放っておけない!
現生徒会に宣戦布告した直後、そのまま帰宅しようとした俺は屋上に連れてこられていた。目の前では俺を連れてきた目黒が両手をもじもじさせながら俯いている。時折こちらをちらっと見てすぐに目をそらす。そんな調子で俺たちが屋上に来てからかれこれ10分くらいは経過しているような気がする。
もしかして、これは告白か?猛然と生徒会長という絶対権力にも屈しない男気に惚れてしまったのか?……まぁ、普段のカッコよさにプラスアルファがあれば思わず惚れてしまうのも仕方ないことだ。やれやれモテるってのも大変だな。
「……どうして……」
モテる男の宿命を自覚していると、不意に目黒が口を開いた。
「どうして、生徒会長に反抗したんですか?」
彼女は意を決したように上目遣い気味ではあるが、恐る恐る、しかし真剣な目でこちらを見ている。やはり告白ではなかったか。まぁ、さすがにこのタイミングはないよな。
おっと、真剣な彼女の前でそんなことを考えている場合じゃないな。
「俺はいじめられている奴の気も知らず、いじめられる方も悪いとか言う奴が嫌いなんだ。ましてや『不要者』などとぬかす奴を許せるわけがない。」
目黒は再び俯いて黙りこんでしまった。
「……」
もしかして何か地雷踏んだか?いや、そんなことばないはずだ。
「同情なら……やめてください!……正直、迷惑です!」
本当に地雷だった!?目黒は顔は俯いたままだが、今までのおどおどした声とは違い、怒りを押し殺したような声色で吐き捨てた。普段はおどおどしていて、めったなことでは怒らないであろう少女の怒りスイッチを意図せず押してしまい、動揺してしまった。
「いや、別に同情とかでは……」
「どちらにせよ……私はあなたと一緒に選挙に参加するつもりはありませんので……」
話はこれで終わりと言わんばかりに、彼女は俺の横を通り過ぎて屋上を出て行ってしまった。横切る時に彼女の表情を窺うと、まるで転んだ子供が痛みを必死に我慢しているような表情をしていた。あんな表情されて、放っとけるかよ!俺は、速足で屋上から出ていく彼女を目で追いかけながら改めて力になってやりたいと思った。