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プロローグが見当たらない  作者: 相田 渚
プロローグが始まらない
3/3

3話



◇◇◇◇◇



「宮ノ台 灯です。一年間よろしくお願いします」



高校一年生、最初のHRで無難な自己紹介をしながらクラスを見回した灯は、そのくりくりとした目をぱちぱちと瞬かせた。



クラスの誰を見ても、ステータスが表示されない。



てっきり高校生になったら見えるようになるかもしれないと思っていたが、やはり今世は見えない仕様なのか。



高校生になったらもしかして、と少し期待していたが、やはり今世は見えない仕様なのだとがっかりした灯は、そういえばと思い出した。


前回は入学式の前、桜の木の下で運命の人だった生徒会長のハンカチを拾ったのに、今回は誰とも会わずに式に参加して普通にHRを迎えてしまっている。


いや、前回がそういう出会いだったからと言って今回もそうだとは限らないし、相手も生徒会長かどうかはわからない。


一抹の不安にかられながらも、灯は自分に言い聞かせた。



しかしその後も不安を助長させるような事実が次々と発覚した。



まずクラスのムードーメーカー的存在の男の子とそこまで親しくなれなかった。


仲が悪いわけではなく、クラスメイトの一人くらいにしか認識されていない。


前世では同じクラスのバスケ部所属、短髪と笑顔がさわやかなクラスの人気者である男の子が休憩時間におしゃべりしてくれたり、放課後遊びに誘ってくれていたのだがそんな展開にならなかった。



それだけならまだよかった。


別に灯も彼が好きになったわけではないから、親しくなれなくともかまわない。運命の相手はクラスにいないのだな、と少し残念に思っただけだった。



運命の相手どころか、前世にいるような先輩達もいなかったのである。



先輩達表面上はにこやかだけどちょっと腹黒な眼鏡の生徒会副会長。


強面だけど実はこっそり花壇の水遣りをする美化委員長。


他校生との喧嘩の噂が絶えないけれど人情味溢れた先輩。


芸術肌で気難しいけれど笑った顔が美しい美術の先生。


そして、前世の運命の人である圧倒的カリスマと実力を持った生徒会長。


誰ひとりとして存在しなかった。



先生。


教科によって個性や雑談の割合はばらけていたけれど、どの先生も普通に授業して終わった。



先輩。


喧嘩をするようないわゆる不良的な生徒は校内にいなかった。


というより髪も染めていなければピアスを空ける生徒すら見かけなかった。



生徒会。


まず前世のように色々仕事を任されていないようだったし、生徒会主催のイベントも体育祭と文化祭くらいなものだ。カリスマ生徒会長?腹黒副会長?メンバーは皆真面目そうな人達だった。



入学して数ヶ月。


前回のこの頃ならば、生徒会長に突然任命された補佐の役を彼にちょっかいかけられながらも何とかこなし、雑務の合間に副会長と紅茶で休憩していた。


その生徒会終わりに皆帰って先生しかいない美術部に寄って、絵を描く先生と穏やかな会話を楽しんでいた。


生徒会がない放課後はクラスのバスケ部所属の男子と遊んだり、先輩と遊んで途中に喧嘩に巻き込まれてしまうこともあった。


早朝登校した日は美化委員長と一緒に花壇の水遣りして、日々花の成長を観察していた。


そういった中々濃い学生生活を送っていた。



ところが濃い学生生活どころか、今回まだ誰とも出会ってすらいない。



けれども運命の相手が生徒会長や先生に限定されているわけでもない。


まだ灯が見つけていないだけだろう。


前に比べて少しばかりスタートが遅れているけれど、きっとそのうち彼が灯を見つけ、声をかけてくれるだろう。



だって、私()()()だもん。



予想していた展開とズレが生じて焦りながらも、灯は魔法のワードを自らに言い聞かせた。



()()高校生になったんだもの。


だから大丈夫。



そうして灯は、誰とも出会わずに3年間の高校生活を終えてしまったのだった。


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