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5ショートストーリーズ10

タイムマシン

掲載日:2015/01/08

タイムマシンって知ってますか? 実は…

 博士が長年研究していたタイムマシンがついに完成したとの報を

受け、かつて彼の教え子だった私たち四人は、博士の研究室に集まっ

た。


 博士は元々国立の研究所にいたのだが、タイムマシンに取り憑か

れ、退職したと言う経緯があった。当時の教え子である私たちにこ

んな言葉を残して。

『タイムマシンが完成した暁には、みんなを呼んでお披露目をする

から。とりあえず、十年後を目処にな』


 あれから十年。ついにこの日を迎えたのだ。

 しかし、今では中堅となった私たち教え子も、これを俄かに信じ

る事は難しかった。と言うのも、タイムマシンの理論は、相対性理

論において【光速】が鍵とされている。タイムマシンが出来ない理

由、それは物質を光速以上の速さで動かす事が出来ない、それに尽

きた。しかし、あの博士の事だ。もしかしたら? 一抹の希望を持

って私たちは博士の元に…という訳だ。


「え~、それでは今からタイムマシンの体験実験をします。君たち、

よく集まってくれたね」

 博士は十年前とまるで変わらない笑顔で私たちを迎えてくれた。


「博士、お久しぶりです。で、タイムマシンはどこに?」

 一刻も早く博士の創りあげたタイムマシンが見たい、触りたい、

体験したい。集まった誰もがそう願っていた。

「はは、君たち、そんなに慌てるなよ。じゃ、別室にて一人ずつ体

験をしてもらうから」

 博士はそう言うと、私たち四人を順番に並ばせた。まずは先輩で

もあるT大の教授からだ。彼は今ではその世界の第一人者とも呼ば

れている。


 教授は彼を伴い、研究室の続き部屋に入っていった。暫くすると

「おおっ! まさか! 信じられない!」

 という、T大教授の声が響いた。


 こ、これは…そんなに凄い物なのか? 私たちは自分の番が来る

のを今か今かと待ち焦がれていた。


 そして一時間後、我々は涙を流して博士を祝福していた。ついに

完璧なタイムマシンが出来たのだ。実験の結果は大成功。私は過去

の世界、幕末に行って黒船の来航をこの目で見た。確かにあれは現

実だった。疑いようもない。


「博士、実に凄い発明です。遂にやりましたね。で、その方法は?

どうやって光速以上の速度で物質を移動させる事に成功を?」

 我々の注目はその点に集まった。


 博士は笑いながら言った。

「それは、その、企業秘密じゃ。それからこの事はまだオフレコで

頼むぞ」


 博士のそんな言葉に私たち四人は未練たっぷりだったが、素直に

彼に従う事にした。いずれにせよ、タイムマシンは完成したのだ。

その精査にはたっぷりと時間も取れるはずだ。我々は博士に祝福と

感謝を伝えて研究所を後にした。


                 ***


「ねえ、おじいちゃん、あれで本当によかったの?」

 博士の孫娘である中学生が、博士にそんな言葉を投げかけていた。


「ん? まあな。彼らも感激していたようだし、かん口令も敷いて

おいた。まぁ、大丈夫じゃろう」

 博士は孫娘にウインクをして、悪戯っぽく笑った。

「え~? でもホント、学者って世間知らずよね。あんなのに騙さ

れるなんて」

 孫娘はテーブルの上においてあるヘッドホンとゴーグルを指差し

て言った。

 それは一種の催眠装置で、誰にでも扱えるバーチャルシステムの

一種だった。


「いいかね? そこに物質が存在しないとしてもだよ、意識にそれ

がそこにあるという情報を与えたら、それはそこに物質があるのと

同じ事なんじゃ。被験者に情報を与え、それを頭の中で構築させる。

過去でも未来でも何でも好きな世界をな。それこそがタイムマシン

の真実でもあるのじゃ」

 博士の言葉に孫娘は首を捻りながら訊ねた。

「でも、それってまやかしよね? なんでおじいちゃんはそんなコ

トをしたの?」

 孫娘のそんな質問に、博士は胸を張って答えた。

「だって、実際には出来なかったなんて言うのは悔しいじゃろ? 

それにいつでも夢はあった方がいいからの」

 そんな博士の言葉に、孫娘は溜息混じりに

「夢って、あの人たちだってそのうち騙された事がわかるわよ。ど

うするの?」

 そう言ったが、博士は自信満々にこう答えた。

「大丈夫! 一時間後には今日の事はすべて忘れるという暗示もか

けておいた。覚えておるのは、気持ち良かったという感覚だけじゃ」

「え~? じゃ、おじいちゃんのことも忘れちゃうんじゃない。お

じいちゃんがタイムマシンを完成させたっていう記憶もよ?」

 孫娘の言葉に

「しまった! そうじゃった!」

 博士は実に残念そうな顔をした後で、寂しそうに笑うのだった。

タイムマシン…それは想像上の乗り物。だからどんな風に想像してもOKなんですよね。都合がいい乗り物です。

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