転生者の引きこもり
日本人だった僕は、まるでRPGのような世界に転生した。
当然ながらそんな経験初めての僕は、『魔法』や『モンスター』を見てとても驚愕した。
「アルフ、あんたもう25歳でしょっ! いい年した大人なんだから、良い加減に働きなさいっ!」
「………」
……そして、その恐怖の余り、私は引きこもりに成ってしまった。
「クズ息子が、お隣のタロー君は勇者協会の試験に合格して立派な勇者に成ったってのに……お前は何時までそうしてるんだい!」
「………」
しかし、こんな私でも転生者ですから、当たり前な事に(人によっては、不自然にも)チート能力を持っています。
「もう、今日という今日は我慢の限界です! 力ずくで部屋から引きずり出してくれるわぁぁぁー!!」
「ヒィィィ、殺される! 働くから許してぇ~~!」
ドゴォォォーン!!
とうとう、母の理性はブチ切れたらしくドアを蹴破ってきました。
「な、部屋がもぬけの殻!?」
『何て言うと思ったか、クソババア! 私のチート能力、【ダンジョン・マスター】で私は安全な迷宮の中にいるんだよーww』
そう、私はとっくの昔にこの部屋から自家製の地下ダンジョンへと移り住んでいました。……ちなみに、この声はインターホンの様な魔道具を使っています。
「ダ、ダンジョンの中ですって!?」
『おい、クソババア! 今まで散々【スライム相手で逃げ帰ってくるなんて、情けないクズだ!】とか【戦えるように成るまで家に帰ってくるな!】とか、鬱陶しい事言いやがって、私はこれ以上闘いたくなんか無いんだよ! ……だから、私はこの楽園の中に一生引きこもり続けるんだよ!!』
今世の私の母は元A級勇者、生粋の武闘派です。だから、私にも強さを求めました。それが、平和な世界の記憶を持つ私には辛かったんです。
……まさか、前世では普通に市役所職員として働いていた自分が、異世界でヒキニートに成るなんて思いもしていませんでしたよ。
「馬鹿アルフ、そんな土塊ん中に潜ったって何も無いでしょ! ……幸せってのは闘争の後の勝利にこそ有るのよ!!」
『腐れ脳筋ババア、そんな事はない! だって私には……』
『もう、アルフさまぁ~♡ もっとこっちに集中してくださ~い♡』
『うん、わかったよ~サキちゃん♡ ………とにかく、クソババア、私は絶対にこのダンジョンから出るつもりは無いからな! 消え失せろっ!』
ブチッ!!!
こうして、私は堅牢な迷宮の最深部で夢魔のサキちゃん筆頭に眷属ハーレムに囲まれて幸せに暮らした。
……半年ほどは
追伸:最後の【ブチッ!!!】はインターホンの音では無く、母の理性の糸が切れた音でした。