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第10章 後継者


第十章 後継者




 龍一が山にこもってから、一年が流れた・・・


 「助けてー!」

一人の少年がヤンキーにいじめられていた。

 「逃げるなよ!」

その時、一人の少年が現れた!

 「かつてこの街に、修羅と名乗る喧嘩屋がいた・・・」

 「ああ!?」

 「今その喧嘩屋は、どこにいるのだろう・・・」

ヤンキーがその少年を見て、恐怖を感じた。

 「しゅ、修羅・・・」

龍一だ!龍一が山から下りて、この街に戻って来たのだ。

ヤンキーはあわてて逃げていった。

少年も龍一にお礼を言って去っていった。

 「やっと、帰ってこられた・・・この街に・・・」

 「龍ちゃん!」

舞、一、四郎の三人が、学校から帰宅途中に龍一と出会った。

 「皆・・久しぶり・・」

 「龍一、今帰ってきたのか・・・?それにしても、すごいカッコウだな」

髪の毛はボサボサに伸び、道着はボロボロ・・・それだけで、龍一が阿の山で、どれだけの荒行をしてきたのかが分かる。

 「今から美容院に行って、綺麗になってから、ルナさんの店に行こうと思っているんだ」

 「じゃあ俺達、先に瑠奈さんの店に行っているよ」

 「馬鹿ね・・こういう時は、二人きりさせてあげるの・・」

 「いいよ、皆とも話しをしたいし・・それに、久々に会うから、緊張しているんだ」

龍一は一度家に帰り、その後で美容院に行った。


 喫茶LUNA・・・ 

三人は瑠奈に、龍一が帰ってきている事を、わざと話さなかった。

瑠奈自身も、いつもと違う3人の態度を見て気づいていた。

だが瑠奈は、三人の気持ちが分かっているから、あえて聞かなかった。


しばらくして、龍一が現れた。

 「た、ただいま帰りました・・」

龍一は少し照れくさそうな顔をしていた。

 「・・おかえり・・」

瑠奈も少し照れくさそうな感じだった。

龍一は瑠奈に、何を話していいのか分からなかった。

そして龍一は、舞達と同じ席に座った。その間に、瑠奈との会話を考えようと思ったのだ。

しばらく4人で馬鹿笑いをしていたが、一の表情が険しくなる。

 「一ちゃん、どうしたん?」

 「実は一週間前に、転校生が入ってきたのだけど・・僕も舞ちゃんも四郎君も、その子の事が気になっているんだ」

 「何を!?」

 「その子の名は、不知火 隼人・・・髪を赤く染めていて、先輩達からも目をつけられていた」

 「それである日、先輩達から呼び出されて・・偶然その時、私が見かけたのよ。大変だと思って、助けようとしたのだけど・・・先輩達は、一瞬で倒された」

 「俺も、アイツは気に入らない・・・ボコボコにされれば良かったんだ」

 「四郎あんたは黙っていて・・それでその時、その子が使った技・・・あれは、天神流だったわ・・」

 「不知火・・・」

龍一はそうつぶやくと、しばらく黙り込んだ・・・

そして、龍一が語り始める・・・

 「天神流は一子相伝・・・幕末までは、後継者になれなかった者は、たとえ我が子でも殺さなくてはならない・・・それが運命さだめだった・・・その運命を変えたのが、天神流十三代目・・不知火 彦斎・・」

 「不知火 彦斎!?」

 「彦斎の母の名は蛍・・父は不明・・・だが、河上 彦斎ではないか・・とも言われている」

 「あの大思想家、佐久間象山を暗殺したという幕末の人斬り・・河上 彦斎の事!?」


江戸の頃になると、時代は太平の世に向かっていた・・・


だが、一八五三年・・・黒船来航により、時代は大きく変わってゆく・・・

多くの志士達が、尊皇攘夷などの理想のため・・・明日の日本のために、倒幕に乗り出した・・・

それが、幕末と呼ばれる時代である。

この幕末の時代に、河上 彦斎という人斬りがいた。

彼は一八三四年(天保五年)肥後生まれ・・・


河上は、我流の剣術、不知火流という、居合い、または抜刀術の使い手である。

右足を前に出して構え、後ろに伸ばした左膝が着くほど姿勢を低くして、右手一本で斬りかかる、という極めて独特な居合い術だ。


天神流には、こんな伝説がある。

一八六三年(文久三年)・・・動乱の京・・・

 「河上 彦斎殿とお見受けする・・」

 「(女・・!?) そうか・・そなたが噂の鬼姫か・・」

動乱の京で、鬼姫と呼ばれている女・・・それが天神流十二代目・・蛍だ!

