気まずい帰り道
帰り道、いつも通り一人で歩いていると、ふと前方に見覚えのある影を見つける。背丈は少し低めで黒髪のショートカットの少女。おそらくあいつだ。
「おい、目黒!」
振り返った少女は俺と同じく『不要者』扱いされ、現在退学保留中の少女「目黒里奈」だった。
「は、はい。」
目黒は、いきなり声をかけられたことに驚いたのか、びくっとしながら恐る恐る振り返った。俺は、少し小走りで目黒の隣に並び、一緒に帰ることにした。
「お前、家はこの近くなのか?」
「……はい……あと5分くらいのところです。」
目黒は毎度おなじみ視線を下に落とし、たどたどしく話す。しかし、昨日のこともあってかその表情はいつもにも増して緊張しているような気がする
「そうか……。」
どうやら、俺の家と結構近いみたいだ。もしかしたら同じ中学校だったかもしれない。
しかし、やはり昨日の今日で俺の方も少し気まずい。
「昨日は、何かすまなかったな。」
「いえ……私も取り乱して、すみませんでした」
目黒は相変わらず俯いたまま小さな声で返事をする。
「やっぱり、選挙には参加したくないか?」
「……はい……すみません。」
俺はダメ元で聞いてみるが、返答は悪い意味で予想通りだった。
「そうか……」
それ以降お互いに黙ったまましばらく歩いた。
「すみません、私はこの近くなので……」
「そうか、じゃあな」
そう返すと、目黒は小さくお辞儀をすると、小さな交差点を曲がっていった」。