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第3章 プレシャス

第三章 プレシャス




 次の日、龍一達が帰宅しようとした時、龍一達の学校に一人の女性が現れた。

 「み、南・・・」

 「ハアハア、ひ、久しぶりだな、龍一・・・」

 「龍一の知り合いか?それにしても、この女ラリってんじゃ・・ジャンキーか?」

と、四郎が聞いてきた。

彼女の名は杉原 南(18)で杉原グループの会長の娘でもあり、そして、トオルの彼女でもある。

 「なぜ、そんなモノに手を出した!」 

 「ア、アンタには、関係ないだろう・・・」

と言い去っていった。

 「(もしかしたら、まだ北斗さん達は音楽をやっているかも・・・)」

 

 その夜、龍一達4人はビートと言うライブハウスにやって来た。

そのステージには、プレシャスというバンドが演奏をしていた。

プレシャス・・それは、高価な物、貴重な物を意味する・・・


演奏が終わると、龍一達は外に出た。すると・・・

 「久しぶりだな、龍一。」

その男は、プレシャスのヴォーカルとギターを担当している、杉原 北斗(26)である。彼は、南の兄であり、なんと瑠奈や凍矢、武とは幼馴染であり、摩利支天の三代目でもある。

他に一見美女と思わせるような美青年、ギターのラン(26)彼も瑠奈達とは幼馴染で元摩利支天の特隊だ。

またベースのジュンジ(26)と右腕に龍の刺青をしているドラムのユウヤ(26)は百鬼という族のメンバーだった。

百鬼はあの凍矢が作ったチームである。その時、瑠奈は、苦乃一というチームを結成。摩利支天と百鬼は仲が悪く、また摩利支天と苦乃一対百鬼の戦争が起きた時その戦いを止めたのが、武である。


その後、北斗がジュンジとユウヤを誘ってプレシャスが結成されたのである。

 

「あいつが、薬に手をだしたのは、去年お袋が亡くなってからだ。今のあいつには、何を言っても無駄だ・・自分の意思で止めようとしない限り・・・」

 「そうですか・・でも久しぶりにプレシャスの音楽が聴けて良かったです。それじゃ〜僕達はこれで・・・」

 「俺達も、これから打ち上げがあるんで、またな・・」


 次の日の夜、龍一は舞と一に連れられて、新戦会を見学する事にした。  

 「押忍!館長、彼が神威 龍一君です。」

と、舞が父でもあり、そして、新戦会の館長である後藤 勇(46)に紹介した。

 「君があの格闘王の・・・舞や一からいろいろと聞いているよ。」

 「よろしくお願いします!」

龍一は心の中で、鬼がたくさんいるな〜と思った。

新戦会は後藤館長以外にも、幹部に四天王と呼ばれる4人がいた。

一人目は土方 歳夫師範(33)

二人目は永倉 新一指導員(29) 

 三人目は原田 光介指導員(26)彼も瑠奈の幼馴染で元摩利支天のメンバーだった男だ。 

そして、四人目は沖田 一(16)である。

また、女子でありながら、一般の部で稽古をしている、後藤 舞(16)など他にも強者ぞろいだ。

 静かに見学している龍一に、館長が声を掛けてきた。

 「あそこにあるサンドバックを、蹴ってみないないかい?」

そのサンドバックは他のよりも大きく150キロはある。

龍一は構えた、そして・・・バシッという音が道場になり響きサンドバックはものすごい勢いで動いた!

 「(恐ろしい小僧だな・・・)」

さすがの後藤館長も驚きを隠せない様子だった。

練習が終わっても門下生の気合いは収まらない感じだった・・・そして、原田が龍一に話しかけてきた。

 「君、月形 瑠奈の弟子なんだって!?」

 「はい、そうです。ルナさんの事知っているんですか?」

 「ああ、幼馴染だよ。」 

「原田先輩と瑠奈さんが幼馴染ですって・・・?」

と、舞と一は驚いた。

 「しかし、あの女の弟子で格闘王の息子じゃあ強いはずだ。しかも、あの恐ろしい女の事が好きらしいねえ〜・・・しかし瑠奈が相手だと難しいなあ・・あいつの強さは、生まれて物心がついた頃から、天神流を父親から学んでいた・・だが、瑠奈が小さい時に母親を事故で亡くし、十七の時に父親と恋人の武を殺され、それから、裏の世界を一人で生きてきたからだ。」

 「ルナさんは、武さん以外の人と付き合ってないんですか?」

と龍一が聞いた。

 「もう俺も8年くらい会ってないからな〜たぶん、いないと思うよ・・あいつに下手に、ちょっかいを出そうとして、病院送りになったヤツはたくさんいたけど・・・だが、君は瑠奈にマジらしいからね〜・・だから、あいつも君の事を思って破門したんだろ!?」

 「そ、そうですが・・・僕はルナさんをあきらめたくないんです。」

 「ああ、そうだ、確か北斗と瑠奈が一ヶ月くらいだけど付き合っていたっけ・・」

 「ルナさんと北斗さんが・・・?」

 「ああ・・・でも何ですぐに分かれたのか、北斗に聞いたら、あいつの心には今でも武が生きている・・と言ってたな〜」

龍一は会った事のない武田 武という人がうらやましく思えた・・・


次の日、南は公園を散歩していた。すると、子供がボールを取ろうと道路に飛び出した!だがその時、車が・・・南は子供を助けるため、自分も道路に飛び出した!そして・・・道路には、たくさんの血が・・・すぐに救急車に運ばれた。子供の方はたいした怪我はなかったが、南は・・・夕方、龍一達が帰ろうとしたところ龍一の携帯が鳴った。北斗からだ!