彼女は、明日の日本のために戦っているのではない・・・兵を求めて戦っているのだ。

 「貴女は兵を求めて戦っているみたいだが、私は貴女が求めている兵ではない」

 「いや・・お前は強い・・・!」

しばらくの間、二人は睨み合う・・・

そして、河上が抜刀した。

蛍は、河上の頭上よりも高く跳んだ。

 「(消えた!?)」

河上がそう思ったとき、蛍の天誅が炸裂!

 「な、何という技だ・・」

 「これが私の天誅だ!」

天誅・・・この頃、多くの志士達の間で使われていた言葉だ。

天に代わって、罪を裁くという意味・・・

河上が、蛍に刀を渡そうとした。

 「私は人斬り・・だが、そなたのような美しき鬼姫に斬られるなら・・悔いは無い・・」

だが蛍は、この時、河上に止めを刺さなかった。


それからしばらくして、蛍は一人の男児を産む。

名は彦斎・・後に天神流十三代目となる男だ。

彼女が、河上に止めを刺せなかったのは、二人の間に愛が芽生えたからかもしれない・・・

その後蛍は、阿の山に戻り、子供と、師でもあり、養父でもある辰巳としばらく暮らす。

蛍は赤子の頃に竹やぶに捨てられていた。その時に、辰巳に拾われ天神流を学ぶ事となる。


蛍との戦いから一年後・・・一八六四年(元治元年)・・・

新撰組が池田屋事件で、その名を天下に鳴り響かせた時、河上は佐久間象山を暗殺・・・

 「初めて人を斬る思いがして、髪の毛が逆立つ思いがした」

そう語り、彼はそれ以後、暗殺をしなくなったという。


時は流れ・・・一八六七年(慶応三年)・・・

十月十四日に大政奉還が成される。

だが十一月十五日・・・坂本 竜馬が近江屋で暗殺される。十七日には、同席していた中岡 慎太郎も息を引き取る。

それからしばらくして、蛍が京に戻ってきた。

坂本は北辰一刀流免許皆伝の腕前・・蛍が求める兵であっただろう・・・

彼女がもう少し早く京に戻っていたなら、二人は戦っていたかもしれない・・・


そして、ある月夜の晩・・・

二人の長州の志士が、数名の新撰組隊士に追われていた。

 「覚悟しな!」

一人の隊士が斬りかかろうとした時、どこからか苦無が飛んできた。

 「誰だ!?」

 「お前達に用はない・・・」

 「用があるのは・・・私ですか?鬼姫殿・・」

 「組長!」

その男こそ、新撰組一番隊組長・・・沖田 総司・・・

 「貴女の噂はいろいろと聞いています・・・ですが、私には、女性を斬る事は出来ません」

 「戦いに、男も女もない・・・それに本当のお前は、私と戦いはず・・・」

 「・・・・」

 「く、組長!」

沖田は知らないうちに、刀を抜いていた。

そして、二人の激しい戦いが始まった。

スキを見て、長州の志士達はその場を去ることが出来た。

沖田は晴眼の構えから、やや右に刀を開き、刃を内側に向けた。平晴眼と呼ばれる構えだ。

そして、沖田が三段突きを・・・だが、

 「私の突きがかわされるとは・・・」

蛍は沖田の突きを全てかわした。そして距離を置き跳んだ!天誅だ!

