初夜 Chapter3.
お風呂から上がった卓は、自分の服が無い事に気づく。
だが海斗は準備万端だった。
初夜 Chapter3.
卓と海斗のシェアハウスから同棲生活に変わった初日の夜。
風呂場からは2人の賑やかな話し声であふれていた。
卓は体を洗い終えると海斗は湯船に来るように促し、声をかけた。
「カモーーーン」
海斗は指を一本一本を動かしながら、手を前に出しながらそう言った。
「発音が外国人っぽいな。湯船があふれちゃうよ」
と卓は言うと
「大丈夫…おいでぇー」
と海斗は少しいやらしい声で促した。
「なんだ…こいつ」
卓は笑いながら、湯船に足を入れた。
ざぶーーーっと、湯船に張ったお湯が溢れ、みるみる減っていくのがわかる。
成人男性が2人入るにはちょっと狭い湯船だが
2人は体を寄り添わせながらお湯に浸かった。
「つかまえーーた」
と海斗は卓の体に近寄っていく。
「やめろってただでさえ狭いのに!
ちょ、ちょっと股間当たってるって」
卓の言葉に海斗は嬉しそうに笑っている。
それにつられて卓も笑顔になっていく。
2人はお風呂時間を満喫した。
卓と海斗は湯船から出て、
バスタオルで体を拭いた時、
卓は大事な事を思い出した。
「俺…下着も寝間着も全部家に持って帰っちゃったんだった」
それどころか、明日着る服も全部自分の家に持って帰ったことを思い出した。
「大丈夫だよ」
海斗はそう言うと、
押し入れから替えの下着と寝間着一式を持ってきた。
「卓に似合うと思って買ってたんだ」
海斗の言葉に沈黙が流れた。
「海斗…これさぁ、俺がもし帰らなかったらどうするつもりだったの?」
卓の言葉に、海斗は少し間をおいて
「それは…神社で供養してもらおうかと」
「おいっ!」
卓のツッコミに
海斗は、ははっと笑いながら
「だってこれ、多分そんじょそこらの呪物よりも
重た~い思いがかかってると思うんだ」
「そんな訳ないだろ!」
「いやいや卓にだってあるだろ。特級呪物」
「あっ・・・」
卓は遼からもらったお揃いの縁結びのお守りを思い出した。
「あれは確かに思い強すぎるかもなぁ・・・」
海斗の言葉に妙に納得した卓は海斗から渡されたパンツをはいた。
「海斗これ・・・」
「いや!似合う!最高!!」
「これブリーフじゃねぇか!!」
「卓のブリーフ姿見たかったんだよね」
「こいつ・・・」
卓はブツブツと文句を言いながらも、
寝間着に手を伸ばした。
「これ!シロブチ犬だぁ!」
白い斑で上下セットのモコモコの生地。
フードを被ると耳もついている。
「あぁーかわいぃー絶対卓に似合うと思ったんだ。
着てくれるなんて幸せ…最高ぉ・・・」
「すげぇ~めっちゃ可愛いじゃん」
と卓は言いながらくるっと回った。
「あぁ…これを買った時を思い出すよ…この服を着て俺と卓が住んでくれますようにって願掛けしながらお会計したんだよなぁ」
会計の時に両手を合わせてお願いをする海斗を想像して
卓は少し愛おしいと思ったが、同時に
「俺・・・こんな思いが重すぎる寝間着着て呪い殺されないかなぁ」
とボソッと呟いた。
「大丈夫だって!
もしかしたらその願掛けのおかげで
こうしてまた一緒に過ごしてるのかもしれないじゃん」
と、海斗の言葉に
それって願いが叶ったから逆に怖いんだよなぁ・・・
うん…明日、荷物実家から持って来よう・・・
卓はそう決心したのだった。
こうして長い長いお風呂タイムも終了し
夕食のピザを食べることにした2人であった。
ピザは2人で食べきるのには十分すぎる量で、机いっぱいに並べられていた。
まるで何かのパーティのように、机の上のピザ達を
卓と海斗は美味しそうに食べていた。
半分ほど食べ終えた頃、卓はふと海斗に聞いた。
「そういえば、俺洋服も皆持って帰っちゃったから
明日着る服、この寝間着しかないんだけど…もしかして・・・」
卓の言葉に、ピザを食べる海斗の手が止まった。
やっぱり・・・
「えへへっ…
実は、卓に似合うと思った服、
こんなこともあるかと思って色々買っていたのでぇす」
「そんなシマリス君みたいな言い方しなくても」
「いぢめる?」
高音ボイスで首をかしげる海斗。
「いじめてやる、いじめてやるぅーー!」
卓は海斗の口の中にピザを放り込んだ。
ピザをそこそこの量を食べ終え、
満腹になった2人は、残りは明日の朝食にすることにした。
「さぁ…じゃあ飯も食べたことだし、やりますか!」
海斗のその言葉に、
卓はえっ…やるの?と
冷たい目で海斗を見た。
そして、卓はしぶしぶ隣の部屋に行った。
「それじゃあ!ただいまから卓のファッションショーを開始しまーす」
と海斗は声を上げると、隣の部屋から卓の大きなため息が聞こえた。