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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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ウソから出たマコト

作者: 志宇野美海
掲載日:2026/07/06

この物語は『ウソかマコトか』の続編、彼氏視点の物語です。まだ上記の作品を未読の方は

https://ncode.syosetu.com/n8566mg/

から読むことをお勧めいたします。

 イッた。


 思考できなくなるほどの強い衝撃が脳裏を走った。


 2人の乱れる息が同じペースに整っていく。


 マコトはどんな顔をしているだろう。

 薄暗い部屋のせいでよくみえない。

 だが、声と伸ばしてくる手から満足してくれているらしいことがわかった。


 包まれる多幸感。僕は愛されている。

 マコトに愛されている。

 それを実感する。


 彼女の頭を撫でる。嬉しいという感情が掌から伝わる。


 コンドームを外す。


「……はは、いつもより多いかも」


 ウソだ。そもそも最近挿入すらできてなかった。スキンなんて使ったの、いつぶりだろう?


「そうだね、気持ちよかった?」


「うん」


 僕はただ笑った。


 マコトがキスを迫った。情熱的で甘くて思わず声が漏れてしまうほどだった。


 応じるまま、なすがまま応えた。

 彼女からのキスは軽いものが多かった。

 特に事後は。

 そうだ、マコトは結構キスが上手いんだった。


 汚れたあれこれを洗い、シャワーを浴びてベッドに戻るとマコトはもう眠っていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――—


 昔からよく寝る方だったけど、最近は特に入眠が異様に早かった。ゆすっても起きないことも多く、心配だったので理由を聞いてみても


「飲んでる眠剤が強すぎるかも。でもそうじゃないと途中で起きてしまうから。一度先生と相談してみるね」


 とだけ言った。

 吐き気があるからと言って食事をしない日もあった。


"薬を飲むのなんかやめた方がいい"


 という言葉は飲み込んだ。


 もっと遠回しに言ったこともあったけど、普段は温厚な、温厚だったはずのマコトが急に激昂した。


 そのときの僕は妙に冷静で、ああ、ヒスか、と思った。

 女だもんな、という言葉は飲み込んだ。


 僕はしばらくマコトには本心を言わないように努めていた。


 それでいい。僕が我慢すれば、また前のようなマコトに戻るだろう。


 太陽にようにコロコロと笑う。そんなマコトに僕は惹かれていた。


 マコトは僕の癒しなんだ。

 手をつなぐのも、ハグするのも、キスするのも、隣で寝てるだけだっていい。

 ただ、一緒にいられることが幸せなんだ。


 だから、最近の笑顔が減って、家事どころか、身だしなみもままならないような彼女でいられるのは悲しい。どうにか元に戻ってほしい。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 母さんは女手一つで僕を育ててくれた。


 父親は大っ嫌いだ。


 父とも呼びたくない、クソジジイ。


 元から僕なんかにぜんぜん興味なくて、僕を邪魔モノ扱いしていた人。

 そのうえ、酒癖が悪くて、酔った勢いのまま僕に暴力を振るった。それが原因で二人は離婚した。

 僕は当然母さんについていった。あいつを人だとすら思わない。


 父と別れるまで母さんは専業主婦だったが、正社員に戻った。

 仕事をしながら家事もぬかりなくやっていた。

 当然僕も手伝った。当時は小学生だったができることをすこしずつ覚えていった。

 大変だったけど、クソジジイとの生活の何倍も楽しかった。


 精神病を患った後のマコトを労って、母さんは彼女を食事会に誘った。その場でこういった。


「悪いけどね、ウソはね、もう息子とは思わないの。私。同じこの家で戦ってきた戦士なのよ」

「ウチは普通の家族じゃないの、その分ウソには苦労をかけてきたけど。たくさん、たくさん我慢してくれたのよ。一緒に戦ってくれた戦士として、もう息子以上の存在なのよ」


 僕は涙ぐんだ。母さんのそんな率直な言葉なかなか聞かないから。

 マコトは「すごいですね」と相槌を打っていた。


 母さんはその晩、マコトに一言もしゃべらせなかった。


 そしてマコトと別れた後、僕に言った。


「ねえ、あの子ダメなんじゃない?」


「え?」


 そこからはもう、母さんはずっとマコトの嫌味を言っていた。

 売女だとか、いやらしい女とか、他に何を言っていたか覚えていないぐらいひどいこともたくさん。

 結論、精神病なんて甘え病を持つ女なんてろくでもないということだった。


 ママはいつも正しい。冷静で僕を守り、導いてくれた。

 だが、今のママはそういう冷静さを欠いているのもわかった。

 こういうことは初めてじゃなかった。僕の恋愛沙汰になるといつもこうだ。


 僕はもう恋愛なんかできないのかな。

 マコトと別れるしかないのかな。


 いろんな考えがめぐってぐちゃぐちゃになる。


 マコトには言わないことにしていた。

 でも、ある日、酔った勢いでつい言ってしまった。

 彼女はショックを受けていた。そんなことはわかっていた。でも、言うしかなかった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「母さんとマコトに板挟みでさ。俺も辛いんだ」


 家に帰れば、母さんにあんな女とまだ別れてないのかといわれる。休日、マコトの家に来れば、部屋すらまともに片付いていない。休職中のくせに日中何をしているんだ、一体?言わないけど。

 ”甘え病”。母さんに言われた言葉がフラッシュバックされる。


「私は、もっと辛いよ」


 何を辛いフリをしているのだろう?僕がいて。仕事があって。休職できる環境で。僕は同じ会社で毎日もっとしんどい思いをしているのに。


「ウソ。あなたが選べるのは二つに一つだよ」


 なぜ、僕が選ばされる側なのだろう。まるでそっちが上みたいに。


「お母さんか、私か」


 僕は顔をしかめた。そして言った。


「無理だよ、母さんも守りたい。でもマコトのことも愛してる」


 僕の悩みは母さんとお前のことなんだよ。

 お願いだから僕なんか介さずに二人で問題を解決してくれ。

 どっちも、僕に言わないでくれ。僕だって仕事で忙しいのに。

 どうしてこうなったんだ、”愛してる”と言えば、あのとき笑ってくれたマコトに戻ってくれると思った。


 そんな一縷の希望に望みをかけた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「じゃあ、別れようか」


 マコトは泣きながら言った。泣かないでくれよ。じゃあ、言わなきゃいいだろ。でも、お前も、もう限界だったんだよな。俺との関係に未来がみえない、最初にそう言いだしたときに、もうマコトのなかで答えは決まっていたんだ。


「少し外に行ってくる」


 酒でも飲まないとやってられない。強い酒。手っ取り早く酔える酒。戻りたい過去も、自分のこれからも、何もかもを考えたくなかった。

 一方では問題が解決し、一方では問題が手に負えなくなったとも考えられた。


 しばらく近くの公園で酒を飲みマコトのアパートに帰った。缶は洗って台所のシンクで乾かした。いつもみたいに。


 そうして僕たちは別れた。

 ウソみたいに上手くいったセックスだったのにな。

恋愛って難しいですね。

(時間があったらこの作品の解説なんかをちゃんとやってもいいですね)

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