アフターケアと面接準備
昼休み、俺と目黒は打ち合わせのため何時ものごとく資料室に集まっていた。
「今日話し合うべき内容は2つある。」
「二つ、ですか……?面接の打ち合わせだけじゃないんですか?」
目黒が首をかしげる。その通り、当初の予定では放課後に行う面接の打ち合わせを行うことになっていた。しかし、今日はもう一つ話しておくべきことがあるのである。
「実はもう一つある。今回の書類選考で落選した生徒へのフォローだ。」
「あっ!」
目黒が「しまった!」という感じで目を見開いた。実は俺もタイトなスケジュールに追われ、今朝まで忘れていた。
一見、する必要のないこと、もしくは後からでも良さそうなことだと感じてしまうが、そうではない。落選した生徒も投票権は持っているのである。 落選した生徒は「俺はあいつらに落とされた」と感じ、それだけで敵対視する可能性がかなりある。そうなってしまえば票は得られないし、最悪の場合周りの関係ない生徒にも俺達に投票しないように呼び掛ける等して妨害してくるかもしれない。
それを事前に防ぐためにもこの落選者へのフォローは重要なのである。
「とりあえず、俺が事前に詫びのメールと生徒ごとの詳細な選考結果は送っておいた。とりあえずこれで大方問題はないと思うが、お前から他にやっておいた方がいいと思うことはあるか?」
「わ、私……やっぱり一人一人と会って直接話した方がいい……と思います。」
てっきり「いえ、特に……」とか「任せてばっかりですみません。」とか言うだけかと思ったが、まさか意見を出してくれるとは……目黒の成長に涙がでそうになる。
「だが、今から全員に会いに行くととなると時間がない。それでもやるつもりか?」
「は、はい!……だ、だめ、ですか……?」
遠慮がちに頼んでくる。だからその上目遣いで恐る恐る聞いてくるのはやめろ!断れんだろ!
「ま、まぁ、方法がないわけではない。」
俺が目をそらしながら答えると、目黒の表情はぱっと明るくなる。
あの仕草で頼まれればおそらく90%以上の男子は断れないだろう。仕方がない……
「とりあえず、今日予定していた面接は明日に延期する。放課後二人で落選者に会いに行くとしよう。」
「は、はい!」
その後俺たちはすぐに面接を明日に延期する旨を連絡し、面接の打ち合わせに入った。
「そして、面接のことなんだが、短時間の個人面接形式にしようと思うんだが、どうだ?」
「は、はい、それで問題ないと思います。」
「短時間の面接だから自己PR中心にしようと思っている。その後、気になることがあればそれぞれ質問するって感じでどうだ?」
「はい、大丈夫です。」
……さっきみたいに意見を出してほしいんだが……。まぁいい。
「……お前からの要望は?」
「い、いえ、特には……で、ですが、私も質問しても、いいんですか……?」
「当たり前だろ?むしろ気なった奴にはどんどん質問してもらわんと困る。」
「わ、分かりました。」
目黒は安心した表情で答えた。




