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いじめられっ娘と下克上選挙  作者: 沖マリオ
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ぼっちな天才といじめ現場

 授業が終わり、昼休みを迎えた。周りの生徒たちは、仲の良い者同士で集まり近くの机をくっつけたり、一緒に食堂に行こうと教室を出ていこうとしたり、それぞれ昼食の準備を始める。

 一方俺はというと誰かとしゃべるわけでもなく、誰かと一緒に昼食の準備をするわけでもなく一人静かに弁当を取り出し、席を立つ。そして、食堂でも購買でもなく音楽室などの特別教室が集まる特別棟へと向かう。いつも通りひとつの空き教室の前に立つと、この特別教室の中で唯一鍵が開けっぱなしになっている資料室1の扉をあける。ちなみに、誰かと待ち合わせしているわけでは断じてない。

 そして、部屋の中にあるパイプいすに腰掛け、持ってきた弁当を広げた。これが、俺の毎日の昼休みの光景である。そう、俺には友達がいないのである。いわゆるぼっちである。勿論、友達がいるのといないのとでは、いる方がいいに決まっている。しかし、周りの人間のように無理をしてまで作ろうとは思わない。なぜなら、我慢して、自分を殺してまで他人と一緒にいることに価値を見いだせないからである。

 普段周りを見渡すと、友達との話題についていくために共通のテレビ番組を見たり、大して面白くもなのに愛想笑いをして無理矢理周りに合わせたり、そこまでして「友達」というものが必要だとは思えない。そんなみじめな思いをするくらいなら俺は孤独を選ぶ。……という強がりを自分自身に言い聞かせつつ俺は孤独なランチタイムを終えた。

 時計を確認すると昼休みはまだ30分近く残っている。まぁ、携帯でもいじりながら暇をつぶすか、と思いポケットから携帯を取り出す。

ガタン!

 携帯ゲームのアプリを起動させようとすると、隣の部屋から何かが倒れるような大きなこえた。昼休み、この別等を使っているのは俺だけのはずだ。おいおい、昼間っから心霊現象とか勘弁してくれよ。俺は気を紛らわせようと再びゲームを開始しようとする。

ギギ、ガタタン!!

思わずビクッとなり、音の聞こえた隣の部屋の方向を見る。べ、別に怖くなんかないんだからねっ!……なるほど、思わず慣れないツンデレが飛び出すほど冷静さを欠いているらしい。まぁ、ここでじっとおびえていても仕方がない。とりあえず、教室の前まで行って様子をみるか。俺は席を立ち、資料室から出る。すると、隣の部屋から何やら複数の声が聞こえてきた。俺は、音の聞こえた部屋の前に立ち、恐る恐る扉を少し開けて中をのぞいてみた。

「なに!?あんた、私たちの言うこと聞けないの?」

「ちょっと調子乗ってんじゃない?」

「ご、ごめんなさい……」

 教室の中には3人の女子生徒がおり、そのうちの一人が囲まれ、責められていた。囲んでいる生徒は全員高校生にしては濃い化粧をしており、スカートも少し風が吹けばすぐにパンツが見えてしまうのではないかというくらい短く、シャツもネクタイを緩め気崩している。「私たちは周りよりおしゃれです」と言わんばかりの格好でまさにギャルのテンプレだ。国内屈指の進学校にも生息しているとは、ギャルの生息分布の広さにはさすがの俺も舌を巻くほかない。

 そして、そのギャル3人組が作り上げた円の中心に一人の女子生徒がいる。一言でいえば地味な子である。俯いているため顔はよく見えないが、ひざ上5センチ程度の長めのスカートや肩にかからないくらいの長さで切りそろえられた黒髪は、彼女の小柄な身長も相まって中学生と間違えるほど幼く、真面目そうだという印象を受ける。そして、その彼女は小柄な体をさらに小さく丸め、おびえた様子でギャルトリオに許しを請うている。

 ……なるほど、いじめか。いじめ―被害者の人生を大きく狂わす、俺の最も嫌いな行ないである。

 「いじめは良くない」学校の教師や、世の中の偽善者共は大抵そう言う。しかし、実際にいじめの現場に遭遇するとほとんどの場合見て見ぬふりをする。その結果、世の中のいじめはほとんど表沙汰にはならない。そして、メディアでは「いじめは社会問題だ」等と言いながら、校内でいじめが発見された場合でも被害者の自殺などよっぽどのことがない限り大事にはならないし、加害者もせいぜい退学や停学などの罰しか与えられない。いじめとはそんな矛盾と理不尽の極致と言っても過言ではない。

 俺の目の前でいじめを行っていたことをたっぷり後悔させてやろう。俺は、扉越しにそんなことを思いながら意を決し扉を思いっきり開けた。

「おい、お前ら何をやっている。」


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