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いじめられっ娘と下克上選挙  作者: 沖マリオ
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選挙運動解禁!~気になる現生徒会の動向~

「し、新生徒会長候補の、め、目黒、り、里奈です!よ、よろしくお願いします!」

 翌日、正式に選挙運動が解禁され、俺達新生徒会候補の面々も早朝から挨拶運動に励んでいた。

 署名活動の初日は全く人が集まらず、かなり苦労したものだが、今回は既にかなりの生徒が俺達の周りに集まっている。周りの反応を見てみると、

「目黒さんって結構可愛いよな。」

「なんか守ってあげたくなる系の可愛さがあるよな!」

「里奈ちゃん頑張れ―!」

 当初の予想通り、目黒にも特定のファンが付きつつあるようだ。

 喜ばしいはずなのに、目黒のファンを見るとついイラっとしてしまう。

 ―いや、これは決して焼きもちとかではない!ただ単に目黒のファン共の生理的に受け付けないレベルの気持ち悪さについついイラっとしてしまったに過ぎない。断じて焼きもちや嫉妬ではない。……大事なことなので二度言ってみた。

 そんなことを考えていると、他の役員候補に対する声援も聞こえてきた。

「荏原君、可愛い!」

「荏原君がんばってー!」

「鈴森様―!我々が付いております!」

「馬鹿野郎!鈴森様の気が散ったらどうする!」

「そうだ!それに、俺達は鈴森様の身に万一のことが起こらぬようにしっかり警戒していなくてはならないんだぞ!」

「へぇー、あれが芝浦さんか。初めて見たなー」

「噂どおり、普通だな。」

「戸越―、しっかりやれよー!」

 ―ふむ……俺に対する声援が少し少ない気がするが、気のせいだろう。別にたまたま、ざっと聞いた感じ、俺に対する声援が他の役員候補より少なかったことなど、俺は気にしていない。断じて俺は気にしていない!……

「よう、戸越。元気そうにやっているじゃないか。」

 俺が、涙で少し濡れてしまったハンカチをポケットにしまっていると、後方から見知った声が聞こえた。

「何の用だ、磯子。」

 俺が振り返ると、現会長の磯子は現副会長の……大木?いや、大赤じゃなくて……まぁいいや。大なんとかを連れて立っていた。

「別に用はない。ただ、お前が予想以上に健闘しているので褒めに来てやったんだ。」

 磯子が相変わらずの尊大な態度で答えた。

「なんだ?負けそうだからって俺達を邪魔しに来たのか?」

「まぁ、邪魔したところで私の圧倒的存在感の前では無意味だけど」

 それを聞いていた荏原と鈴森が磯子に負けず劣らずの偉そうな態度で応対した。

 ふと、目黒の方を見ると、いつのまにか俺のすぐ横まで来て、俺の制服の袖を掴んで心配そうな目で俺を見上げていた。―っく!なんだ、この内気な妹が兄に助けを求めているかのような仕草は!こいつ最近さらに破壊力を上げてやがる……!

 俺もなんとなくこいつらにイラついていたため、少し挑発してやることにした。―別に怯えている目黒が可愛過ぎて助けてやりたくなったからじゃないから!断じて違うから!!

「今日の生徒の反応を見る限り、俺達とさほど差がないことに焦って敵情視察でもしに来たんじゃねぇのか?」

「貴様……あまり調子に乗るなよ!」

 俺が軽く挑発してみると、副会長の大なんとかは俺を鋭い目つきで睨みつけてきた。

「まぁ、よせ、大黒。どうせ、一時的なものだ。取るに足らないことだ。」

 磯子は余裕の表情で涼しげに俺達の挑発を受け流す。―そうだ、副会長は大黒だった。

「それもそうですね。我々の圧勝は既に決まったようなものですからね。」

 さっきまで取り乱す寸前だった大黒もすぐに冷静さを取り戻し、勝ち誇ったような表情で続いた。

 その様子を見て、俺は少し警戒心を強めた。

 ―磯子が冷静を装うのは普通だが、この直情的な大黒がすぐに冷静さを取り戻したところを見ると、100% ハッタリというわけでもなさそうだな……

「負け惜しみ言ってんじゃねぇよ!」

 荏原が言い返すと

「これは負け惜しみではなく、事実だ。3日後の中間投票の結果が楽しみだな。」

 大黒はこれでもかというドヤ顔で切り返した。これは本格的に何かあるかもしれんな。

「大黒。余計なことをしゃべるな。サービスが過ぎるぞ。」

「も、申し訳ございません!」

「まぁ、これくらいのヒントはハンデとしてちょうど良いがな。」

 『はははっ』と磯子が高笑いする。

「さすが、会長!度量が違います。」

 それに対し、大黒が跪き、頭を下げる。完全に俺達は蚊帳の外だ。

「それじゃあ,お前らもせいぜい頑張って少しは俺を楽しませろよ。」

 そう言って、磯子は踵を返し、大黒もすぐに後を追っていき、自分たち現生徒会役員が選挙運動をしている場所に戻っていった。

「俺達も何か対策を練る必要がありそうだな。」

 磯子と大黒の後ろ姿を見送りながら俺はつぶやいた。

 ‐あいつらの余裕な態度の裏には何かあると思った方がよさそうだ。もしかしたら、俺は何かを見落としているのかもしれない……

 ふと他の役員の方を見ると、予想通り鈴森と荏原が「ふん、結局逃げるのか。」「どうせハッタリに決まってるわ!」とか言って偉そうな態度を取っており、目黒が俺の袖をつかんだまま、怯えた様子で磯子と大黒を見ていた。

 しかし、一人、意外な態度の役員候補の様子が目を引いた。

 俺の視線の先では、普段は特に目立たない芝浦が磯子を鋭い目つきで睨みつけていたのだ。それも、殺意がこもっていると言っても過言ではないくらいの目付きで、あの『普通』の権化とも言える芝浦がである。その表情はどこか鬼気迫るものがあり、安易に声をかけるのをためらわせるような目つきだった。

「おい、芝浦……」

 恐る恐る芝浦に声をかけると

「は、はい。すみません、ちょっとぼーっとしてました。」

 そう言ってすぐに彼女が良く見せるいつもの『普通』の笑顔に戻った。

 俺はこの様子が磯子の企んでいること以上に気にかかって仕方なかった。





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