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いじめられっ娘と下克上選挙  作者: 沖マリオ
29/49

作戦会議!~選挙に裏技はつきものです~

 昼休み、俺達は現生徒会への対策を講じるため、資料室1に集合していた。

 今朝の磯子と大黒の態度が気にかかったため、万一の事態に備えての緊急ミーティングである。

 もしかしたら、こうして俺達にプレッシャーをかけ、選挙運動から遠ざけるための策略という可能性もあるが、最悪の事態を考えれば、警戒するに越したことはないという意見で全員一致した。

「それでは、け、今朝の生徒会からの挑発の件について、は、話し合いたいと思います。」

 最近ではすっかり定着した目黒の進行で話し合いが始まった。

「っていうか、相手が何をしたか分からないと対策の立てようがないんじゃない?」

 ―確かに。尤もな意見だ。だが……

「いや、対策とは言っても、必ずしも相手に合わせた策を用意する必要はない。」

「なるほど!さすが戸越さん!」

 俺の一言で荏原は察したようだ。

「ど、どういうことですか?」

 目黒が首を傾げる。

「要は相手の策は関係なく、俺達独自の策を考えて対抗するってことッスよ!」

 俺の代わりに荏原が得意げに答えた。

「相手はどうやら正攻法とは別に策があるみたいだ。だが、その策の内容が分からない。だから、ここはあえてその策が何かは考えず、俺達で別の策を考えるってことだ。要は相手より多くの票を獲得した方の勝ちっていう勝負だ。それに適し、かつ奴らより優れた裏技を用意すれば問題ない。」

 俺が荏原の説明に付け加え説明し直す。

「それで、その裏技っていうのは具体的には決まっているんですか?」

 今まで黙っていた芝浦が口を開いた。

 ―ぐっ!芝浦め!なかなか痛いところを突くな……

「それは、これから―」

 ガラガラ

 俺が苦し紛れの解答を言いかけたその時、突然扉が開き、一人の見知った生徒が入ってきた。

「どうもー、久しぶり!―あっ、初めての人もいるんだっけ。」

 気さくな挨拶をして入ってきた生徒は、今回の選挙において主に情報提供をしてもらっている浅田早記―新聞部部長―だった。

「いきなり、どうした?」

 いきなり現れた浅田に周囲が『誰?この人?』となっている中、数少ない知り合いの俺が適当な口調で切り出した。

「そんな適当な扱いでいいの?後ですがりついてきても知らないわよ?」

 浅田は挑発的な態度で答えた。

「なんのことだ?」

「あんた達が今必死に考えてる―この選挙の秘策を持ってきて上げたんだけど?」

「秘策だと?というより何で俺達が選挙の秘策を話合ってることを知ってるんだ?」

「そりゃあ、あんた達が現生徒会と揉めてる現場にいたし。あんなみんなが注目してるところで言い争ってたんだから、多分、私以外にも多くの生徒が知ってるんじゃない?」

 ―確かに、言われてみればそうか。

「まぁ、いい。それでお前の秘策ってのは何なんだ?」

「うーん、どうしよっかなー。教えてほしい?」

 浅田がいたずらっぽい笑みを湛えながら聞いてきた。

「いいからさっさと教えなさいよ!」

「そうだ!喧嘩売ってんのか?」

 もったいぶる浅田に荏原&鈴森の短気コンビが我慢できなくなったようだ。―こいつら、初対面なのに遠慮ねぇな……

「あ、あの、教えてもらっても……いいですか?」

「まぁ、目黒ちゃんからの頼みなら別にいいかな。」

 目黒が頼んだ瞬間即OKされた。浅田の中で目黒の位置づけは一体どうなってるんだ?

