青葉とはんなりお狐様の出会い
プロローグ
世界に秘密があるのはよくある話でして、70年代から約百年に及ぶかの戦争は、世界の大いなる陰謀と秘密が抑えきれなくなって起きてしまった。
人類史と言うものがあるが、所詮見える歴史は人間の歴史に過ぎない。ピラミッドも、平安京も、ローマ帝国もアヘン戦争も、見えるのは人間“だけ”の歴史。だが、そんな人間史の裏側では別の人類が歴史を支えてきた。人は彼等を人間では無い存在、人外と呼ぶ。時にマリアの受胎告知をし、ソドムとゴモラを燃やし、ギリシャ神話に現れ、牛若丸を強く育てた。人の血を吸う者もいれば、狼になる者、死体から第3の人生を歩む者、物から生き物に変化する者もいた。
時に人間は人外と手を取り合って生活をし、互いに戦い、協力し合う仲となっていた。その証として、妖怪や伝承は人外と人間の歴史である。しかし、人間の技術が発達するにつれて、人間は人外より遥かに力が強いと思い込む。技術の力で人外をねじ伏せ、やがて政府だけのモノへと変化する。政府は言う、「人外は人に知られてはならぬ。人外は兵器だ奴隷だ尽きることのない兵士だ」と。
かの有名な戦争で、人外達は多くの実験材料や兵士に使われた。中には子供や老人の人外もいた。やがて戦争は静かなる戦いへと移ると、ある人外の種族…一般的にヴァンパイアと呼ばれる血を吸う者達が立ち上がる。世界にある7つの有名なヴァンパイア一族はバレンタインに一斉に政府の要人を殺害。黒羽と呼ばれるヴァンパイアの者が某国のミサイルボタンを押し、世界各地の有名な都市にミサイルを撃った。後にその日は「真っ赤なバレンタイン」と呼ばれ、ミサイルを見た他の人外達や奴隷や実験動物扱いされていた人外達も決起し、人間との百年に渡る戦争が始まる。人はそれを「ヴァンパイア戦争」と呼ぶ。この時、人間の殆どは人外達は“存在しない者”と思っていた為、隠していた政府に批判が殺到した。また、政府は魔法が存在する事も隠していたが、それはまた今度話すとしよう。
さて、人間対人外の戦争はどうなったのか。結果は歴然の差だった。1人で戦車を持ち上げられて素早い動きも出来るヴァンパイアが何万も軍を成し、狼の力を持つ人狼や死なない死体のゾンビがいる多種多様な人外達。たとえIBMを持つ人間でも勝てる訳が無かった。いつしか人間は白旗を上げ、人外達に人間と同じ権利と住処等を与える条約を結んで一先ず終戦を迎えた。
そして2116年現在、人外達と人間達は同じように協力し合って生活している。人の姿をしている者が多いが、ケンタウロスのような人馬や、ケットシーのような二足歩行の猫もいる。そして、人間の技術力によるコンピュータが発達し、誰もがコンタクトレンズ型ウェアラブル端末を持つ時代となった。
混沌とした世界がそこにはあった。
さて、今回の舞台は日本。ヴァンパイア戦争の際、独自の進化を遂げた人外達通称“妖怪”が人間と戦い東京や名古屋は激戦地となる。大概の建物は廃墟と化し、かのスカイツリーは今も大百足の死体が巻きついたまま登れなくなった。けれど戦争後の復旧は早く、スカイツリーは別として大体のビルは戦争前より高くそびえ立っていた。また、意外と妖怪というのは人間の事を悪いように感じていない。戦争が終わるとすぐに仲良くなり、それもあってか日本は世界有数の人外国家と化した。
特に、人外無法地帯と呼ばれる場所がある。戦争の際に唯一被害を免れ独自の進化を遂げた地…京都である。
青葉と京都への旅
「お前はホント、此処までよく頑張ったものだな。おりゃあ、お前の成長が嬉しい」
「師匠のおかけです!でも僕、もっと力を究めて国家認定の陰陽師になりたい!師匠の夢を叶えたい!」
「お前は、それで満足なのか?お前自身の夢は無いのか?」
「師匠が喜ぶなら僕は何でもいいさ!」
「…だからお前はまだ半人前なんだよ。おりゃあの為に活躍する以外あるだろ?」
「へっ?」
「まあ、チビなお前にわかるわけないか。また明日来い。教えてやるから……」
青葉七緒は目を開けた。幼き日々を思い出し、自然と涙が流れ落ちた。あれは夢という名の追憶、彼に全てを教えた師匠は今いない。
『 まもなく、京都ぉ~京都ぉ~。お降りの方は、停車後にお立ち下さい。尚、京都に観光目的の方はパンフレットを参考の上、注意しながらお楽しみください。それでは、ご乗車有難う御座いました』
