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いじめられっ娘と下克上選挙  作者: 沖マリオ
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新聞効果と生徒会からの挑発

翌朝、いつも通り登校してみると2日前と同じように昇降口に人だかりができていた。

―おそらく浅田の仕業だろう。人ごみをかきわけ人だかりの中心にある掲示物―校内新聞―の内容を確認してみる。新聞の見出しにはこう書かれている。


学園史上初の下剋上へ~ぼっちな天才・元いじめられっ子コンビVS最強の生徒会長・磯子仁~

校内新聞にはその他にも俺と目黒の紹介したり、俺達がやろうとしていることがどれだけ無謀で難しいことかを様々なデータを用いて紹介したりしている。しかし、その中でも一番生徒の興味を引いているのは勝敗予想の記事だ。5人の匿名人物が、もし選挙になった場合の勝敗を理由つきで予想している。どうやら、5人中4人が現生徒会の圧勝を予想しているが、一人だけ俺達の勝利を予想しているようだ。―おそらく、この予想を書いたのは浅田だろう。よくわかってるじゃないか。

さっそく頑張ってくれているみたいだが、はたしてどれくらい効果が出るか。俺は、はやる気持ちを抑えながら、再び人ごみをかきわけると自分の教室に向かった。


「ねぇねぇ、どっち応援する?」

「えー、そんなの会長さんに決まってるじゃん。」

「っていうかそもそも署名が集まらないと選挙できないじゃん。」

「えー、それじゃあつまんない」

「そんなこと言ってると会長に「不要者」って言われちゃうよ?笑」

「えー、やだー笑」


自分の席について、とりあえず新聞の効果を測ろうと周りの会話に耳を傾けてみる。 なるほど、なかなかの効果じゃないか、さすが浅田だ。これで選挙は一層盛り上がるに違いない。そして、新聞の効果はそれだけではなかった。


「ねぇ、戸越君。目黒さんってどんな子なの?」

「戸越君、頑張ってね。」

「とりあえず、俺たちも署名しといてやるよ。」

「本番の選挙では会長に投票すると思うけどね 笑」


今までしゃべったこともなく、名前も覚えていないクラスメート達が俺に話しかけてきた。

「あぁ、ありがとう。」

俺はそう返答し、カバンにしまってあった署名用紙を差し出すと次々とその欄は埋まっていった。

これは想像以上だ。この調子なら今日中にノルマの達成はできそうだ。

良い意味での予想外な出来事に思わず高揚しながら寄ってくるクラスメイト達の対応をしていた。


昼休み、俺と目黒は資料室1に集まっていた。ここ最近では当たり前のようになっている光景である。

「新聞の効果は予想以上だ。お前のクラスはどうだった?」

目黒に話を振ると彼女は疲れ切ったように机に突っ伏している。

「つ、疲れました……。いじめ以外では、う、生まれて初めて、あんなに大勢の人たちに囲まれました……」

今朝の様子と同じようなことが隣のクラスでも起こっていたらしい。人見知りにはかなりの試練だったのだろう。

「でも、よかったです。署名もかなり集まりましたし。」

目黒は突っ伏したまま顔を少し上げて上目遣いで笑いかけてきた。―くっ!なんだ、その無駄な可愛さは!その可愛さを演説中に見せてほしいものなんだが……思わずドキッとさせられたが、すぐに平常心を取り戻し苦笑してしまった。

「そうだな、おそらく今日の放課後早々にノルマは達成できるはずだ。」

俺はニヤリと笑うと手元にある署名用紙を眺める。俺と目黒が集めた署名を合わせると、今現在の署名数は―171名。あれから、休み時間の度に生徒が来て署名をしていった。本気で激励してくれる人もいれば面白半分で署名してくる奴もいた。どうやら、既に話題を集めていた俺達の宣戦布告騒動に、新聞部がさらにそれを焚きつける記事を書いたせいで学校中がお祭り騒ぎになっているようだ。―やれやれ、浅田さまさまだな。

「放課後署名が集まり次第、再び生徒会に向かう。磯子の前にこれを叩きつけてやろう。」

「そんなことをしていただかなくても結構だ。」

唐突に教室のドアが開き数人の生徒が入ってきた。

「っ!?昼休みとはいえ、わざわざ呼んでもいないのにこんなところに来るなんてよっぽど暇なんだな、会長って仕事は。」

予想外に現れた現生徒会に動揺しつつも冷静を装った。

「突然の訪問すまんな。どうやら署名の方は順調にいっているみたいだな」

「まぁな。こんなに簡単に署名が集まるなんてお前らの権力ってのも大したことないな。」

俺と生徒会はお互い不敵な笑みを湛え、睨みあっていた。

「まぁ、お前らはよくやっている。だが、それは今まで俺達が何もしなかったからだ。」

「なんだと?」

「考えてみろ。お前らは今まで順調にきすぎていたはずだ。それが分からないわけではないだろう?」

磯子は挑発するような調子で続けた。

「これは、お前らに対するハンデだ。だが、それもここまでだ。本選挙からは本気でお前らを排除し、改めて言ってやろう。『お前らは不要だ』とな。」

「言ってろ。その余裕に満ちた顔面を泣きっ面にかえてやる。」

「まぁ、せいぜい頑張ってあがけ。楽しみにしている。」

それだけ言うと彼らは踵を返し、部屋から出ていった。

まったく、まさか向こうから挑発しに来るとはな……

それだけ、俺たちを気にかけているということではあるが……

しかし、あいつらの言ったことは真実だ。言われて思い返すと、確かに今まで順調すぎるほどに順調だった。その違和感に薄々気づいていながら、どこか悪いことから目を逸らしてしまっていた。

そして、ここからはあいつらも積極的に動いてくるようだ……

「やれやれ、こりゃ浮かれてる暇はなさそうだな……」

頭を掻きながら目黒の様子を窺ってみる。

彼女にいつものようなおどおどしたような様子はなく、俺の方をまじまじ見ていた。

その視線に気づき、彼女に視線を送ると、少しあわてた様子できょろきょろし恥じらうが、すぐに落ち着き俺の方を向き直す。

「わ、私ももっと頑張ります。だから、一緒にあの人達に、勝ちましょう。」

真剣な目で言う目黒の姿に改めてこいつのために頑張ろうと決意した。




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