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終わりと始まりの狭間で【下】

 俺は針名丸の言葉を頼りに河童のエンジニアを名乗る河城かわしろにとりと将棋をしている犬走椛の元へと向かう。

 どうやら、今年は非番らしい。

「椛」

「これはムラマサ様。何か用ですか?」

「鬼人正邪の居場所を知りたい。

 今、奴は何処にいる?」

 俺がそう問うと椛の白い獣耳がピクッと動く。

「何か事件ですか?」

「神社や寺の類いがどうもな?……非番の所を悪いが、ちょいと見てくれ」

「ムラマサ様の頼みとあらば、仕方ありませんね?」

 そう言うと椛は周囲を見渡し、ある一点を凝視する。

「いました。鬼人正邪は今、風見幽香の向日葵畑の近くで寛いでいます」

「そうか。助かる」

 俺は椛にそれだけ言うと助言された方角へと飛翔して行く。

 元旦も間近だ。少しスピードを上げるか……。


 俺は神経を集中すると爆発的に加速して鬼人正邪の元へと迫る。


 ーーー


 ーー


 ー


「へへっ。今頃、元旦を取り上げられて博麗の巫女とかが、悔しがっているだろう。

 ざまあみやがれってんだ」

 正邪がそんな事をぼやきながら寝そべっていると強力な妖気が迫るのを察知する。

 そしてーー


「見付けたぞ、鬼人正邪」


 ーー深紅の髪にボロボロの赤黒い着物を羽織る男が地面にクレーターを作り、彼女の前に着地した。

「なんだよ。お前は?」

「なに、幻想郷のお節介焼きだ」

 彼ーームラマサはそう告げると禍々しいどす黒い刀を取り出す。

(ヤバい!)

 そう思って起き上がり、逃げようとする正邪の前に無数の刃が現れ、彼女を囲う。

「手荒な真似はしない約束でな。

 大人しく異変を止めれば、見逃してやる」

「……あんた、強いんだろ?」

「だったら、なんだ?」

「私は強い奴に命令されるのが嫌いなんだよ!」

 そう言った瞬間、正邪とムラマサの配置が逆転し、ムラマサが自身の刃に囚われる図となる。

 ムラマサは慌てる事なく、解除するととんずらする正邪を追う。


 ーーと、ムラマサは突然、立ち止まる。


「へへっ!よく解らないが、私の逃げ足にーーぶべっ!」

 そんな正邪は突然、真っ正面から拳を喰らい、ムラマサの方へとゴロゴロと転がって行く。

 正邪を殴ったのは静かに笑う風見幽香であった。

 その足元には正邪がへし折った向日葵が転がっている。

「久し振りだな、風見幽香?」

「ええ。久し振りね、妖刀の妖怪さん?」

 幽香はムラマサにニコリと笑うと正邪の上に馬乗りになる。

「丁度、肥料が欲しかったのよ。貴女なら良い肥やしになりそうね?」

「ちょっーーちょいと待て!私が一体、何を!」

「私の可愛い花を台無しにして良く言うわ。確か、貴女って以前、お尋ね者だったでしょう?

 なら、また悪さをしたって事でしばかれても文句はないでしょう?」

 幽香はそう言うと拳をコキコキ鳴らす。

「最近、覚えた向こうの技があるの。

 確か、馬乗りなんたらパンチだったかしら?」

 そう言うと幽香は正邪の顔面に拳を連続で叩き込む。

「もう一丁」


 ドゴン!


「とっておきよ」


 再び取っ組み合い、拳を連打する。


 それをループで繰り返し、正邪がピクリと動かなくなった所で俺は幽香を止める。

「幽香。それ位にしろ。

 本当に死んでしまう」

「あら?ちゃんと加減はしているわよ?」

 幽香の加減がどれ程の物か解らないが、正邪の顔がボコボコに膨れ上がっているのから察しても、かなりのダメージとなっているだろう。

 故にムラマサはそれ以上、正邪が耐え兼ねられないと判断して彼女を担いで博麗神社へと向かう。


 こうして、更にふるぼっこにされた正邪は二度と元旦で信仰心をひっくり返したりしないのを誓うのだった。


 そうして、予定通り、元旦になり、ムラマサは再び宴会で賑わう中を博麗神社を警戒する。

 正邪の能力が解除され、博麗神社は再び活気を取り戻し、飲んだくれていた霊夢も真剣な表情で祝い事の準備をする。

「ムラマサの兄さん」

 そんな周囲を警戒するムラマサに雷鼓が声を掛けて来た。

「どうした、雷鼓?何か用か?」

「元旦になったんだから、解っているでしょう?」

「ん?ああ。そう言う事か……」

 ムラマサは笑うと雷鼓に言葉を紡ぐ。

「明けましておめでとう。これからも宜しくな」

「此方こそ、宜しくお願いします、ムラマサの兄さん。

 また演奏を聴いて下さいね?」

 こうして、元旦最初の宴会が幕を開け、楽しげに少女達は宴を楽しむのだった。

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