいとしたある人妖からの頼みだ。

 まあ、これを聞いたら誰の頼みだかはすぐ解ると思うがな?」

 俺がそう言うと伊吹萃香は胡座を掻いて、ニヤニヤと笑う。


 まあ、この時点で伊吹萃香には大方の予想がついているのだろう。


「この時期に私に頼み事する奴と言えば、あいつかい?」

「想像に任せる。頼めるか?」

 俺がそう告げると伊吹萃香は溜め息を吐いて、すぐに足を伸ばす。

「節分の豆の回収だろう?……ぶっちゃけ、めんどい」

「だよな?」

 そうなのだ。華扇の頼みとは地面に落ちた節分の豆の回収である。

 それを密度を操る程度の能力を持つーーそれも鬼である伊吹萃香に頼もうと言うんだから、流石に俺も華扇が本当に正体を隠す気があるのか疑問に思う。

「あいつもあいつだねえ。もっと私達みたいに振る舞えば良いのに」

「まあ、あいつにはあいつの考えがあるのだろうとだけ言って置く」

「ふうん」

 伊吹萃香は興味なさそうにもう一度、瓢箪の中の酒を飲むとのっそりと立ち上がる。

「まあ、あいつがどうしてもって言うなら仕方がないねえ。

 今度、酒に付き合えって言って置いてくれ」

「解った」

 俺が頷くと伊吹萃香は密度を操り、霧の様に四散して博麗神社の豆を回収する。

 とりあえず、博麗神社の豆を回収した伊吹萃香は元に戻ると山盛りになった節分の豆を見詰めた。

「とりあえず、博麗神社周辺の豆から集めたけど、これはどうするんだい?」

「俺が頼まれたのは伊吹萃香に節分の豆を回収させる事だ。

 それ以外は特に聞いてない」

「相変わらず、あいつは何処か抜けているねえ。まあ、良いけどさ……あ」

 そこまで言って伊吹萃香は何やら面白い事を思い付いたかの様にポンと手を叩く。

 どうせ、ろくでもない事なんだろうが、それについては敢えて言及しない。

 伊吹萃香は霊夢の家の中へと入ると奥にいる霊夢に何か尋ねる。


 ーー後日、華扇が俺の前にやって来た。


 それも青ざめた顔でな。


「あの、ムラマサさん?」

「なんだ、華扇?」

「萃香に何か吹き込みましたか?」

「そんな事する理由がない」

「ですよね?」

 華扇はげんなりした顔で溜め息を吐くと頭を押さえる。

 その様子からするに何かあったのだろう。

 それも華扇が頭を痛める程の出来事か……。


「何があったんだ?」

「……豆まきです」

「……あん?」

「ですから、霊夢や魔理沙が私の家で豆まきをしたんです!」

 華扇は感情的になって叫ぶと途端に気分でも悪くなったのか、口元を押さえる。

「おいおい、大丈夫か?」

「……駄目です。萃香の奴、霊夢達に私の家では節分やってないだろうって言ったらしくて、霊夢達も面白半分でそれに乗っかって、今、私の家は豆だらけです。

 おまけに歳の数だけ節分の豆を食べさせられたりして、もう散々です……うっぷ」

「おい。こんな所で吐くなよ?」

「解ってます。これも修行と思えば……」

 そう言って華扇は青ざめた顔で口を押さえながら俺に向かって空いている手をかざし、徐々に後退する。

 何も知らない奴が見たら、俺が華扇に無理矢理、酒か何かを流し込んだ様に見えるだろうな。


 ーーと、俺は伊吹萃香に頼まれていた伝言を思い出す。


「そう言えば、伊吹萃香から言伝てがある」

「……なんですか?」

「今度、酒に付き合えーーだそうだ」

 俺がそう伝えると華扇はガックリと項垂れ、肩を震わせる。

「……ふ、ふふっ。元凶である萃香がそんな事を?」

「確かに伝えたぞ?……じゃあな」

 俺はこれ以上は危険と判断し、博麗神社を後にする。

 その後、華扇と伊吹萃香がどうなったかは想像に任せよう。

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