失恋 Chapter2.
フラれたはずの遼が卓とフィリピンデート!?
失恋 Chapter2.
チュンチュンチュン
鳥の鳴き声と太陽の明るさに、
遼は目を開けた。
「遼おはよっ!」
遼は聞き覚えのある声に、後ろを振りむいた。
目の前に映る光景に、遼の目頭は熱くなった。
「卓どうして・・・」
俺のアパートに卓の姿が・・・
「なんでって、お前がこっちで住んで欲しいって言ったから
フィリピンまで来たんじゃないか」
少し照れくさそうに笑う卓の表情。
「でも、俺、フラれて・・・」
「何言ってんだよ。寝ぼけてるのか・・・折角両想いになれたんだから」
そう言うと卓は遼が寝ているベッドに腰を掛けた。
「これからはずっと一緒だよ」
微笑みながら顔を近づける卓の表情に
遼の心臓は高鳴った。
「でも・・・あれ・・・?」
遼は戸惑いながら辺りを見渡した。
「ここ俺の部屋だよな・・・夢だったのか・・・」
遼の動きに卓は笑いながら
「変なやつ・・・ほらご飯作ったから食べてよ」
と卓は言った。
机には美味しそうに焼かれた目玉焼きとトースト、
ホットコーヒーがそれぞれ2人分用意されている。
「勝手に家の中のあるもので作ったけど大丈夫だった?」
と卓は言うと、
「うん。大丈夫・・・これ卓が作ったのか?」
「そうだよ。なんだよ・・・その意外っていう目・・・」
卓はムスッとすると
「いや、卓の料理なんて見た事ないからさ」
「目玉焼きくらい俺だって出来るし!!」
卓のムスッとした顔に
可愛いなぁ・・・
と思いながら、目玉焼きを口の中に入れる。
こうして2人でご飯を食べる日が再び来るなんて
二度と来ないと思っていた。
それが今起こっている現実に遼の胸は高鳴った。
「遼、今日は休みだろ?
俺服とか今着ているのしかないし、
他に何も持ってないからさ
一緒に買い物に行こうぜ!」
卓の言葉に
「あぁ、そうだな」
と遼はコーヒーを飲みながら呟いた。
卓と2人でデート・・・
公式に、ちゃんと付き合った状態で、デート・・・
遼は平然を保ちつつ、心の中でワクワクしていた。
遼はパジャマを着替えて、洗面所に行くと、
歯ブラシが丁寧に2つ並べられていた。
卓と2人の同棲生活が始まった感が高まり
遼はさらに嬉しくなった。
歯を磨いていると卓が隣に来て
「俺も隣で一緒に歯を磨いて良い?」
と卓と近づいてきた。
遼はびっくりしたが頷くと、
卓は自分の歯ブラシを取り歯を磨き始めた。
こんな些細な1つ1つ動作に
遼は改めて卓が好きだという事を実感していた。
好きな人が隣でいて、ただ日常を過ごす。
それだけで毎日がこんなにも明るく照らされていくのだと・・・
歯磨きが終わり、
身支度を整え、2人は外へ出かけることにした。
近所にある大型ショッピングモール。
ここに来れば生活に必要なものがあらかた揃う。
日本とは違った雰囲気のショッピングモールに
卓は目を丸くしながら辺りを見ていた。
「すげぇー!海外のショッピングモールでかいなぁー!」
「そうだろ?迷子になるくらい広いからな・・・」
遼の言葉に、卓は遼の手を掴んだ。
「じゃあちゃんと手をつないでおかないとね」
卓の言葉に遼は思わず卓から目を反らした。
なんだこれ・・・この感じ・・・
「お・・・おぅ・・・」
今まで意識していなかったのに、
卓の行動1つ1つにドキドキする。
今まで付き合ってきたどの人とも違う。
こんなにも俺は卓の事を・・・
「恥ずかしがってる遼可愛い」
卓は遼の顔を覗き込んだ。
遼はちらっと卓の方を見ると、
自分より頭1つ分小さい卓が
遼を覗き込んでいる。
頬が赤くなってる卓の顔に遼は照れながら、
「卓の方が・・・かわいい」
とボソッと小さな声で呟いた。
「えっ・・・今可愛いって」
「なんでもない!早く行くぞ!」
遼はそう言うと卓の手を引っ張った。
男同士で手を繋いでデート・・・
思ったよりも周りの目は気にならなかった。
それよりも
卓の手を握っていられる、
そのことの方が幸せだった。
まるで自分達だけの世界が広がるように、
俺と卓は確かにこの時、世界の中心にいた。
「卓?どこから見に行く?服とか?布団とかも揃えないとな」
「うん。そうだね・・・
とりあえず、一通り散策したいから
歩いてみて気になるとこ入っていきたいかな」
「りょーかい」
2人はショッピングモールを
手を繋いで歩きながら気になるお店に入っていった。
服屋さんに行くと
「遼・・・俺の服選んでよ!」
と卓は言うと、遼はおぅ・・・と言いながら洋服を選び始めた。
「やっぱり卓はパーカー似合うよなぁー。
コートとかビシッと決まった服よりも、ラフな方が似合う。
少し大きめのサイズの方が卓の可愛いさが増すと思うんだよね。
ズボンは足のスタイルは良いから細目のジーパンにするか・・・」
そう言いながら遼は卓に洋服をあてがっていく。
「ほうほう?どうにおぅー?」
「匂うじゃなくて似合うだろ?うん!すげぇ似合ってる!良いと思う!」
「そっか!じゃあ俺この服着ようっと。遼もお揃いにしようよ」
卓の言葉に遼は少し顔を赤らめながらおぅと答えた。
今までお揃いなんて着た事なかったし、
自分が着たいものを着ていたけど、
好きな人に合わせるというのもありかなと思えた。
「どうだ?似合うか・・・」
「うん!似合う似合う!今度これ着てお揃いで遊びに行こう」
「そうだな!そうするか!」
卓と2人で行きたい所ならたくさんある。
海はきれいだし、
景色も良い所も全部卓と一緒に共有したいと思えた。
2人はモールの中、
飲み物や軽食を食べ歩きしながら、
ショッピングを楽しんだ。
食器類や布団、お揃いの寝間着などなど
必要なものをあらかた買っていく。
買い物をしながら、
卓とのこれからの同棲生活に胸を躍らせていく。
楽しい・・・
海外出向に来てこんなに楽しい思いをしたのは初めてかもしれない。
俺はずっと卓を求めていた。
その事に蓋していたが、一気に込みあげてくる。
遼はフラれていたことなどすっかり忘れ
卓との甘い一時を堪能していた。
卓と遼の2人の・・・