今だけは
今だけは喜びも興奮も必要ない
電話を切れば時間が止まったようで
物音ひとつしない部屋の中
騒がしさを求めた右手を不意に止めて
何かを誤魔化すように僕は歌を口ずさむ
一人では生きていないと知っているから
だから声を聞いていたいなんて告げられない
淋しいなどと言うと安くなってしまうから
名前もつけたくないこの心に従って
静寂に浸って目を閉じても
涙ひとつも出ない自分が浮き彫りになるだけなのに
この静けさをそのままにしておきたい
僕のこの心が何処か遠くへ
行ってしまわないように
何かを誤魔化すように僕は歌を口ずさむ