此処は新幹線の中。青葉は九州から遥々京都へとやって来た。この青葉七緒という男、歳は20歳で種族は人間。本当は九州に漁師をしている家族がいるが、家族の反対を押し切って京都へ移り住む事にした。その理由は、彼の恩師である師匠と関係がある。
「もう京都か…あっ、降ります!すいませーん」
隣に座るサラリーマンらしき犬頭の男に小さくお辞儀をし、そそくさと新幹線から降りる青葉。新幹線から降りると、ジリジリと泣き喚く蝉と太鼓の音のような龍の鳴き声が駅に響き渡る。左を見ればうら若い中学校の修学旅行、右を見れば節操なしのおばちゃん達のツアー列。この街は戦争を受けなかった為、古都の街並みが残っているので観光目的に訪れる人は人外人間問わず多い。が、青葉は観光目的ではなくある裏の目的があった。
この街、京都は特殊な結界により古き人外が多く住む。観光目的なら感じられない混沌とした雰囲気は、今も魑魅魍魎の百鬼夜行が見れる程。多くの陰陽師達は、この京都に10年住むことで修行を百年したと同じぐらいになると言われ、陰陽師の聖地と呼ばれている。そう、青葉は陰陽師見習いである。だが、陰陽師の聖地という事は同時に人外無法地帯でもあった。
駅から出て、青葉はウェアラブル端末のスイッチを入れる。地図を表示させ、目指す先はこれから住む祇園近くのアパート。荷物を背負い、いざ京都の地を歩く。空を羽がある人外達が飛び、羽のない人外達も飛んだり歩いたり。九州はまだ人間の方が多い方な故に、青葉はその光景に口を開けたまま歩いていた。空には羽がないのに飛べる人外、足元には小指のような小人もいてまるでサーカスを街にしたかの様な混沌感。と、その時だった。
「おっとわりぃ!」
ドンッ!
青葉の右肩に衝撃が走る。振り返ると、どうやら金髪の人馬がぶつかったようだ。青葉もごめんと声をかけようとしたが、人馬はすぐに何処かへ走り去った。ただぶつかっただけだと思っていたが、青葉の肩に違和感が走る。軽い。荷物が妙に軽い。まさかと思い、背負っていたリュックサックを降ろしてみた。
「!!?ない…嘘だろ!?」
リュックサックに付けていた巾着袋が無くなっていた。巾着袋には金目のモノは入っていないものの、中身は青葉の陰陽師としての道具一式である。龍が生まれた所の滝の水、墨、馬の尾の筆、硯、そして無地のお札が入っていた。まさか来て早々に盗難事件が起きるなんて…油断していた為にその巾着袋だけGPSも付いていない。警察には一応通報するが、恐らく盗難品が戻ることは無い。
ここだけの話、人外無法地帯京都は人外に関する事件事故がすば抜けて多い。盗難なんてのは別に珍しくはない。油断していた青葉の責任でもある。だが同時に、青葉はこの街に来て正解だと思う。青葉が求めていた人外事件、陰陽師としての力が高まる事件がここにはあるのだから。
「どれも買えばいいか。アレは無事だし」
リュックサックを再び背負い、気を取り直して今度は地下鉄に乗り込む。地下鉄にも人外達は溢れかえっており、小さな小人から大きな熊の男まで様々。人外のせいで電車が止まる事もしばしばあり、日本のあれ程正確無比な交通伝説は儚く消えた。この前は地中に潜っていた土の中の龍とぶつかったことも。
『 まもなく、八坂神社前~八坂神社前~』
青葉は地下鉄から降り、地上へと出てきた。八坂神社は観光客の人間達と人外達が入り混じり、多くのお土産屋さんが賑わいを見せていた。ハンカチで汗を拭き、ウェアラブル端末の画面を再び表示させる。地図によれば、この先にある入り組んだ路地を行った先にアパートがあると。
地図を頼りに歩くこと30分、正午に新幹線で京都へとたどり着いたが、気づけばもう午後3時。日はまだ傾いてないが、思えば昼食を食べずにここまで来たし、先程の盗難事件の件で警察にも寄った為に身も心も疲れていた。
「あともうす…」
「おうおう、お前観光客か?」
右の路地を曲がろうとしたその時、背後から擦れた低い声が聞こえた。青葉は振り返ってみると、2mありそうな巨大な鬼2人が金棒片手に立っていた。般若の面とはこの事か、獅子が怒る時の表情の如き怖い顔つき、ボディビルダーのような筋肉質の体つき。半裸で鋭い角が2つの赤鬼、同じく半裸で角が1つの青鬼が睨みを利かせて青葉ににじり寄ってきた。
「えっと、僕は別に観光目的では…」
「おうおう、金があるならはよ出せ!」
「出せや金!」
「ひっ!?おっお金なんて持ってない!ごめんなさい!」
