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終わりと始まりの狭間で【上】

 幻想郷の元旦前も騒がしい。

 何かと霊夢やレミリア・スカーレットなどが飲み明かしたがる。

「霊夢。祝い酒をするのは良いけど、もうちょっと限度って物があるでしょう?」

 流石の華扇も霊夢を問いただそうとする。

「……うるさいわね!見なさいよ!この神社を!

 妖怪や仙人や神だらけで参拝客も来ない!

 こんな年は飲まなきゃやってられないわ!」

 霊夢は完全に泥酔しているのか、華扇に絡む。

 流石に霊夢も元旦に参拝客が誰もいないとなるとやけくそになるか……。

 しかし、参拝客が誰も来ないと言うのはおかしいな。

 俺は博麗神社を後にすると守矢神社へと向かう。

 こう言う場合、何か企むのが、守矢神社だ。

 ところが守矢神社も参拝客が殆どいない。

 俺は守矢神社の東風谷早苗に声を掛ける。

「よお」

「あ、幻想郷の浮浪者さん。参拝ですか?」

「いや、違う」

「そう、ですか……」

 東風谷早苗はあからさまに残念そうに肩を落とし、周囲を見渡す。

「おかしいですね?

 いつもなら、もっと、お客さんが来るんですが」

「博麗神社もこんな感じだ」

「これは異変でしょうか……私、ちょっと霊夢さんに相談して来ます」

 東風谷早苗は一人、考え込むと霊夢のいる博麗神社へと向かって飛んで行く。

 確かに異変かも知れないが、その参拝客達は何処へ行ったのだろうか?


 俺は次に命蓮寺へと向かった。

 命蓮寺みょうれんじなら何か知ってるかも知れん。

 そう思って訪ねてみたが、此方も参拝客が少ない。

 此処もはずれらしい。

 流石に幾ら何でもおかしすぎる。

 これは確実に異変だ。


 しかし、突然の参拝客の減少に共通点はあるのだろうか?


 俺も一旦、博麗神社へと戻り、霊夢達の様子を伺う。

 霊夢は酒の飲み過ぎで完全に酔い潰れ、魔理沙が霊夢を介抱している。

 そんな霊夢を見て、東風谷早苗などが呆れていた。

「ちょっと良いですか?」

 不意に声を掛けられて背後を見るが誰もいない。

 気配はすれども姿を見せないとは余程の強者か?

「こっちです!こっち!」

 その声に視線を落とすと小人の一族である少名針名丸すくな しんみょうまるがお椀に入って手を振っていた。

 どうやら、俺の強者だと思ったのは勘違いらしい。

「なんだ、針名丸?俺に用か?」

「実は今回の異変に心当たりがあるんですが、霊夢があんな調子なので貴方にお願いしたくて……」

「俺にか?」

 俺が問うと針名丸は頷く。

 針名丸も俺が幻想郷の守護者だと言う事は知ってる。

 そんな俺に頼みとあらば、何か隠し事があるのだろう。

「話を聞こう」

「今回の参拝客の件、もしかすると正邪せいじゃのせいかも……」

「正邪?もしかして、鬼人正邪きじん せいじゃの事か?」

 俺の問いに針名丸は頷く。


 鬼人正邪。

 かつて、輝針城異変を起こした張本人として幻想郷から追われたあまのじゃくの妖怪だ。

 その時は八雲紫の命令で俺達ーー幻想郷の守護者は奴を目撃しても報告するだけと、ある意味、特殊な事例であったのが印象的だったな。

「何故、鬼人正邪の仕業だと?」

「私なりに調べましたから。

 正邪は恐らく、信仰心をひっくり返したんだと思います」

「根拠は?」

「守矢神社や命蓮寺です。今回の参拝客の方は本当なら守矢神社や命蓮寺を毛嫌いしている方ばかりです」

「ほう。何故、そんな事が解る?」

「貴方以外の付喪神の方にも声を掛けましたから。

 そうしたら、最終的にムラマサさんに頼めと言われましたので」


 ああ。成る程な。


 しかし、誰だ?俺に頼めと言った奴は?


 まあ、良い。これが異変なら、霊夢達と共に鬼人正邪を探すだけだ。

 俺は針名丸に頷く。

「事情は解った。なら、霊夢達と共にこの件に当たろう」

「残念ながら時間がありません。元旦はすぐそこですから」

「元旦までに解決しろか……なんと、まあ、厄介な」

 俺は溜め息を吐くと針名丸を改めて見る。

「解った。なんとかして見よう」

「お願いします。それとなるべく、穏便にお願いします」

「まあ、なるべくなんとかしよう」

 そう言って頷くと俺は針名丸に背を向け、鬼人正邪を探しに博麗神社を再度、後にする。


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