兄弟を食らう
読者への挑戦のタグがありますが、単に「わたし」の正体について考えながら読んでほしいという意味でつけました。
結果を知っても怒らないでくださいね?
季節は冬になり、雲はなんだかのっぺりと薄くなっている。
寒さが身に応えるこの季節、わたしは凍えていた。
我が家は穴が沢山空いているため、冷たい風がわたしの体に吹き付けている。
「あー寒い。もうこんな季節か、、、周りの草は枯れてしまっているしもうわたしの住処は安全とは言えないなぁ。食事もここ最近出来ていない。もうそろそろ引越そうか、、、」
冬になり、夏場は天国のように食材であふれていたこの場所にはもう食料になる奴らがいなくなっていた。
当然、このままここに住んでいたらわたしは死んでしまうわけであり、どこか暖かい場所に移動しなければならない。
わたしは住処を捨てて道を進んだ。
旅支度は必要ない。ただ必要なものはおのれの身一つだけである。
…………
兄弟達は今何をしているのだろうか?
わたしは住処を捨てて歩きながら考えた。
わたしのように今はひもじい思いをしてはいないだろうか?
なんだか母の元での暮らしが懐かしくなった。
わたしは母に育てられた。父はわたし達を産んですぐにわたしの母に食べられてしまったが、いつも優しかった。
それに、父が死んだ後も、全然寂しくはなかった。
だってわたしは50もの兄弟姉妹に囲まれて暮らしていたのだから。
ああ、懐かしい。
あの日、大嵐がわたし達の住処を襲わなければわたし達は今も一緒に暮らしていただろう。
わたし達はその日の嵐でバラバラになってしまった。
悲しい記憶だ。
………
あぁ、そういえばバラバラになってから1番年上の姉に会ったことがあったなあ。
あの時、彼女はわたしになんと言っただろうか?
「わたし、ジョウと交尾したの、まさか末っ子のジョウと子供を作るとは思わなかったわ。でも、もうジョウはここにはいないわ。だってわたしが食べちゃったもの。だってお腹が空いていたんだもの。しょうがないわ、、、」
そうだ、思い出した。
姉は弟の子供を産んだんだった。
そして弟を食べてしまったんだった。
母と同じように、、、。
かわいそう弟、かわいそうなジョウ。
でもやはりジョウが羨ましい気持ちがあった。
たとえ食べられてしまっても家族と一緒にいたかった。
家族は今何をしているのだろうか?
…………
しばらく歩いていると、手頃な高さの木にたどり着いた。
これはいい、飛ぶにはぴったりだとわたしは思った。
木に足をかけて、わたしはスルスルと木を登っていった。
木にはわたしと同じ目的だろうか?仲間も上を目指していた。
そう、今日は飛ぶにはぴったりの日なのだ。
風が強くて遠くまで飛ぶことができる。
わたしは進んだ。
上へ上へと進んだ。
そしてついに木のてっぺんにたどり着いた。
糸を出し、わたしは木の先からぶら下がる。
そしてわたしは足を動かして風を掴みながら糸を出した。
ヒュー
冬の冷たい風がわたしの体を包み込んでいく
今なら飛べる!
わたしは風に身を任せて飛び立った。
下からの上昇気流をうまく捕らえてわたしの体が宙に舞う。
気流が安定して、空気の震えが穏やかになった。
だいたい上空4000メートルといった具合だろうか。
周りを見渡すと仲間が沢山飛んでいた。
中には兄弟姉妹の姿が見えた。
兄さん、姉さんまた会えたね。
わたしは嬉しくなった。
しかし、おそらくまた一緒に暮らすことはできないだろう。
あの風は南へ、あの風は北へいく。
きっとバラバラになる。
でもまた会えたことがわたしには嬉しかった。
………
わたしは風に任せて空を飛んだ。
そしてついにある一軒家にたどり着いた。
木造2階建の家だ。
家の中は暖かくて気持ちがいい。
おまけに、ハエの取り放題ときたもんだ。
これならしばらくは食うに困らない。
わたしは糸を壁に貼り付けて巣を作った。
粘着力がない縦糸と、粘着力がある横糸を組み合わせて巣を作った。
今回もいい住処ができた。
わたしはこの家に住み着くことにした。
またしばらくは安定して暮らせるだろう。
ん?わたしは誰か知りたいかい?
わたしは「蜘蛛」だよ。見ればわかるじゃないか。
一部、近親交配を匂わせる表現がございますがこれは蜘蛛の世界の話です。人間では法律で禁じられています。
………………
どうです?意表はつけていますか?