すぐにそれが恐喝目的だと分かると、青葉は背を向けて走り逃げようとした。だが青鬼は金棒を投げ、青葉の目の前に突き刺した。鈍い音が響き渡り、石畳の地面にヒビが入る。お札など道具さえあれば、青葉も鬼を蹴散らせる事が可能だが、先程盗まれた為に何も出来ない。口を鯉のようにパクパク開け、目を見開き、震えながらその場で涙を流して背負っていたリュックサックを降ろす。鬼達に完全に負けを認め、許してもらおうと懇願した。情けないが、青葉には力がないのである。
「ごめんなさい、僕を食わないで。お金少ないですけど…」
「おうおう、素直にそうしろよ」
「そうしろってんだ」
リュックサックの中には確かに金目のモノはあまりない。彼は日本では一般的となった電子マネーを主に使っていたから。持っていたものも、着替えや日用品が主だ。だが唯一、大切なものがあった。古びた大きめの巾着袋を鬼が取り出すと、青葉の顔が青ざめて急いで赤鬼の足を掴んだ。
「なんだお前!まだやるのか?」
「ごめんなさい!その巾着袋だけ返して!大切なものなんだ!!」
「ほう、つまり金目のモノだな!」
「違うけど…返せ!」
「どけ!」
赤鬼は足を後ろへ振り上げ、足にいた青葉を壁に叩きつけた。意識が遠のき、ぼーっとした目で鬼達が巾着袋を開ける様を見た。中身は丸い鏡と5つの宝玉だ。鏡の方は五つの凹みがあり、三角縁神獣鏡のような見た目をしている。宝玉はその凹みにぴったり嵌るサイズで、赤青黄色に緑とオレンジ色がある。鬼達はその宝玉が宝石だとはしゃぎ、鏡の方はただの古びた鏡だと思いヒョイと投げ捨てた。
「やめろおおおおお!?」
青葉は泣きそうな目ですぐに立ち上がって鏡をキャッチしようとした。だが壁に叩きつけられた際のダメージが彼の動きを鈍らせる。このままだと、鏡は石畳に直撃して割れてしまう。もうダメだ。心のどこかで諦めかけて涙を呑んだ。
その時それは奇跡か幻か。鏡が石畳ギリギリで止まった。青葉は愕然としたが、よーく見たら鏡を青い炎が囲んでいた。
「あんさん、大切なものは大切にせなあかんで」
ハッとした青葉はすぐに鏡を掴んで確認した。傷一つ無い綺麗な円形の鏡である。それを確認した途端、青葉は安心と申し訳なさのあまり涙が溢れ出た。
「あ……あぅ……ありがとうございます!」
「ええで。うちは通りがかっただけやし」
銀色の髪に爽やかな青い市松模様の着物を着た男。ちょっと違うのは、その男には銀色の三角耳とフサフサの尾がある糸目の男という所。男は咥えていたキセルを口から外し、鬼達に向かって煙を吐きかけた。それが挑発だと分かると、鬼達は激怒し、金棒を振り上げた。
「危ない!!」
「心配せんでええで。この鬼は、ただの紛い物や」
「えっ?」
「狐火五連…蒲公英!」
銀髪の男の手から繰り出されるは、5つの青白い火の玉。火の玉は列を成し、鬼達を取り囲むように輪となる。そして勢いよく火の玉は弾けて辺りに火花を散らした。思わず目をつぶるほど眩しいそれは、鬼達を忽ち怯ませて腰を抜かしたが、攻撃としてはコケ落としに過ぎない。言わば爆竹と同じである。それに早くも気づいた青葉は不安そうに銀髪の男を見るが、男は小さな声で「心配せんでええ」と言って指をさす。辺りに立ち込める煙の隙間を見ると、気絶した豆狸が2匹と丸太が2本そこにあった。
「えっ!?鬼達は!?」
「あれが鬼やで。あんな絵本にあるような鬼、この世界にいないで普通」
「そうなの!?僕、鬼を見るの初めてなものでして…」
「なら仕方が無いか。ええかあんさん、鬼もヴァンパイアも元は同じや。意味わかりますか?」
「……いえ、よく分かりませんが」
「あとは検索しとき。うちは暇潰しをしただけや。後始末はあんさんに任せるで」
銀髪の男はカランコロンと下駄を鳴らしながら、キセルを咥えて背を向けて去った。一体、彼は何者なのだろうか。だがそんな疑問より先に、青葉はその男に一目惚れしてしまいしばし彼の背中を見つめていた。恋ではなく、助けてもらった美しき粋な男として。
彼が完全にいなくなる頃、気絶していた狸2匹が目を覚ます。狸達は自分達がまだ鬼の姿だと思い込んでいるのか、喧嘩腰で捲し立てるような口調で青葉に迫ってきた。
「よくもやってくれたな!!お前はもう許さねぇぞコラ!」
「おらおら、俺達がたっぷり痛めつけてやるぞコラ!」
「……あのー、貴方達狸なんですね」
狸達は互いに顔を見た。しばしの沈黙、そしてお互いに顔を触って確かめ合う。触れた途端、フワフワな毛が手を包み込む。鬼にはない獣の毛である。
