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いじめられっ娘と下克上選挙  作者: 沖マリオ
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「ペンは剣より強し」そんなペンを味方につける!

 翌日の昼休み、俺と目黒はすっかり俺たちの事務所として定着してきた別棟の資料室1で昼飯を食べようとしていた。もちろん、選挙の打ち合わせのためだ。―決してぼっち飯がさびしいからという理由ではない!

「まずは、現状の確認だ。2日目の昼休みの時点で署名数は……38人だ。昨日の放課後と朝の2回でこの人数は、まぁ良い数字だと思う。だが、残り日数を考えるとこのままでは200人集められるかは微妙な状況だ。」

 磯子から期限を1週間と言われているものの土日を考慮すると今日を含めて実質残り4日しかない。このままだと期限内でのノルマ達成はかなり厳しいのである。

「そこでだ。次のプランを考える。何か案はあるか?」

「……え、えっと……」

 目黒に意見を求めるが、おそらく何も思いついていないのであろう。目をきょろきょろさせて焦っているだけである。まぁ、いきなり言ったことだしな。仕方あるまい。

 だが、こんな状況も想定内だ。(さすがは天才の名をほしいままにしている俺だ)実は既にプランは考えている。

「何もないようだし、とりあえず、俺の案を話すがいいか?」

「は、はい。」

「今回は、選挙だけでなく、この学校にかなり影響力にある人物に接触を図る。」

「こ、この学校で影響力のある人物って……生徒会の方たちですか?」

 目黒が驚き交じりの声で訪ねてくる。

「いや、あいつらのような有名人じゃない。俺も名前だけで顔もしらないくらいだからな。でもその影響力は今回の選挙でも既に証明されている。その人物とは―。」


 俺と目黒の二人は一つの教室の扉の前にいいる。

 コンコン。

 俺はこの扉の向こうにいるであろう人物と面会するため、扉をノックする。

「はーい、どうぞ」

 すぐに中から返事が返ってくる。

「失礼する。」

 俺たちは一言断りを入れて中に入る。

 部屋の中には数台のパソコンと印刷機が1台置いてある。しかし、部屋の中には一人の少女がいるだけである。

「部長に用があるんだが……」

「私がその部長よ。新聞部に何か用かしら?」な

 こいつが新聞部部長・浅田早記か……。彼女のことを調べた際、噂にはかなりの美人だと聞いていたが、実際に見るとその噂は大げさではなかった。

―明るいロングの茶髪に、雪のような白い肌に大きな瞳、特に、グラビラアイドル顔負けのスタイルには目を惹かれた。

 ふと隣から視線を感じた。視線の方向へ振り向くと、目黒がジト目で睨んでいた。

「……いやらしい、です……」

 いつもの目黒からは想像できない言葉が飛んできた、小声ではあったが、はっきりと聞き取れる声で。……効果は抜群だ!この攻撃はさすがの俺も予想外だった。そして予想外であった分、目黒の不意打ちは俺の精神にクリーンヒットした。

「あの……それで私に何の用かしら?」

 俺と目黒のやり取りに苦笑いしながら浅田が再び聞いてきた。しまった、完全に放置してしまっていた。ちなみに隣を見ると、目黒はそっぽを向いて知らんぷり状態を決め決め込んでいた。おい、原因の半分はお前なんだが……。