だが、

 「お前の方こそ・・私の天誅をかわすとは・・・」

沖田も蛍の天誅をかわした。

だが、

 「ゴホッ・・ゴホッ・・」

沖田が吐血をした。

彼の体はすでに病に侵されていたのだ。

 「・・お、沖田!?」

蛍は、しばらく沖田の様子を見ていた。そして、

 「・・この勝負、お前の病が治るまでおあずけだ」

そう言って、蛍は去っていった・・・

しかし、二人が戦うことは二度となかった・・・


時代の流れは止まらない・・・一八六八年(明治元年)・・・

戊辰戦争の始まりである鳥羽伏見の戦いが幕を開く・・・

だがこの戦いに沖田は参加していない。それだけ彼の病はかなり悪化していたのだ。

彼には分かっているのだろう・・・自分の死期が近いのを・・・

だが沖田は、他の病人達と冗談を言って、笑ってばかりいた。

師でもあり、新撰組の局長の近藤 勇は、

 「あんなに死に対して悟り切っているヤツも珍しい」

と語った。

だが四月二十五日・・・沖田よりも先に、近藤 勇が板橋刑場にて斬首される。

そして、沖田 総司が五月二十五日に病死・・・


 翌年・・・一八六九年(明治二年)・・・

新撰組は、北へ北へと戦い続けた・・・

だが、五月十一日・・・まるで沖田と近藤の後を追うかのように、鬼の副長、土方 歳三が戦死する。

天神流にも、鬼と鬼姫が戦ったという伝説はない。

土方は、蛍が一番戦いたい相手だっただろう・・・

土方自身もそれを望んでいたことだろう・・・

だが土方はこの日、銃弾を受け戦死したのだ。


それから間もなくして、戊辰戦争が終結する。


 一八七〇年(明治三年)・・・

維新後、河上 彦斎は、攘夷思想を曲げ切れず、維新政府と相反し、更には無実の罪を問われ斬首される。享年三十八であった。

蛍はその後、不知火 蛍と名乗るようになった。


時は流れ・・・天神流は、蛍から彦斎に受け継がれた。

彦斎には、三人の子供がいた。後継者となったのは、次男の幻次である。

だが彦斎は、我が子を殺す事ができなかった。二人の子供が、その後どうなったかは、不明・・・

だが彦斎は、天神流の運命を変えた。


 「十四代目となった幻次には三人の弟子がいた。一人は彼の娘の灯、もう一人がルナさんのおじい様、そして、堀辺 正宗・・・僕も、阿の山に行く前に知ったんだけど、この人は、僕のお父さんの師匠なんだ」

 「格闘王の師匠!?」

三人が同時に驚いた。

 「そして、十五代目となったのが、ルナさんのおじい様・・・本来は、後継者にならないと、技を教えてはいけない。堀辺先生も天神流を捨て、骨法などを学び、天神流を越える技を編み出そうとしていた。だがおそらく、幻次の娘不知火 灯が、子供と孫・・・そのハヤトという男に技を教えたんだと思う」

 「じゃあ、ハヤトがこの街に来たのは・・・」

 「私に会うため・・・!天神流の後継者になるには、全ての技を会得し、強い者が後継者になれる・・ハヤトが全ての技を会得しているなら、後継者になる資格があるわ」

 「それじゃ、龍ちゃんはどうなるのですか?」

 「リュウも、全ての技を会得している・・もし本当にハヤトが、後継者になるために、この街に来たのなら・・二人を戦わせて、勝った方を後継者にするわ」

 「龍一がもし負けたら、どうなるのですか?」

 「・・・天神流は、全ての技を会得し、強い者が後継者になれる。負けた者は・・天神流を捨ててもらうわ」

 「僕は戦いますよ!そして、自分の夢のために勝ちます!」

天神流の後継者になるには、大体、二十年くらいかかる。瑠奈ですら、約十四年かかっている。もし、龍一がハヤトに勝てば、七年という異例な早さで後継者になったこととなる。