「えっ?」
「あっ兄貴ぃ!?その姿どうしたんだ!?戻ってますよ!」
「ほんとだ弟者!?何故だ!?化けていたのがばれちゃもう何も出来ないじゃないか!?」
「とりあえず、警察には連絡しますね」
「すっすいません、連絡しないで…悪かった」
「ほんとすまなかった。警察だけは勘弁してください」
すっかりもぬけの殻か、狸達は頭を下げて警察に通報する事を止めた。これには青葉も困った表情を浮かべるが、やはり悪いことは悪いことなので警察には一応連絡しておいた。
数分後、小太りの中年警察官2人がが駆けつけた。狸達の身柄は警察に引き渡されたが、その際青葉は警察にあの銀髪の男について尋ねてみた。何せ、見とれていてお礼すら言えてないことに気づいたのだから。
「すいません、もし知っていたらでいいのですが…人を探しています」
「何だね?どんな人かな?」
「三角耳にフサフサの尻尾、銀髪で糸目の男です。狐火を使える人で、さっき助けてもらった人なのです」
「恐らく狐の種族だが……京都には狐が沢山いるからそれだけだと分からないな。他になにか分かる事はないかね?」
青葉は記憶を巡らせて思い出そうとした。あの男は何者だったのか。あの男の特徴…何かないのかと。と、此処でもう1人の警察官が散乱した荷物について尋ねてきた。
「この荷物は全て君のものかね?」
「あっ、はい。その丸太以外…あれ?」
散乱した荷物の中に、見慣れない物が1つ紛れ込んでいた。それは、藍染のハンカチである。ハンカチには刺繍も施されており、扇を咥える狐の家紋らしき刺繍が縫ってあった。このハンカチは明らかに自分のではない、だとすると狸達のものかと思ったが、狸達に見せても首を横に振るだけ。試しに警察官に見せてみると、何やら神妙な表情を見せた。
「あんた、これが何か分からないのか?」
「僕、ここに来たばかりで何も……」
「悪いことは言わない。このハンカチの持ち主と関わらない方が身の為だ。こいつは、とんでもない奴だよ」
「どういう事…」
「ハンカチは預かる。あとは詮索しないことをお勧めしておくよ」
警察官はハンカチを取り上げると、狸達に手錠を嵌めてその場から立ち去った。青葉は警察官達にその理由を聞こうとしたが、警察官がその理由を答えることは無かった。と言うか、まるで虫が悪いような苦虫を噛んだような、そんな顔をされてしまった。
そんなこんなで新居に到着したのが夕方5時すぎ。青葉は腹が減っていたが、疲れがピークに達していて部屋に辿り着くとすぐに寝てしまった。初日は散々だ。やはりこの街は、一筋縄じゃいかないようだ。身に染みてそれが痛感した日だった。
次の日、起きたのは朝6時頃だ。酷い空腹により起床したが、生憎食べ物は何も無い。ふらつく足取りでウェアラブル端末を起動させ、近くのコンビニを検索。どうやら此処から徒歩5分の距離にあるようだ。眠い目を擦りつつ、アパートから出てコンビニへと向かう。さんさんと太陽の光は隙間を突き刺し、影のようなうねうね動く生き物達を闇の中へと追いやってゆく。夏の朝はまだ涼しく、人外人間問わず爽やかな朝を迎える。
コンビニに入ると、籠にお茶と弁当を放り込む。この時代、支払いの殆どが現金から電子マネーに変わったが、アルバイト店員はいつの時代も変わらずやる気がない。一通り買い物を済ませた青葉はそそくさとアパートへ戻り、買ってきた弁当を食べながらウェアラブル端末である事を検索した。扇に狐である。
すると、幾つか情報が出てきた。この京都には三竦みとして鵺・化猫・妖狐の一族があり、その中で扇に狐の家紋を持っているのが妖狐の一族である。元々玉藻前が石となり飛び散った体から生まれたとされており、日本有数の強力な力と権力を持つ妖狐一族と言われている。故に、妖怪の中では有名なヤクザのような一族らしい。これが警察官がああいった訳である。その名を…
「八月十五日?なんて読むのかな?」
八月十五日と書いて「なかあき」と読む。変わった苗字であるが、此処で意外な情報を手に入れた。本家八月十五日の一族の屋敷がなんと観光地として定められていたのだ。ヤクザと言われていたが、ヴァンパイア戦争の際は人間と共に京都に結界を張ったと言われており、彼等も人間には良き面を見せて期間限定だが開放しているのだ。しかもそれが夏の文化財開放期間のみ。今である。
「行くしかないか。彼に会えるかもしれないし」
