約束 Chapter6.
約束 Chapter6.
3人は体を洗い終えると、湯船に浸かることにした。
冬の露天風呂は空気が冷たかったが
湯船が暖かく体が溶けでてしまうような感覚に
3人は大きく深呼吸をする。
「はぁー久しぶりの3人でお風呂だぁー」
卓は気持ちよさそうに伸びをしながら言った。
「本当・・・何年ぶりだろうなぁ・・・」
と遼は卓の方を見ながら微笑んだ。
「前は毎月の様に遊んで、風呂入って、次の予定立ててたよな」
と海斗はしみじみと思い出しながら言った。
「4月から日本に戻るからまた前みたく遊べるかもな」
遼の突然の報告に一瞬時が止まった
えーーーっ!!
「何その情報、初耳なんだけど!」
「そうだよ!俺も聞いてない!」
突然の発言に驚く卓と海斗。
「あれ?言ってなかったけ?あぁそうだ。今日言おうと思ってたんだ」
遼は笑いながら言うと
「なんだよ。それ!いつ戻ってくるの?」
「4月からかな」
「家は?」
「とりあえず実家」
遼の発言に質問攻めをする卓と海斗。
海斗はともかく卓は嬉しい気持ちが声に出ていた。
「本当は10月に異動の話は出てたんだけどさ、
正式じゃなかったから黙ってたんだよね。
それにフィリピンに残ることも出来たからさ」
遼はそう言いながら空を見上げた。
その表情はどこか寂し気で、未練があるように感じられた。
それは卓も海斗もなんとなく察したが
2人はそこを突っ込むことはせず、遼が戻ってくる話を続けた。
「遼が戻ってきたらどこ行こうか」
卓は早速遼とどこ行くかの話を煮詰めようとしていた。
「まだ気が早すぎだろ。3か月も先の話だからな。
それに俺にだって用事というものがある」
「そうだよ。はぁ・・・。
また卓がリョウリョウ言う日々が続くのかぁ・・・
俺だって嫉妬しちゃうんだからな」
と海斗は卓の方を見ながら言うと
「それは・・・ごめん」
「良いって。卓は俺の事を一番大切にしてくれてるって信じてるから」
海斗のその言葉に見つめあう2人に
「おーい。そこー。イチャイチャするなぁー」
と冷ややかな目で見る遼。
「べ、別にイチャイチャなんかしてねぇし。なんなら遼も入る?」
と卓が言うと
「そうだなぁ。入ろうかな」
と遼はニヤッと笑った。
朝、会った時はぎこちなかった3人だが、
今は以前の様にまた冗談を言いながら話し合える仲に戻っていた。
「そう言えばフィリピンどうなの?」
話の中で卓は遼に聞いた。
「海が綺麗だな。
ダイビングしてさ。
魚の群れとか凄いの。
サンゴ礁も綺麗だったな。
リサとそれから・・・敦。
俺の仲良かった2人がいてさ」
と遼は敦と最初に会った時の旅行の話を始めた。
仲が良かったと敦の事を言って良いのか少し迷ったが、
遼は敦と仲良しであったと思いたい気持ちもあってかそのように話した。
「すげぇんだよ。敦の筋肉。がっしりしてて。胸襟とかも大きいし脚も太くてさー」
「それで敦に惚れたんだ」
海斗は遼の話に割って入ると
「そうそう・・・って違・・・わなくはないか。
まぁ良いんだよ。過去の話だから」
と遼は言い続けて
「あれは確かに一目惚れだったなぁ・・・」
と呟いた。
卓と海斗は訳ありだったんだろうと思い、
海斗はそこまでは聞かない様にしようと留まった。
「その敦って人は凄く良い人なんだね。俺も一度会ってみたいなぁ」
と卓は相槌を打つように返した。
「もうこの世にはいないんだよ」
と敦は呟いた。
すーっと冷たい風が吹いていく。
「11月26日に東京で火災があっただろ。
あの事故で亡くなった消防隊員。
あの人が一ノ瀬敦さんなんだよ。
・・・ゴメン。暗くなるような話をして」
「いや良いんだよ。俺の方こそごめんな。辛かっただろ遼・・・」
「まぁな。たった一度会っただけなのに俺の中で特別な存在になったんだよ。
でも俺よりももっと敦の事で深く傷ついた人もいるからさ・・・
ここから先の話は長くなるからお風呂出てからにしよう。俺のぼせてきちゃった」
ぎこちなく笑った遼のその表情で、
まだ傷が癒えていない事が分かった。
それでも話すことで気持ちが軽くなれば、
2人はそう思い、お風呂から上がった後に
遼のフィリピンでの出来事を聞くことにしたのだった。




