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3回目の魔王討伐  作者: 黒須
序章 3回目の召喚
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第1話 異世界への召喚

 その日、目を覚ますと俺は見慣れない場所にいた。


──……夢……か? いや……これは……──


 既視感に囚われながら俺がまずしたのは、眠る前の記憶の確認よりも現状の確認だった。

 中世のヨーロッパを想起させる石造りの広い空間。 おそらくは相当に名のある職人が出掛けただろう装飾が細部にまで施され、豪奢を通り越し荘厳と表現するのが相応しい広い部屋。 その真ん中に置かれた奇妙な紋様を刻まれた純白の石でできた台に俺は寝ていた。


 周囲には遠く近く、俺を囲むように複数の人間がいる。 一番近くにいたのは黒いローブを身にまとった人間が十人、綺麗に円を描いて倒れていた。 気分の悪いことにその全員が死んでいる。


──なるほどね……──


 納得しながらさらに周りを見渡すと、全身鎧に身を包み槍を持った兵士たちが壁に沿って並んでいる。 人数は三十人といったところか。


 兵士たちが並ぶ先に目をやれば、一団高くなった場所に設けられた豪華な椅子に座りこちらを見る五十絡みのおっさんと、三十代半ばくらいでかなり美人の銀髪の女性。 その女性によく似た美貌の、おそらくは十七、八くらいの娘と思われるこちらも銀髪の少女。

 それぞれ豪華な服に身を包み冠をかぶっている。 国王に王妃、王女ってところか。


 その脇にはそいつらを守護するように装飾の施された軽鎧(ライトメイル)に身を包んだ男女が五人、帯刀して佇んでいる。

 全員、兵士たちとは格が違う実力者なのは視れば(・・・)分かる。


 その中でも一人、赤毛のおっとりした感じの女性は柔和な笑みを浮かべ穏やかそうな物腰だけど、それとは裏腹に他の4人とは隔絶した力量の持ち主だ。 20代も半ば程度であることを考えればよほどの天賦の才と環境、師匠にも恵まれた上で血の滲むような修練を重ねたのでなければこうはならないだろう。 近衛の筆頭だろうな。


 さらには豪奢なローブに身を包んだ老齢の男たちが3人。 貴族や官吏ではなく宮廷魔術師といったところか。 こちらもそれなりの実力者だ。

 状況を概ね把握すると、念のために俺は自分のことを確認する。


 俺の名前は黒瀬 雄大。

 25才、独身、彼女なし、素人D……いやいや、それはいい。

 都内の小さなデザイン会社に勤務するサラリーマンで趣味はゲームに漫画に小説と……まあ最近じゃこの程度はオタクでなくても普通だろう。


 夕べは土曜の夜ということもあって同僚の殿村と飲み屋で一杯やりながら今度出る新作ゲームの話で盛り上がっていた。 うん、決してエロゲというわけではなくてだね、いやいやR18指定なのは認めるけどね、実に感動的なストーリーということで前評判が高くてそうしたイヤーンなことを目的に買うわけではないのですよ?


 ともあれお開きにしたのが夜中の一時頃でタクシーで1LDKの自宅に帰ったのが一時半頃。 そのままベッドに横になって現状に至る、と。

 うん、自分のこともしっかり思い出せるし夢というわけではなさそうだ。


 ここまでの思考に要した時間はほんのわずか──現状確認はこんなもんでいいだろう。

 俺が切り替えると同時に椅子に座ったおっさんが重々しく口を開く。


「おお、成功したか。 これで我が国も救われるというもの。でかしたぞ、グライン」

「お褒めに預かり光栄で御座います。 儀式を執り行った者共も本望でありましょう」

「うむ。 彼らもよくやってくれた。 護国の者として遺族への手厚い保障と栄誉を与えること、約束するぞ」


 おっさんの言葉にひざまづいて頭を垂れる魔術師らしい爺さん。 こっちのことは無視ですか?などと思っていると、王妃の目配せを受けて王女がこちらへとやってくる。

 近衛筆頭と思われる女性が王女を守るように付き従い、俺の前にきた王女はスカートをつまみ上げ優雅に一礼する。


「初めまして、異界の方。 私はリシェール王国第一王女、ルナ=メリウス・フラウ・リシェールと申します。

 突然のことでさぞや混乱されているかと存じます。 ですが私たちには貴方を害するような意思は御座いません。 まずは落ち着いて話をお聞きください」


 ふむ、かなり可愛いしこんな風にされると男としてはグッときちゃうね。 だけどさっきの王妃の目配せを見ちゃうとねぇ……いや、普通なら気付かないくらいの僅かな動作だったし、いきなりこんな状況で混乱してたら気づく余裕なんてないだろうけど、可愛いお姫様のお願いで気分よくさせようみたいな魂胆なんだろうな。


 思わず深いため息をつくとおそらくは想定した反応と違ったためだろう。 王女──ルナは困惑したようだ。

 そりゃね、普通ならここはどこなのかとかどういうことなのか混乱して聞くのが普通だし、こんな面倒くさそうにため息を吐かれるなんて思わないだろう。

 気を取り直したかルナは改めて口を開く。


「実はですね、ここは貴方が暮らしていた──」

「ストップ」


 俺はうんざりした気分で手を突きつけ、話し始めた王女様の話を止めさせる。


──ああ、またかよ──

初の投稿作品ですが超見切り発車です。(笑)

更新も遅いと思いますが楽しんでもらえるようがんばります。

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