連絡先に電話をしてみると、どうやら開放はしているがガイドを付けて案内するのが原則決まりらしい。故に時間は限られている。今日の場合は1日4回の予約制である。あまりお金はないが、彼にお礼を言わなければこの先後悔するだろう。青葉は予約ボタンを押してすぐさまその場所へ向かった。
その場所とは、京都の嵐山。渡月橋を渡って大通りから路地を進んだ先にある。嵐山は昔から龍安寺など石庭や庭が有名な寺が多い観光地であるが、今もそれは変わらず渡月橋からの光景は春夏秋冬雅なり。
しかし、観光客が多い道から一歩外れると雰囲気はガラリと変わる。昼間なのに紫色の霧が漂い、提灯型の付喪神がゆらゆらと揺らめきながら石畳の道をうっすら見えるように照らしている。青葉は不思議と胸がワクワクしたが、同時に自分が踏み入れていい世界を逸脱しているのではと不安の鼓動が高まった。八月十五日の一族の屋敷を観光目的で開かれたのは最近故、観光地である事を知らない者も少なくない。現に青葉は今、誰ともすれ違っていない。ウェアラブル端末ではこの道を真っ直ぐ進めと示しているが、そもそも自分が今何処にいるのかそれが分からない。ウェアラブル端末も、妖術の類にはまだ疎いのである。真っ直ぐ進めはあまりあてにはならないし、エラーが出ないだけまだましな方である。
「ようおこしやす」
「ようおこしやす」
暫く歩いていると、紫色の霧は晴れて目の前に大きな関所の如き門が現れた。門の周りには先程からすれ違っていないのに数十人の人々がまだかまだかと案内を待っていた。人々は人間が多いのだが、外国人や人外もいる多種多様な面々である。一方、2人の狐の舞妓さんは白塗りであるが顔は瓜二つ。舞妓であるが、狐色と言うべき金髪の髪を結っていた。三角耳とフサフサの尾がなんとも可愛らしく、恐らく10代後半であるだろう。
と、此処で突然背後から青葉の肩を叩く者が。振り返ると、サングラスにチューリップハットの変った格好の男が立っていた。
「あんさんもこの屋敷の者が気になりますか?」
「ええ。恩人らしき人が此処にいるかもしれないのです」
「狐はんの恩人?」
「どうしても、お礼が言いたいのです。名前を名乗らなかったけど、銀色の狐で扇に狐の家紋を頼りに来ました。貴方は、観光目的で?」
「せやな、うちも昔から興味あってな。でもあんさん、銀色の狐なら伏見さんに行くべきでは?」
「何故?」
「何故って、妖狐で銀色はそうはいない。徳の高いお稲荷様が銀色の狐だが、妖狐となると皆金色の髪が多いんやで。もしその恩人が銀色なら、伏見さんとちゃいますかね?」
「でも……」
「はーい、皆さん!今から案内を始めますよー!」
と、此処でこの屋敷の使用人らしき狐の男が現れた。金色の髪を腰まで長く伸ばし、黒い着物を纏う三角耳とフサフサの尾を持つ狐の男。男は手に冊子を持ちながら、淡々と注意事項を説明し始めた。写真撮影はフラッシュ禁止でSNSに載せるのも禁止。飲食や火気厳禁。火を無意識に発生させる者は案内不可等など。結構な注意事項の多さであるが、元々ヤクザな一族故にあまり開かれた一族ではない。現に、今も八月十五日の一族を良いと思わぬ者も多い。八月十五日一族も京都を救った英雄とは思ってないという。
「それじゃあ、案内します。案内役は八月十五日家の右腕として百年以上一族総勢で使えて6代目の美島亜鶴がお送ります」
亜鶴の案内の下、門の向こう側へと入る。中は平安貴族が住んでいそうな内装。木目の柱が年月を経て燻された色になっていたが、この佇まいは彼等の一族が生まれた頃から変わらない。高そうな壺、飾ってある刀剣に弓矢、庭には池と鯉。狐の石像も多々置かれており、今も使われているのに静まり返っていた。亜鶴曰く、この時期は使用人の狐達は少数精鋭にしており、開放しているのも狐達が少ない為でもある。
廊下を暫く歩いていると、見事な尾長鶏が描かれた屏風がある大きな部屋が。この部屋は正月になると、全国の親戚の狐達でいっぱいになるという。青葉はその屏風の説明を真面目に聞いていたが、先程のサングラスの男は門の前にいた舞妓さんと会話していた。何だがふしだらに見える上に全く案内を聞いてない様子でぺちゃくちゃ会話していた。嗚呼、こういう迷惑な客ってどこにでもいるんだな。青葉は振り返って指を口の前に立てた。
「静かにしてください!それと、舞妓さん達に手を出すのはまずいのでは?」
「すまんな。あんさんは、真面目なお方やな。うちはついつい綺麗な方に目がないんや」
「気をつけてくださいよ」
