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【冬の特別企画】交じり合う物語【終】

 俺と星熊はさとりの案内の元、風魔のいる温泉へと向かう。

「此処に風魔さんがいるのか、ですか?

 ええ。いるでしょう。

 今頃はお空が接待している筈です。

 接待がどんなものか、ですか?

 それは口で説明するよりも見て貰った方が早いでしょう」

「解ったから、いちいち人の心を読むな。

 そんなんだから、嫌われるんだぞ、古明地さとり?」

 俺はさとりに溜め息を吐いて、そう告げると露天風呂になっている温泉へと歩いて行く。

 その脱衣場には風魔の衣服があるから、此処で間違いないだろう。

 そして、霊烏路空れいうじ うつほの服も……。


「あの娘も一緒に入っているのかい?」

「ですから、接待だと言ったじゃないですか?」

「えっ!?そ、それって、まさか……」

 何を想像したのか、星熊が顔を赤らめる。


 俺にはさっぱり、意図が掴めないが……。


「何はともあれ、この無駄な追い掛けっこも終わりなんだろ?

 なら、さっさと行くぞ?」

「ちょっーー待っーー」

 星熊が止めるのも無視して俺が中へと入ると裸の霊烏路空に背中を洗って貰っている風魔らしき男を見る。

 風魔は瞼を閉じて下を向き、腰にタオルを巻いているのに対して、霊烏路空は全裸であった。

「探したぞ、風魔」

「げっ!ムラマサ!?

 こんな所まで来たのか!?」

「あっと、風魔って言ってたね?

 まあ、待ちな。まずはこいつの話を聞いてから判断しておくれ」

 慌てふためく風魔に勇儀がそう言うと風魔も此方にも事情がある事を悟った様でようやく、落ち着く。

「事情があるのは解った。ただなーー」

「なんだ?言ってみろ?」

「この娘をなんとかしてくれ!」

「うにゅ?私?」

 風魔の叫びに霊烏路空が自分を指差し、風魔に胸を押し当てる。

「私、お兄さんに何かした?」

「いや、してないけどーーしてないけど!」

「よく解らんが、霊烏路空をどうにかすれば良いのか?」

「風魔さんも男と言う事ですよ、ムラマサさん」

 首を捻る俺にさとりはそう言って笑う。

「お空。貴女はもう戻りなさい」

「うにゅ?なんでですか、さとり様?」

「風魔さんはもう十分、貴女のおもてなしに満足しているんですよ」

「そうなの、お兄さん?」

「うん!満足している!満足しているから離れて!」

 さとりの言葉と風魔の叫びに霊烏路空が離れると風魔は疲れ切った様子でぐったりする。

「満足しているのなら良かった。

 それじゃあ、私、戻るね?」

 霊烏路空がそう言って脱衣場に駆け出すと風魔は深い溜め息を吐く。

「幻想郷って所はとことん疲れる場所だな?……肉体的にも精神的にも」

「まあ、よく堪えた方じゃないかい?

 逆にちょっかい出してたなら消し炭になっている所だよ?」

 勇儀はそう言うと風魔に近付いて、その肩に手を置く。


 その後、風魔は温泉で一息吐いてから地霊殿で飯を食った後、俺の説明を聞く。

 かなりの遠回りをしたが、なんとか風魔を連れ戻せそうだ。

 その日は夜も近付き、地霊殿で一眠りしてから博麗神社へと戻る事となった。

 その際、星熊も途中までついて来て、妖怪の山ーー正確には射命丸にヤキを入れに行くと言って去って行った。


 ーーー


 ーー


 ー


「ーーと言う事があった」

「んー?そーなのー?」

 八雲紫は欠伸をしながら霊夢の潜っているこたつの隣でうつらうつらしながら、これまでの出来事を聞いていた。

 本当に聞いていたか、どうかは怪しいものだがな?

「らーん。私、もう寝るから、あとお願いねー?」

「おい、八雲紫」

「おやすみー」

 そう言って八雲紫はスキマから自身の家に戻る。

 俺は溜め息を吐いて、八雲藍を見る。

 結局、八雲紫の気紛れが今回の騒動の原因か……まあ、幻想郷ではよくある事だ。

 今更、どうこう言うつもりはない。

「八雲藍。さっさと済ませてくれ」

「解りました。では、風魔さん」

 八雲藍は俺の言葉に頷くと色紙を差し出す。

「風魔さん、此処にサインをお願いします」

「サインか……こう言うのはやった事ないから、上手く書けるかどうか……」

「適当にササッと書いて下さって構いませんよ。

 どうせ、紫様の事ですから、春には忘れているでしょうしね?」

 八雲藍がそう言うと風魔も溜め息を吐く。

「……幻想郷って所に呼ばれた理由がまさか、サインが欲しいからって理由だとはね?

 こう言うのは、もう勘弁して欲しいな?」

「ま、災難だったと諦めてくれ」

 俺は風魔にそう言って、その肩に手を置く。


 こうして、風魔に関わる幻想郷の珍事件は幕を下ろすのだった。

 後日、射命丸が風魔に謝りに来たが、その時には既に風魔は自身の世界に帰っていた。

 その時、射命丸が舌打ちしたのを報告がてらに星熊に教えたら、射命丸が泣きながら自身の出来事をメモっていたな。

 あいつも懲りん奴だ。


 まあ、あの冬の続く異変以来で忙しなかった珍しくも小さな事件だったし、こんな日もあるかと思いつつ、俺は再び雪の降る人間の里を巡回する毎日に戻る。


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