次の日、桜木高校・・・

舞がハヤトに話かけた。

 「ねぇ、不知火君・・・」

 「なんだ!?」

赤く染めた髪、鋭い目・・・それが、不知火 隼人だ。

 「あなたも何か武道をやっているみたいね!?」

 「・・・関係ないだろう・・・」

 「去年まで、この学校に天神流という古武術の使い手がいたわ」

 「ああ!?ババアの話では、プロのスイーパーと聞いたが・・・」

 「それは、その子の師匠・・・」

 「そうか、弟子がいたのか・・」

 「それで、あなたも後継者になりたくて、この街に来たのでしょ?」

 「そうだ!俺は全ての技を会得している。そして、強い!ババアは、再び天神流を、不知火一族のモノにするため、俺や親父・・祖父ジジイやお袋にまで技を教えた・・ジジイはババアに惚れ、婿入りした。だが、俺が小さい時に亡くなった・・親父やお袋は腰抜けだから、後継者争いから身を引いた・・だが、俺は違う・・・必ず俺が、後継者になってやる!」

 「現継承者である。月形 瑠奈さんが、弟子の神威 龍一と勝負して、勝った方を後継者にするって・・」

 「フン、面白い!」

 「明日、土曜の朝方・・時間は午前四時・・場所はこの紙に書いてあるから・・・後、負けた者は、天神流を捨ててもらうって、おっしゃっていたわ」

 「上等だ!」


放課後・・喫茶LUNA・・・

「一応、伝えてきました」

 「舞ちゃん、ありがとう・・」

瑠奈が、舞にお礼を言った。店には、舞、一、四郎のいつもの三人・・・だが、龍一の姿が見えない。

 「龍ちゃんは?」

 「あいつは、その辺をジョギングしているわ」

ジョギングといっても、龍一がこの時に走った距離は五十キロ以上だ。

戦いは明日の朝方・・・下手に体力を使うと不利になるのは分かっているはず。

だが今の龍一には、五十キロくらいなら、たいした距離ではない。

龍一は、五十キロを走り終え、店に戻った。

 「ハアハア・・ただいま帰りました!」

少し息切れをしているが、とても五十キロを走ってきた感じには見えない。

 「みんな、僕、明日に備えて、もう寝るから・・ルナさん、今日は泊めてもらいますね」

そう言って、店の奥に入っていた・・・


 そして、午前四時・・・

指定の場所に、ハヤトが現れた。

龍一と瑠奈は、一時間前から待っていたようだ。

龍一もハヤトも、天神流の道着を着て、腰には刀が・・・

この戦いは、今までの戦いとは違う。龍一は、瑠奈から奥義の使用も認められている。 

 そして、二人の戦いが始まろうとした・・・

その時、

 「間に合った・・」

舞、一、四郎がやって来た。

 「皆・・・!」

 「天神流の人間じゃない私達が、ここに来てはいけないと思ったのですが、どうしても二人の戦いを見届けたくて・・・」

 「・・ルナさん、僕からもお願いします!」

 「いいんじゃない・・アンタの大切な友達なのだし・・」

 「ありがとうございます!」

 「おい、早くしろ!」

 「ああ・・ワリーな・・」

龍一がハヤトの前に立ち、互いに礼をし、そして、二人の戦いが始まった。

先に攻撃を仕掛けたのは、ハヤトだ。

龍一の頭上より高く跳んだ!天誅だ!

龍一はハヤトの天誅を紙一重でかわした。

だが・・・龍一の腹から血が・・・

 「な、何で、龍ちゃんのお腹から血が・・・?」

 「・・リュウが天誅をかわした後、ハヤトは、抜刀したのよ・・その時、リュウは後ろに跳んだ・・だから、あの程度で済んだのよ・・・もし、リュウの反応が少しでも遅れていたなら・・・死んでいたかも・・」

 「そ、そんな・・・」

 「思ったよりやるな・・・だが、俺の編み出した抜刀術、不知火はかわせないぜ!」

 「抜刀術、不知火!?」

 「行くぜ!」

 「(正面から突っ込んできた・・)」

ハヤトの手が刀に・・・

 「(来る・・)」

龍一は、再び後ろに跳んだ。

だが、

 「(フェイント!?)」

ハヤトは刀を抜かず、龍一の後ろに回った。

 「死ねー!」

ハヤトが龍一の背後を取り、刀を抜こうとした。

だが・・・

バシッ!

