引っ越し Chapter3.
引っ越し Chapter3.
海斗と遼は車で新居へと向かっていた。
遼の実家からはそこまで遠くなく15分ほどで着いた。
早速ダンボールでまとめられた荷物をバケツリレーの要領で次々と降ろしていく。
全ての荷物を降ろすのに30分ほどで終わったが、
9月であっても残暑が厳しく炎天下の中での作業のため汗だくになっていた。
2人は飲み物を飲み、少し家の中で休むことにした。
運んできた椅子に腰をかけながら飲み物を飲む遼と海斗。
「あー生き返るっ!」
と海斗は見上げながら言った。
「本当今日来てくれてありがとうな」
と遼は、汗を拭きながら海斗に言った。
「良いって!俺らの時も引っ越し手伝ってくれただろ?」
「あぁ、そうだったな」
「だろ?お互い様だって」
と海斗はにやっと笑うと
「あの時は海斗の事、少し羨ましく感じてたんだよなぁー卓が奪われてるなぁって感じて」
と遼はしみじみと考えながら言うと
「ちゃんと奪わせてもらいましたけどね」
海斗のにやついた笑顔に
「こんにゃろぉ」
と遼は海斗のにやついている笑顔の頬を軽くこずいた。
「引っ越しの時は、俺の方が遼に嫉妬してたよ。
何しても卓は俺の方を見向きもしなかったんだから」
海斗の言葉に遼は黙って聞いていた。海斗は続けて
「でも、卓は俺の事を選んでくれた。それが嬉しかったんだ」
海斗の晴れやかな表情が遼には爽やかなイケメンにしか見えなくて眩しく感じられた。
「なぁ・・・遼?」
海斗は遼の方を向いた
「なんだよ」
「リサの話聞いてさ、思った事がある。
もし遼がいなかったらきっとリサは自ら命を絶っていたかもしれない。
遼がリサを必死にこっちに繋いでくれたんだと思う」
「そうかな・・・」
「リサじゃないから分からないけど・・・
もし俺がリサの立場で…もし俺を置いて卓がこの世を去ったらって考えたら、きっと俺はこの世に未練なんてなくなる」
「そんな事言うなよな」
「だってどうなるか分からないだろ・・・俺にとって卓は全てだから」
海斗の言葉に遼は言葉を失った。
セミが煩く鳴いている声だけが聞こえる
「なぁ海斗・・・お前が卓を追いかけて死のうとすることがあったら。俺が止めてやるっ。絶対」
遼の言葉が海斗の耳に残った。
「そりゃあ酷だなぁ」
と海斗は渋い顔をすると続けて
「でも、ありがとう」
と海斗は笑顔で答えた。
「ってか、やめろよな。なんかそういうのフラグに聞こえるから」
と遼は再び海斗の頬をこずくと
「ゴメン。ゴメン。そういえば卓にも同じように怒られたなぁ」
と海斗は笑いながら言った。
「本当だよ。もうこの話はおしまい!」
と遼は区切りをつけるように言った。
「そうだな。・・・あぁそういえばっ!
遼の父さんと仲直り出来たのかよ。
結局どうなったのか俺聞いてないんだけど」
海斗は遼の方を顔を近づけながら言うと
「顔近いってっ!親父には話したよ。
全部…俺がバイセクシャルだってことも・・・俺の両親は俺の事を認めてくれた」
遼の言葉に海斗は顔がぱっと明るい表情をしていたが
心の中では思いつめたような様子で
「そっか。良かったな」
と海斗は言った。
「海斗の家庭の事情を知ってたから言わなかったんだ。
本当はすぐに言いたかったんだけど」
遼の言葉に
「良いんだよ・・・遼の家族は良い家族で良かったな」
海斗の言葉に
「なんだよそれ。自分の家はまるで最低な家族だって言いたいのか」
と遼は少し強い口調で言った。
「だって、実際そうだろっ。お前に、親に勘当された俺の気持ちなんか分からねぇよ」
「・・・卓にもそう言ったのか」
「言った…かもしんない」
「・・・そう。俺はあいつ見たく優しくないから言うけどさ。
それはずりぃよ海斗・・・
お前の気持ちなんてお前以外の誰も分からない・・・
けどさっ大切だから大事だから分かりたいと思うのは当たり前だ」
「・・・ごめん」
「別に、良いよ。ただ自分の家庭と比べられるのはいい気分はしないって話。
さぁそろそろ行くか。2人が待ってる」
「そうだな」
海斗はそう言うと立ち上がった。