サングラスの男はにこやかに舞妓さん達に別れの挨拶をし、亜鶴の案内に戻った。舞妓さん達も嫌がっていた筈、と思っていたらサングラスの男と離れる際にニコやかにお辞儀をした。小さく「ありがとうございます」と言うと、その場から立ち去った。どうやら舞妓さん達も満更でもない様子だったようだ。一体このサングラスの男は何を話していたのだろうか。
廊下を更に歩くと、今度は書庫に到着した。書庫には狐の男が数人おり、忙しなく調べ物をしていた。何を調べていたのかは分からないが、どの資料も博物館級の価値があるものばかりである。亜鶴の説明によれば、資料の中には陰陽師がヨダレを垂らして欲しくなる物もあると聞き、青葉が思わず質問をしてしまった。
「あのー、その資料ってウェブで閲覧可能ですか?」
「残念ながら此処の資料のデータ化はまだ済んでいない。ウェブ閲覧も考えていないから、今の所は見せられないかな」
「そんな…」
「あんさん気を落とさんでええで。此処の資料はそこまでする価値は無いと思うで。カビ臭いし」
「貴方なんて事を!カビ臭いとか価値が無いって!僕こう見えて陰陽師なんですよ!ですから…」
「あのーそこのお客様方、少し黙ってくれま…」
亜鶴が慌ててサングラスの男と青葉の揉め事を止めようとしたその時だった。
バァン!!
薬缶が転がり、花火をした後の香り…火薬の香りが突然鼻に突き刺さる。辺りにいた観光客達はその衝撃にしばし現実と妄想の区別がつかず、薬缶と火薬の煙を確認して初めて悲鳴を上げた。老婆は腰を抜かし、触手を持つカップルは互いの触手を思わず固結びし、勉強熱心にメモを取っていた学生達はシャーペンを落として手を震え上がらせた。
一番最後尾にいたスキンヘッドの男が拳銃を高く上げて天井に向かって威嚇射撃したのだ。男はかなり激昂し、一歩一歩と亜鶴へと近づく。亜鶴は近づく男に対して毅然とした態度で対応し始めた。
「お客様、その拳銃を下ろして頂けませんか?万が一、その拳銃の火花により資料が燃えたらたいへんですので」
「お前奴の側近なんだろ、八月十五日の今の頭は何処にいるか教えろ。さもなくばこいつらを殺す」
「観光客を殺すのは良くないことで。まあ、旦那様は今京都にはいませんがね。詳しい事は教えられませんが、貴方がどこの男であれ我々は売られた喧嘩は買いますね」
「教えられない。と。なら、俺はこのひ弱な老婆を殺す」
「そうですか、それが貴方の選択ですか」
「…(なんとかしないと。僕の力でこの状況を打破しなきゃ!」
青葉はメモ帳に挟んであった人型の和紙に筆ペンで「湯ノ人」文字を描き、それをスキンヘッドの男に向かって投げた。和紙は空気中の水分を含み丸みを帯び、湯気を立てて熱湯の玉に変化した。男の左手に熱湯の玉は直撃し、男は「あちぃ!?」と低い声から一気に高い声を上げて手を振った。初歩的な陰陽道の術で、初心者でも出来る水と火を組み合わせた術である。だが残念ながら左手には拳銃は握られていない。熱湯の玉は確に当たったが、拳銃は未だに握られたまま。男は頭に湯気を立て、眉間にシワを寄せて青葉達観光客に銃口を向けた。逆効果だ、青葉はなんてことをしてしまったのだと後悔と反省を顔に見せた。
「貴様らぁー!よくも俺に向かって邪魔したな!誰だ!俺にこんなちゃちな悪戯した奴!!」
「しまっ…」
「お前か若造!!」
青葉は小さな声で言った筈なのに、男にはその声が聞こえていたようだ。銃口を向けられた青葉は目をひん剥き、持っていたメモ帳を落としてしまった。メモ帳に挟んであった和紙も散らばってしまう。夏なのに風が冷たく感じる。木々の音が聞こえていた筈なのに、今は銃声により全てが無に還っている。息遣いだけが聞こえている気がした。嗚呼、僕は此処で死ぬんだ。青葉は悟ったように目を閉じ、歯を食いしばった。
「あーあ、見てらんない。あんさんやはり面白いけど緩いな」
サングラスの男がスキンヘッドの男の前にやって来た。そしてサングラスとチューリップハットを脱ぎ捨てた。青葉は恐る恐る目を開けると、そこには銀色セミロングの三角耳の男がいた。そう、あの時助けてくれたあの銀髪の男である。男はニコニコした表情を浮かべ、スキンヘッドの男が構える拳銃に指さした。
「ばぁーん、やで」