ハヤトが刀を抜こうとした瞬間、龍一の後ろ回し蹴りが炸裂した!

 「(な、何!?)」

ハヤトはそのままふっ飛んだ。

 「ば、馬鹿な・・・俺の不知火が・・・」

 「正面から突っ込んで、抜刀するとみせかけ、相手が本能的に避けようとした方向を読み、超スピードで相手の背後に回り抜刀する。それが、お前の編み出した抜刀術、不知火だろ?」

 「くそ・・なぜ、俺の抜刀よりも、お前の蹴りの方が速いんだ・・?」

 「・・・お前が、一瞬ためらったから・・・お前は、俺と同じで、今まで、真剣を持って戦ったことがない・・そうだろう?」

 「・・・・」

 「だから、自分の抜刀術がどれほどの威力か知らない・・だが、最初の一撃目で、自分の剣で、人を殺す事が出来る・・それが、お前には分かった・・そして、心の中で、人を殺したくない・・その思いが、お前の抜刀を遅らせた・・だから、俺の蹴りの方が速かったんだ」

 「なんか、いつもの龍一と違うな・・」

 「そうだね・・いつもの龍一君なら、相手が強ければ強いほど、修羅になるのに・・」

 「リュウは、阿の山で、肉体だけでなく精神的にも強くなったみたいね・・・もしかしたら、私を超えたかも・・・」

 「龍ちゃんが・・・瑠奈さんを超えた!?」

龍一が刀を捨てた。

 「フン、素手で勝負か・・いいだろう・・」

ハヤトも刀を捨てた。

 「(おそらく龍一アイツは、龍神を使ってくる・・ならば、俺も・・・)」

 「行くぜ!ハヤト!」

二人が、同時に奥義龍神を使った!

龍神に必要なのは、常識を超えるスピードだ!超スピードで相手の急所に攻撃する。

数秒の間にどれだけ攻撃出来るかで威力が変わる。

そして、ふっ飛んだのはハヤトだ!

龍一の方が、ハヤトより多く攻撃したのだ。

 「負けを認めろ・・ハヤト・・」

 「くそ・・天神流を捨てるくらいなら、死んだほうがマシだ・・・!俺を殺せ!」

 「俺は、人殺しなんかになりたくないから・・・それに、命は大切にするものだ!」

 「・・・完全に俺の負けだ・・」

 「ハヤト・・俺の父さんの師匠・・堀辺 正宗は、天神流を越える技を編み出そうとした。お前も天神流を越える技を編み出し、また俺と戦おうぜ・・・!それに、お前の編み出した不知火・・あれは、すごかったし・・」

 「・・フッ・・いいだろう・・」

ハヤトの顔から、笑顔が・・・

彼は立ち上がり、刀を拾って、去っていった・・・

舞達3人も、そのまま帰宅し、龍一は瑠奈と共に店に戻った。

この日は、天神流の後継者を決める大事な日、そのため瑠奈の店は休業となった。

龍一がリビングで休んでいると、瑠奈は部屋からある物を持ってきた。

 「これに、お前の名前を書け」

それは、天神斎から瑠奈までの、継承者の名前が書かれていた巻物であった。

この巻物に、名前を書いた者が、継承者の証なのであろう。

龍一は、瑠奈の名前の隣に、自分の名前を書いた。

この時から、龍一は天神流の十八代目となった。

 「今日からお前が、天神流の十八代目だ!」

 「はい・・・!ルナさん・・あの・・えっと・・」

 「どうしたの?」

 「・・前にも言いましたが、僕と付き合ってください!」

 「・・・ゴメン・・お前とは、やはり付き合えない・・」

 「・・・そうですか・・」

淋しそうな顔をしている龍一を、瑠奈は優しく抱きしめた。

 「リュウ・・お前の気持ちに答えられなくて・・本当にごめんね」

 「・・ルナさん・・ありがとう・・」


瑠奈は裏の世界で生きる女・・・

龍一には、もっと、すばらしい女性と出会い、幸せになってほしいと、心の底から思っているのであろう・・・

そして、彼女には分かっていたのであろう・・あの男が生きているということを・・・












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