森の要塞都市
ステーキのソースが余ったからって、パンで拭って食べてはいけません。
お姉ちゃんからよく言われていた。
でも、この食堂のステーキソースは美味しすぎる!きっと、焦がしバターが効いてるんだな。
これは帰ったらお姉ちゃんに報告だなっ!
森に囲まれた要塞都市。周りにはゴブリンとかオークとか色々出てくるみたいで、石の壁に囲まれた町。
まだまだ家まであるけれど、とりあえずこの森を抜けないといけない。
「お嬢さん、ここの名物はゴブリンの手だよ」
横の席に座ってきた軽薄な感じの戦士が私に言う。
「知ってるわ。さっき店先の看板で見たもの。でもそんなゲテモノ、私の口に合わないわ」
「それはそれは、大変なお嬢様なんだなぁ」
豪華な馬車に乗ってるし、このくらい吹かしてもいいでしょ。
「だがな、お嬢さん、ここのゴブリンは蜂蜜をよく食べるんだ。熊と一緒さ。しかも熊と違って、肉に臭みがない。一度食べてみなよ。奢ってやるよ」
厄介な男だ。私は早く宿を取って寝たいのに。
軽薄な戦士が頼んでくれたゴブリンの手が運ばれてきた。まぁ、グロい。
それが甘酢がけになっている。
「ほら、食べてみろよ。ナイフで簡単に切れるぜ」
うむ、確かに美味しい。だが。。。
少しゼラチンっぽい食感が馴染めない。
「美味しいけど、私の好みじゃないわ。ありがとう、頼んでくれて。お礼に一杯おつきあいするわ」
シェリー酒の入ったグラスをとり、戦士のウイスキーと乾杯。
さて、この要塞都市からどちらへ行ったものか。
あんまり木が生い茂るところは馬車では行けないし、やはり整備された国道を通るか。
町の中でも小綺麗な宿にチェックインし、部屋へ入ると、シフォンはまず、重いブーツを脱いだ。
馬車の操縦は、素直な馬なので苦ではないが、とにかく乗り心地がよくない。
馬車の中は違うのかなぁ。普通、これって馬を操る人がいるもんじゃない??
「助けて-!!」
外から叫び声が聞こえる。窓から外を見ると、ゴブリンが何匹も正門から侵入してきている。これはまずい。ゴブリンなんて知能がないから、手当たり次第に暴れてしまう。
うむ、こんなときは逃げるが勝ち。もう町を出よう。
シフォンはやっと脱いだブーツを履き直し、急いで馬車へ向かった。
幸い、馬車の近くまではまだゴブリンは来ていない。
「待て!待ってくれ!俺も乗せてくれ!」
はぁ??
立派な戦士の格好をした男がこちらに駆け寄ってきた。
「すまないが、時間がないんだ。王都まで連れてってくれないか」
「なんで?あなたはなに??」
「私は竜の討伐隊から派遣された使いだ。討伐隊から特命を受けている。頼む、時間がないんだ」
なんで特命を受けた人が、こんなところにいるのだろう。
とりあえず、シフォンは馬車を馬につなぎ、戦士とともに都市の中を駆け抜けた。