いじめ現場~第一発見者はぼっちでした~
え~、では教科書の57ページを開いてください。……・」
昼休みが終わり、俺は一人の女子生徒を思い出しながら、ぼんやりと現代文の授業を聞いていた。
昼休み―俺はいじめ現場を見つけ意を決して乗り込んだのだが……結果は意外なほどにあっけなかった。
「……もうすぐ昼休み終わるし、そろそろ戻ろっか。」
「うん。そうだね。」
俺の登場により動揺したり、喧嘩を売ってきたりするのかと思いきや、ギャルトリオは
言い返すでもなく、うろたえるでもなく、ましてや喧嘩を売ってくるわけでもなく、大人しくその場を立ち去ろうとした。
「おい!お前ら……」
俺は彼女らを引きとめようとするが、制服の裾を軽くつかまれ、制止された。おいおい、気合入れて乗り込んだ分消化不良が半端じゃないぞ。
「あの、大丈夫ですから。……」
振り返ると、いじめられていた少女は少し顔を上げ、上目遣いでしっかり俺の目を見据えて訴えてきた。肌は白く、きめ細かい。さらに、背格好と同じでやはり顔も幼いが目は大きく、他のパーツもバランスよく並んでいる。確かに地味だが、はっきり言ってかわいい。この学校に「ミス妹グランプリ」とかあったら間違いなくトップに君臨するであろうかわいさだ。しばらく俺が彼女の顔をまじまじ見ていると、少し頬を赤らめ、また顔を伏せてしまった。俺もさすがにガン見し過ぎていたか、と、視線を床に落とすと、彼女の物らしきカバンと数冊のノートが転がっていた。ノートには彼女の名前が書いてあった。そこには「2―2 目黒里奈」と書いてあった。マジか、こいつ同級生かよ!
「いや、ああいうのはガツンと言っておかないと、いつまでもいじめてくるぞ。」
俺は、必死に動揺を隠しながら落ちていた目黒のノートを拾ってやった。
「いえ……すみません。本当に大丈夫なので。……放っておいてください。」
彼女は俺の手からノートを受け取り、少し強い口調言い放つと、「ありがとうございました」と形式的なお礼を述べて速足に教室から出ていった。
俺は彼女の後姿にどこかかつていじめられていた頃の自分と似たところを感じた。