19.近い未来予想図。
ギルドで戻って、報酬金を頂くと、私の分け前分を全てヒナタにあげました。マジックボックスというスキルを付加させて。それで、しばらくはやっていけるでしょう。そして、しばらくルーマ様の家で過ごさせてもらう事となりました。世間一般に、世間知らずと言いますから。そこで、情報を共有してください。
ラファエル様の屋敷のとある応接室。そこに、私達は集まりました。ヒナタが世間知らず過ぎますからね。この人は乙女ゲームなんてした事ありませんから。ゲーム機とソフトはその代わり、頂きました。自邸でこっそりやりましょう。
ヒナタは呑気そうに尋ねます。
「なぁなぁ、この世界に魔王とか、魔族とかいないの?」
「そんなものはおりません。しかし、“悪しき魔女”、シャルル・フィン・クライバー公爵令嬢の魂は未だにこの世界を漂っているようですね。それが、魔王的存在なのでしょうかね?」
「“悪しき魔女”?そんなのがいるのか?」
レイナ様がふと思い出したように、口にする。
「新しい生贄・・・と言っていましたね。あの場合、お兄様の事でしょうね。」
「でも、杖を折ると、声と共に消えていきましたね。と言うのも全て情報を漏らさず、説明してもらいたいですね。」
ミヒャルド様、またもやブリザードのような笑みです。身体が冷えるので、やめてください。
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「レイナ!何で、そんなに危険な事をメアリーお嬢様にさせているのですか!!下手すれば、メアリーお嬢様が“悪しき魔女”に身体を乗っ取られていたんですよ!!あまつさえ、強盗犯を捕まえるなんて。」
ルーマ様とアリシア様は怒っているミヒャルド様を宥めます。
「もし、あの時計がなければ、俺はとてつもない後悔をしていたんです!!」
「でも、そのおかげで私は、救われたのです!」
ミヒャルド様はしかし、冷静な対応をとる。状況把握は大の得意ですからね。
「でも、メアリーお嬢様は“悪しき魔女”に乗っ取られませんでしたが、代わりに貴方が乗っ取られそうになっていませんでしたか?危険な事には変わりありませんよ。」
話に入っていけないのに、呑気に参入するヒナタ。しかも、“日本語”で私に話しかけてきます。
『何で、こいつら魔法が使えるようになってんの?今聞いた話だと、アリシアって奴以外、そんな要素なくね?ガチャスキルでも持ってんの?』
『持っていませんよ。というか、私の役どころ、知っているのですか?知らないなら、知らなくていいですが。』
『・・・まぁ、知らんけど。俺、乙女ゲームなんてやらねーし。』
『私は、今日自邸に帰りますけどね。そこで、魔法の使い方でも練習してください。貴方、世間一般には世間知らずもいいところですからね。』
一同は私達の様子を見ていた。不思議な光景に思えたでしょうね。でも、秘密話をするにはちょうどいいのです。
その時、未来予知が私を襲う。それに、付随して時計も反応を示す。時計が赤く点滅するのが見えた。
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「超嫌な予感がするんだけど。」
ヒナタは身体を震わせます。傍にいたアリシア様も同様です。その近くには、ラファエル様、ルーマ様にマクシア様がおります。三人はどういう事か分かっていないようです。
場所はどこかの洞窟のようです。確かに、雰囲気も不穏な空気を醸し出しています。この人達は、不安を感じながらも奥へと進んでいきます。
そして、奥には一人の女性が立っておりました。マクシア様はすぐにその女性が誰だか理解しました。
「ルナ!?何で、ここに・・・?」
ルナ、と呼ばれた女性は顔を上げる。瞳は何故か、血のように赤い。それに、瞳にはとある術式が刻み込まれている。見るからに、この方、操られていますね。ヒナタとアリシア様は悲鳴を上げる。
「ぎゃっ!?」
「きゃああぁぁぁ!?」
マクシア様も一歩後ずさる。そして、ヒナタは適当に考えた魔法で、必殺技のように叫ぶ。
「予測不能!!なんか、役に立つもの出てこいや!!」
そうすると、天井から空間を無視した魔法が発動する。そして、天井から黒い靄が発生したと思ったら、私、私にくっついていたレイナ様、ミヒャルド様、ランドール様に、ミカエル様まで靄から出てきて、地面に落ちていきました。私は、捕捉の魔法で、地面に落ちる衝撃を和らげましたが、私は、ルナ様を見て、ポツリと一言。
「・・・シャルル・フィン・クライバー公爵令嬢の魂・・・。見事に操られていますね。」
ミヒャルド様が冷静に分析します。
「というより、身体が乗っ取られているのでは?」
「寧ろ、何故ここに来たのかが、知りたいですわ。」
私は、やれやれと思いながらも、歌姫のように、唄う。
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完全に巻き込まれですー!?というか、ヒナタ何してんですか!!攻略対象、勢揃いさせないで下さいー!?
私は、ため息をつく事しか出来なかった。