「私の考える秘策とは―いわゆる大物の買収よ!」

 浅田が自慢げの言った。ちなみにかなりのドヤ顔である―最近ドヤ顔流行りすぎだろ。

「大物の買収ってどういうことよ?」

 鈴森が問い返す。

「お前、そんなことも分からんのか。」

 鈴森の問いに対し、荏原が小馬鹿にしたような口調で答える。

「な、何よ!この私に喧嘩―」

「とりあえず、喧嘩は後にしましょう。」

 鈴森が噛みつきかけた途端、素早く仲裁に入ったのは珍しく芝浦だった。

「要するに、この学園で権力を持ってる生徒をこちらに取り込んでたくさんの票を確実に確保しようってことだ。」

 荏原が得意気に言った。

「それでその大物ってのは具体的に誰なんだ?」

 俺は得意気になっている荏原を放置して浅田に質問した。

「それも考えてあるから安心して!それは、生徒会以外で最も多くの権力と 票を持っている生徒―サッカー部部長にして運動部連盟会長―高崎真司よ!」

 ―高崎真司……どこかで聞いたことあるな……

「あ、あの高崎君って……、もしかして、役員候補選考で落選させてしまった方……ですか?」

 ―高崎って、あいつか!確かに選考の時も大物っていうのは聞いていたが……

「俺らに負けた奴がそんな権力持ってるとは思えねぇんだが」

「そうよ!何でそんな奴に頼んないといけないの!?」

 荏原と鈴森は浅田の人選に納得いかない様子だ。

「確かにあなた達もかなりの票を持っているわ。だけど、高崎君はこの学園で最大の部員数を誇るサッカー部の部長、さらに友達も多いし、人望も厚い。少なく見積もっても、彼を取り込めば120~130票近く票を得られるはずよ!」

 確かに奴ならかなりの票数を持っているに違いない。

 人望も厚い部長で将来の日本代表候補が推す人物だ。それに加えてサッカー部全体に有利な条件を提示すれば、ほぼ全部員が取り込める。

 さらに友達が多いということも加味すると、プラスアルファもかなり期待できるということだ。高崎を取り込めば選挙をかなり有利に進めることはできるだろう。

「た、確かに大物の方、ですけど……一回落としてしまったのに私たちに協力してくれるのでしょうか……?」

 目黒が尤もな意見を出した。普通ならこちらから落としておいてさらに『落してしまってすみません。だけど、勝つために協力してください』なんて都合が良いにもほどがある。だが……

「それに関しては交渉次第ね。サッカー部の利益を餌にしたり、後は言い方次第でなんとかなると思うけど。」

 そう言って浅田は俺の方を向いた。―言われるまでもない。最初からそのつもりだ。

「高崎との交渉は俺がやる。」

 俺が手を挙げて、交渉役を申し出ると、

「戸越さんなら、問題ないでしょ!」

「まぁ、元から交渉担当はあんたで決まってたみたいだし」

「私も戸越君なら依存なしです。」

「わ、私も……です。」

 どうやら全員一致で交渉役は俺に決まったようだ。

 まぁ、あいつを落とした時から、こうなることは想定内だ。落選の直接通達をはじめ、ある程度の下準備はできている。

 難しい交渉になるだろうが、恐らく大丈夫だろう。

 しかし、想定通り進んでいるにも関わらず、何か違和感ある気がする……

 しばらくその違和感について考えてみるが、全く見当もつかなかった。

「そ、それでは、高崎君との交渉役は、と、戸越君にお願いします。」

 他の3人からも拍手が起こり、正式に俺が高崎との交渉担当に決定した。

「―そ、それじゃあ、戸越君。今日の放課後から、つ、通常の選挙運動と並行してお願いします……」

 目黒が少し申し訳なさそうな表情でこちらを見ながら言った。

「分かった、任せておけ!」

 とりあえず、この交渉はかなり重要だ。だが、この天才にかかれば造作もない。

「ありがとうございます。そ、それでは、また放課後、よ、よろしくお願いします」

 目黒のいつも通りのカミカミの挨拶が終わり、浅田を含めた俺達6人はそのまま教室を後にした。


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