「す、すまん、ちょっと打ち合わせをだな……」

俺はあからさまな言い訳をしてから、コホンと咳払いをして仕切り直した。

「実は今日、あんたに頼みがあってきた。」

「ええ、そろそろ来る頃だと思ってたわ。どうせ、選挙絡みでしょ?」

「あぁ、察しが良くて助かる。お願いっていうのは―」

「お断りよ!」

「……は?」

 俺が良い終わる前に浅田ははっきり断ってきやがった。……まだお願いの内容も反してないんだが……。

「私は、選挙に対しては中立の立場を貫くって決めてるの。たとえそれがどんなお願いであっても、新聞部の部長としてはどちらかに肩入れするようなお願いは聞けないわ。」

 なるほど。そういうことか……これはかなり苦戦しそうだな。

「じゃあ、どちらかの優位にならないような内容なら協力してくれるってことか?」

「うーん……まぁいいわ。とりあえず話だけなら聞いてあげるわ。お願いを聞き届けるかはない用次第だけど。」

 浅田は少し悩んだ後、笑顔で俺に話すように促してきた。―うむ、やはり美人だな。―

「俺たちは知っての通り、生徒会長を目指している。そのため、最近は毎日署名活動をしているわけだが、まだまだ注目度が足りない。そこで、あんたには俺たちの署名活動や演説の様子を毎日校内新聞にして張り出してほしい。」

「ちょっと、それって十分あなたたちの味方してるじゃない!あたしのさっきの話聞いてた?」

「まぁ、落ち着いてくれ。俺は記事を作ってくれと言っているだけで別にどういう風に書いてくれとは言ってない。」

「え、それって?」

 浅田はさすがに察したようだ。となりを見ると目黒が難しそうな顔をしている。―なるほど、お前はまだ分かってないんだな―

「まぁ、浅田さんは分かったみたいだが……」

 言いかけた途端隣から見覚えのある視線を感じ振り向くと、目黒が不機嫌そうな表情でこちらを見ていた。―なんか、今日はやけに攻撃的だな……―

「別に俺たちのことを悪く書いてくれてもかまわん。そして、俺たちの記事とは別に生徒会のことを絶賛する記事を書いてくれてもかまわん。まぁ、俺たちのことを良く書いてくれるのがベストではあるがな……」

 そう言って俺は浅田に不敵に笑って見せた。

 すると、浅田はニヤリと笑って

「へー。面白いこと考えるわね。ところであたしの書き方によってはあんたたちかなり嫌われることになるけどそれでもいいの?」

「あぁ、かまわん。それはそれで利用できるしな。」

「あなたもモノ好きね。まぁ、あたしは面白い記事をかけて、生徒が喜んでくれるならそれでいいんだけど。個人の批判とか悪い噂とかは評判良いし。」

「だが、条件がある。―個人の称賛や批判を記事にするのは選挙戦に入ってから。それまでの期間は選挙戦を盛り上げるような記事を書いてくれ。」

「なるほど、ただの博打好きかと思ったら、そういうわけでもないみたいね。」

 条件を聞いた浅田は俺の顔をじっと見て再びニヤリと笑った。

「オッケー。いいわよ。あんた達に協力してあげる。あと、署名の方もあたしはできないけど、他の部員にはできるだけ協力してあげるように言っておくわ。―その代わり、ちゃんと面白いもの見せてよね?」

 そう言って彼女は挑発的な目で俺を見てきた。これは大きな味方ができた。しかも署名の協力までしてくれるとは想像以上だ。まぁ、俺の頭脳と交渉術にかかればこれくらい造作もないことだがな。

 俺は、この達成感を共有しようと隣にいる目黒の方を見ると、彼女はじっと浅田の方を見ていた。

その視線に気づいた浅田はふっと笑うとそっと目黒につぶやいた。

「大丈夫よ。あなたのものに手は出さないから。」

それを聞いた目黒は一瞬にして顔を真っ赤に染めるといきなり焦り出した。

「い、いえ、べ、別にそういうことでは……」

 うん、ようやくいつもの目黒を見れたような気がする。

 一方、浅田は目黒の狼狽ぶりを面白そうに眺め、そして俺の方に視線を向ける。

「ま、二人とも頑張ってね。あたしはあくまで中立だから表立った協力はできないけど応援してるわ。」

「ありがたい。それじゃあ、記事のことは頼んだぞ。」

 そう言って俺と目黒は新聞部の部室を後にした。


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