次の瞬間、拳銃は青白い炎に包まれて一瞬にして消えてしまった。燃えて消し炭になったようで、下には灰と欠片が落ちていた。男は愕然としたが、すぐに銀髪の男を殴ろうと左に拳を握り締めて繰り出した。銀髪の男はニヤリと笑い余裕な素振りを見せ、その拳をかわしながら後退り。3歩ほど離れると、狐火を自身の周りに出現させて左手に集める。すると、狐火が段々と巨大化し、いつしかそれは炎宿る拳へと変化する。
「狐火十五連、紅葉!!」
スキンヘッドの男の腹目掛けて拳は振るわれた。当たった際、衝撃波が巻き起こり周りの書物や観光客を仰け反らせた。狐火は熱を持たない火だが、使い方次第では衝撃波や無機物のみを燃やす力を持つ特殊な火である。
スキンヘッドの男は震え上がり、その場で泡を吹いてうずくまってしまった。泡には血が混ざっている点からして、その衝撃たるや観光客を仰け反らせるよりはるかに上である。一方、銀色の男は相変わらずニコニコした表情を浮かべているが、うっすら目を開けているのがわかった。赤く緋色の目をしている。うずくまるスキンヘッドの男に近づき、男の胸ポケットから出ている手帳を見た。手帳には虎に絡まる蛇と蔦の家紋が描かれていた。
「あーそういう。亜鶴、あとは任せます」
「若…こっそり忍び込むのはやめろと俺は何度も言っているのに!!」
「亜鶴ぅー、そんなちまいこと気にせんでええ。それより、観光客はん方をはよどうにかしたらどうや?」
「…皆さん、今日の見学会は中止にします!本当に申し訳ございませんでした!」
亜鶴は頭を下げ、屋敷にいた他の狐達を手伝いに回して観光客を門の前まで案内してあげた。青葉も観光客と共に案内されようとしたが、それを振り払って銀色の男に近づいた。銀色の男はにこやかに青葉の顔を見て、やんわりとした言葉で接してきた。
「あんさん、あの時の青年やな。此処を突き止めたとは、なかなか面白い」
「貴方の落し物のお陰です。貴方にお礼を言いたくて、此処まで来ましたが…また助けられちゃいましたね」
「…せやな。あんさん、少し時間ありますか?」
「ええ、一応」
「美味しい甘味があるんやで」
銀色の男は糸のように細い目をしているが、髪も性格も柔らかくて京都では俗に言う「はんなり」とした男である。まあ、男ではんなりとしたというのは珍しいかもしれないが。今日は鶯色の千鳥柄の着物を着ており、おシャレにも気を使っているようである。見た目の年齢からして、彼は二十歳である青葉と同じか少し上に見える。けれども、人外国家のこの国で年齢をはっきりさせるのは身分証明書のみ。口では年齢を人間年齢で伝えるものは多いが、実際は人間より遥かに年上でそれを証明できるものは皆無であることは珍しくない。青葉は彼に対する疑問が多々あった。あのハンカチはわざとだったのか、あの道にたまたま通りがかったのか、そして彼は何故あそこまで強いのか。見た目もさることながら、何故此処にたまたまいたのかなどなど。
「そう怖い顔しなさんな。折角の男前が台無しやで」
「えっ!?」
「男前というより、好青年と言いましょうか?」
「…貴方の方が女性のように美しいですよ」
「まあ、よくいわれます」
どうやら、無意識のうちに青葉の眉間にはしわが寄っていたようである。考え事が増えるたび、眉間にしわが寄せてしまうのは悪い癖。どうも彼は考え事が顔に出てしまうのであるが、この銀色の男はその考えの内容すら分かってしまうようなそんな眼力があるような気がした。
先ほど見学した屏風のある部屋にちゃぶ台を置き、小さなお盆にいくつかの焼き菓子を置いた。抹茶味のクッキー、チョコ味のパウンドケーキ、フィナンシェにマドレーヌ。和室で畳と庭園広がる庭に洋菓子とはなんとも面白い組み合わせである。どれもこれも、此処に来る来賓の人々がお土産にと置いていくものらしい。亜鶴や一部の狐達は甘いものが苦手なので、殆どは銀色のこの男が食すらしい。けれど限度というものがあり、焼き菓子ばかりこうも続くと飽きてしまうので誰かと食べたかったようだ。青葉も遠慮がちだったが、その事を聞いてまずはパウンドケーキを食べた。美味い。リキュールの風味とオレンジピールがとても絶妙でチョコの甘さと相まって美味い。
「いやーあんさんみたいなケーキ処理…いや、お客さんが来ると助かりますわ。それと、さっきはありがとう」
「ケーキ美味しいですね。此方こそありがとうございます。えっと…あっ!そういえば名乗ってませんでしたね。僕は、青葉七緒と言います。貴方は、此処の人なのですか?」
「何だと思う?」