慌てて四人は、秀一が入院している病院に急いだ!

そして、四人が見たのは、二度と動く事も笑う事も出来ぬ彼女の姿であった・・・彼女は感じる事すらできぬ場所へ旅立って行ったのだ・・すでに、瑠奈やトオルは来ていた。そして、北斗と瑠奈、トオル、龍一以外のメンバーは秀一の所に移動した。すると、杉原グループの会長と秘書が現れた。

 「親父〜何しにきやがった!?てめえは、家族よりも会社の方が大事なんだろう!?」

すると杉原会長が、南に向かって泣きながら土下座をした。

 「ううっ・・すまん南、私はお前や北斗に父親らしいことをしてやれなかった・・南、だがお前は人のために自分の身を犠牲にしたんだ・・これからは、大好きな母さんと一緒に・・・お前は私にとって、いつまでも貴重な宝だ・・・」 

その姿に北斗は言葉を失った・・・


 その頃秀一達は喫煙所にいた。

そこには、あの昇児もいた・・

「ここで俺は、いろんな友と知り合い、そして病で何人もの友を失った・・・」

そう言うと、その友のために自ら作った曲「祈り」を歌い始めた・・・

そしてタバコの火を消し部屋にもどっていった・・・


曲と言えるかどうか分からないが、彼はこの曲を収録した、CDーRを患者に配ったりした。

だが健康な人からは、二百五十円で売っている。その辺のところは、昇児らしい・・・

音楽の経験は少ないが、彼が、昔バンド時代に使っていた名前は、修羅生死しゅらしょうじである。荒んでもいいから、強く生きたい・・そう思い、つけた名前だ。

だが彼は、肉体だけでなく、精神的にも弱く、馬鹿な連中と馬鹿な事をして、嫌な事から逃げてばかりいた落ちこぼれのクズだ・・・

だが、そんな落ちこぼれでも、死の悲しみを知っているからか、自殺をしようとした人に、怒った・・・というよりも、キレたこともある。

もちろん、彼も何度も死にたいと思った事があるが、生きたくても生きられなかった友に申し訳がないし、自殺は人殺しと同じ・・・だからキレたのであろう・・・


また、少年時代の彼自身も、龍一ほどではないがいじめられていた。

中一の時、お金を持って来いといわれた事もあった。


彼が少林寺拳法を学んでいたのは、小学校のころで、昔から格闘映画や格闘漫画が好きだったのと、たまたま父と兄が学んでいたからである。

だが、弱いがためにいじめられていた!


しかし、中二になると、家庭の事情とかで、学校には遊びに行くだけになった。行きたい時に登校し、授業中は寝ているか漫画を読んだりしていた。さらに、授業中に一人ライブをやって、授業を潰したこともあった・・・

問題児であったかもしれないが、アニメのキャラに本気で恋をするなど、この頃はまだ、かわいらしい一面もあった。彼の心が本当に荒んでしまうのは、この後の専門学校に入学してからだ。


昇児は、中学を卒業すると、料理の専門高校に入学する。

この専門学校は彼のような落ちこぼれの集まりな上、教師は暴力教師で、教師が教師を止めに入った事もあった。

どうやら、教師が生徒に机を投げたらしい。さすがに、その教師は解雇された。

今の教育では考えられないが、殴る蹴るは当たり前の学校だった。

それに生徒のほとんどが親に見捨てられている。だから親も何も言わないのである。

そんな学校に通っていたため、彼の心は本当に荒んでしまう・・・

ついに彼自身も、本気で人を傷つける事が出来る人間になってしまった。

昔は彼自身、いじめられていたのに、今度は彼がいじめをしていたのだ。

だが、彼がいじめられた時その連中を憎んだように、彼にいじめられた人達も彼を憎んでいるはず・・・その罪は一生消えないのかもしれない・・・

だから、パン工場に就職してすぐに、クローン病になってしまったのであろう・・・

そして、その時に自分の弱さをとことん思い知らされ、退院してから弟が習っている空手道場に通う。  

だが病気をしてからも、相変わらず馬鹿な事ばかりしていた。

 

そんな彼だが、二十代前半に、人のために役に立ちたいと思い、自ら病気の勉強会の役員をすると言い出したのだ。

当時の彼にはお金のことしか頭に無かったのに、ボランティアでやっていたのだ。

その後、仕事が忙しかったり、体調が悪かったりで、会には最近出ていないらしい・・・

  

だが、最近になって、本当に貴重な物は、お金じゃなく、こんな自分と共に病気と闘ってくれる家族なんだと気づき始めたのである。 


   




















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