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いじめられっ娘と下克上選挙  作者: 沖マリオ
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エピローグ

 数ヵ月後。

「目黒さん!次の交渉希望者が待ってるわよ!」

 昼休み、鈴森の甲高い声が生徒会室に響く。

「ま、また私ですか~?」

 目黒はというと、本日の昼休みだけで3人目の交渉の呼び出しに疲れきった返事で返す。

「仕方ないだろ。この直接交渉制度は交渉希望者が好きな役員を指名できるんだから。」

 俺が目黒をなだめる。

「そ、それはそうなんですが……」

 目黒は渋々といった様子で交渉に向かう。


 選挙戦勝利の後、俺達はすぐに生徒会を発足させ、当初の公約通り『直接交渉制度』を即座に導入した。

 この制度がかなり好評で、中でも選挙戦を通して生徒からの人気が高まり、さらに交渉が苦手な目黒には交渉希望者が殺到した。

 多い日だと一日10人程度と交渉する日もある。

 そして、結果は……

「と、戸越さん……テニス部の備品の新調をお願いされてしまいました……」

 目黒が涙目になって戻ってくる。

 いくら一日何人も相手にしたところで短期間で苦手が克服されるわけもなく、いつも通り、目黒が交渉を押し切られて帰ってきたようだ。

「お前……少しは断ることを身につけろよ……」

「す、すみません……テニス部の方が困っているようだったので、つい……」

 現在、全校生徒の間では『泣きつけば断れない天使・目黒』といった二つ名が付いているらしい。

「それにしても、ほんと目黒ちゃんはやられっぱなしよね……」

 生徒会でもないのに遊びに来ている浅田も呆れている。

「目黒さんは悪くありません。それに、交渉で押し切られて涙目で戻ってくる目黒さんもかわいらしいです。」

 芝浦はこの数カ月で完全にオープンの変態になっている。

「まぁ、良いじゃないッスか!また、みんなで取り返しましょう!」

「あんたそんなこと言って、ほとんど取り返したことなんてないじゃない!」

「なんだと!お前だってほとんど役だってないくせに!」

 荏原と鈴森は相変わらずの痴話げんかの日々である。

「仕方ない。俺が行ってくる……」

 この数カ月、目黒が交渉を失敗しては俺が取り戻す……そんなことが日々繰り返されている。

 おかげで負かした交渉相手からは『弱者から全てを絞り取っていく、まさに借金取りだ!』などと恨みを買っている。

「す、すみません……。毎回毎回……。」

「構わん。その代わり、後処理は頼むぞ。」

「はい!勿論です!」

 俺の頼みに嬉しそうに返事をする目黒。

 毎日のように恨みをかっているものの、別に俺に対する支持は落ちていない。

「いつも通り、目黒ちゃんが愛情たっぷりのフォローをするから、安心して交渉してらっしゃいってさ!」

 浅田がニヤニヤしながらからかってくる。

「べ、別にそういう意味では……。」

 目黒の方は相変わらずで顔を真っ赤にしてもじもじしている。

 そう。どんな交渉で相手から目黒によって失われた権利等を取り返しても、交渉後目黒が交渉相手に謝罪し俺のフォローを行ってくれているおかげで俺に対する悪評はそれほどでもないのである。


 ―それにしても、俺に取り返されることが分かっていてよく何度も交渉する気になるよな……

 恐らく、交渉で何かを勝ち取ることが目的ではないのだろう。

 交渉相手は目黒をはじめ、元々人気者だった荏原や鈴森等自分が好きな相手と話すことを目的にしている生徒がほとんどのようだ。

 ―おかげで予想以上の反響になってるんだが……

 生徒会発足から数カ月。生徒会室は今日も大勢の生徒で賑わっている。

 今までは磯子による独裁的な政治により、どこか怯えるように生活していた生徒達がほとんどで、自ら生徒会室に足を運ぼうとする生徒等皆無であったが、今では学園一出入りの激しい人気スポットと化している。


 一方、この生徒会室のかつての主である元生徒会メンバーはというと…… 磯子は選挙敗北後、すぐに自主退学。他の役員達も学園には残っているがどこか気まずそうにしている。

「別に磯子も辞めることなかったのにな……」

 俺が物思いにふけりながらボソッとつぶやくと

「引きとめはしたんですけどね……」

 目黒が返してくる。

 選挙戦後、磯子が自主退学することを知って、俺達は学園に残るように説得したのだが、磯子の意思は固く退学を覆すことはできなかった。

 他のメンバーや選挙戦で俺達を裏切った生徒も退学を覚悟していたようだが、目黒は何も罰則は与えず、そのまま残留となっている。

「目黒ちゃーん、また戸越の被害者が苦情良いに来てるわよー!」

 二人でしみじみと少し前の出来事を思い返していると再び目黒にお呼びがかかる。

「マジか……」

「は、はーい!」

 そう目黒が返事を返すと

「なんか、すまんな……」

「いえいえ、お互い様ですよ」

 満面の笑みで返事をする目黒。

 その笑顔につい俺まで笑顔にさせられる。

「そろそろ俺も交渉に行ってくる。」

「それじゃあ、私も行ってきます」


 ―こうやって足りない部分は互いに補っていこう。

 一方的に助けるのではなく、互いが困っている時には助け合える対等な関係。そんな対等だからこそ何でも言い合える『本物の理解者』になるために……。


 それは口で言う程簡単なことではないかもしれない。

 しかし、かつていじめに遭い、『不要者』と呼ばれた少年と少女。そして、仲間として共に下剋上を起こし、今では国内屈指の進学校の最高権力者に成り上がった者同士。

 同じような過去を持ち、同じ目標に向かって共に歩み、現在同じ立場を共有する、俺達二人ならできるはずだ。


 そう信じて俺達は互いが『理解』している欠点を補うため、持ち場に向かう。


『いじめられっ娘と下剋上選挙』はこれにて完結です!

最底辺から頂点への下剋上。天才の主人公とそのライバルによる頭脳戦。

やりたいことは大体できて一応満足してます。


今作が処女作だったこともあり、読みづらい部分もあったかと思いますが、

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!


次回作もすぐに執筆予定ですので、そちらの方も是非よろしくお願いします!

それでは、また機会があればお会いしましょう!!

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