明らかに男はにやにやした表情で此方を見ている。子供が新しいおもちゃを見つけたかのような、あるいは邪心を持つ大人が悪事を働く時の目か。先程、亜鶴という男は彼に対して「若」と呼んでいた。若…その言葉は若君か若旦那か若大将か。地位がこの屋敷の中ではトップクラスに違いない。
「もしかして、貴方がこの屋敷のある…」
スッ……
男はにこやかだが、目を少しだけ見開いて青葉の口に指を添えた。うっすら見える目は真っ赤で、人間では血の色以外あり得ないような真っ赤で深い赤をしていた。彼の眼にしばし吸い込まれるようにして黙ってしまったが、それが正解なのかどうなのかは不明である。
「半分正解。でもね、あいつはまだ僕にこの屋敷や全て譲る気は無いから当分若頭だけどね」
「!!!?」
「そう、その目がうちにとって楽しい事を思わせる目で良い。でも知ってしまったからにはあんさんはきっとうちを何処かの姫のような扱いするんだろうな。残念」
「貴方…八月十五日の当主の息子?僕はそんな人に助けられたの!!!!?」
「ささ、お礼は済ませた。もう用はうちにもあんさんにもない。焼き菓子食べたら、此処の事は忘れた方がええで。それ以上先は…」
八月十五日の一族の息子。現当主ではないが、次期当主であることに間違いはない。そりゃ亜鶴という長年当主の右腕をしていた男が敬意を払うわけだ。抹茶味のクッキーを一口食べ、男は先程の歓迎ムードから一転して青葉を屋敷から追い出そうとした。それは、それ以上先まで踏み込めば一般人は引き返せないため。百年以上の歴史の中、闇の重鎮をしてきた一族からの“警告”である。互いに借りは返した、もう何も言うことはない。男はそういう態度を取ったのだが、これが逆に青葉の何かを加速させた。
「僕は見ての通り半人前の陰陽師です!確かに貴方が本物の八月十五日の者であることに驚きましたが、同時に嬉しかったです」
「うれ…しい?」
「何故なら、僕は半人前だからこの目で見たいのです!京都の裏の世界を!京都で修業して国家認定の陰陽師になりたいのです!だから今日は実はお願いも兼ねてきました!僕を貴方の下で強くなりたいです!」
青葉は頭を下げ、男の下で修業したいと懇願した。しかし当の男は少し困惑しており、頭をかきむしりながらため息を吐いた。
「はぁー…あかんあかん、あんさんほんとにその気ですか?うちと関係持つということは、あんさんに身を刻む覚悟があるということやで?鬼を見るで?」
「鬼も槍も受ける覚悟の上」
「んー…面倒やなー…ならこうはどうや?」
「こう?といいますと?」
「うちは師匠とか弟子という関係は嫌いや。だがな、友達なら別だ」
「とも…だち?」
「ほな、とりあえず友達から始めませんか?」
友達…その響きは懐かしくて自分が今一番に求めていたけれど手に入れることはかなわなかったもの。男はそれを要求してきたのだ。普通なら、金持ちの道楽がてら貧乏人を飼いならすような感覚がするだろう。けれども青葉はその響きだけでも凄く心が躍り、思わず男の手を握って叫んだ。
「良いのですか!?あ…でも貴方のような人の友達になる資格なんて僕には…」
「そうやなーうちの友人はかのヴァンパイア、裏の世界の医者、鴉の長など様々だが、一人ぐらい一般人がいてもいいやろ?それに、あんさんは正直凄い人だと思いますで」
「凄い人?僕が?」
「だって、あんさん勇気がありますからね」
子供の頃、青葉の師匠に言われた言葉と彼の言葉は同じだった。勇気のある子、それ以外は確かにあまりよくなかったけど勇気のある事でいろんな事をうまく導いてきた。友達、両親、祖父母を助けるのはいつだってその勇気によるものだった。青葉はそんな日々を振り返ると、無意識のうちに涙がこぼれおちてゆくのが分かった。男は慌てることなく、冷静な対応で青葉にハンカチを渡した。あの時の藍染のハンカチである。
「ありがとうございます。なんか、懐かしい記憶がよぎってしまって…えっと、そういえば貴方の名前をまだ聞いてませんでしたね。聞いてもいいですか?」
「良いですよ。うちは、八月十五日怜安といいます。呼ぶ時は名前で呼んで結構です」
「あの…これからよろしくおねが…」
「そう堅い対応せんでええ。もっと友達なんですから、柔らかい対応で宜しいです」
「じゃあ…よろしくね、怜安さん!」
「此方こそ、よろしゅうお願いします青葉はん」
これが、後に狐の名家とともに京の町を護る伝説の陰陽師の最初の出会いだった。2人はまだそんな事になろうこととは知らず、互いに友人になった喜びをかみしめているのであった。
続く。