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初夜 Chapter2.

日が暮れ、薄暗い部屋で2人きりになる。

お互いの気持ちが交わるように体が触れ合っていく。

初夜 Chapter2.


風呂掃除をした卓がリビングに戻ると、

海斗は微笑みながら

「随分遅かったね!待ちくたびれたよ」

と卓を見つめながら言った。


「う、うん…ごめんなぁ」

卓は海斗にそう言うと、続けて

「俺…ちょっと2階行くね」

と言った。

「そんなこといちいち言わなくても、

なんかよそよそしいなぁ」

と海斗は笑って返した。


卓はリビングの扉を閉め

2階に上がり自分の部屋を確認した。


部屋は卓が出て行った時と全く同じまま状態のまま保存されていた。

卓がいなくなっても卓の部屋はきちんと掃除をされていた。

隣の寝室を見に行っても、昔と同じように卓と海斗2人の布団が敷かれていた。

卓の分の布団も冬用の暖かな羽毛布団に変えられていた。


俺が…いつ帰ってきても良いように・・・

海斗は本当に俺の事をここで待ち続けていたんだ・・・


夕日が落ちはじめた薄暗い寝室。

卓は自分の背中に海斗のぬくもりを感じた。


「卓…遅かったね。待ちくたびれたよ」

さっき聞いたような言葉を、もう一度卓の耳元で囁いた。


「海斗…ありがとぅ」

卓は海斗の手に触れながらそう言った。


夕日は沈み、部屋は徐々に暗くなりお互いの表情は見えない。


お互いの吐息と心臓の音がうるさく聞こえる。


冬の寒い部屋、2人の体を寄り添う。

今はお互いのぬくもりを・・・

ただただそれだけを・・・

肌と肌が交わる感覚を感じていたい。


部屋には脱ぎ捨てられた服が折り重なっていた。


お風呂が沸いた音がリビングに広がっていたが、

2人は降りてこなかった。



日はすっかり沈み、部屋は真っ暗になった。

卓は手元にある灯りをつけると

ほわっと暖かな電球の明かりが、一つの布団に包まれた2人を染めた。


お風呂入ろうか・・・

海斗の言葉に、うんと卓は頷いた。

お互いの顔見つめフフと笑う2人。



ピンポーン


「やべぇ!ピザ忘れてた!」

海斗は大急ぎで飛び起きて服を探していると

卓はすでに着替えていて、

「ピザ受け取りに言ってくる」

と下へ降りて行った。

「早っ!さすが早着替えの卓!」

と海斗は驚きながらそう言った。

ピザを受け取った卓はリビングの机に置き

そのまま2人で風呂場に向かった。


卓は軽く体を流すと湯船に浸かり、

その横で海斗は体を洗い始めた。


「あったけぇー…愛してるよぉーお風呂ー」

体が湯船に溶けていく感覚。

ほわっとした空気に包まれていく

海斗は体を洗い終え、湯船に浸かっている卓と交代して体を洗い始めた。


「なぁ、卓さぁ…覚えてる?俺が家を飛び出した日の事」

海斗は湯船に浸かったまま言うと

「うん覚えてるよ・・・あの日はシャワーだけだったけどね」

「あの日だよ。俺が卓とどんな時でも一緒にいたいと思ったの。

どんな形でも良い。ずっとずっと卓のそばに居たいって思った」

海斗の顔は少し赤く火照(ほて)っている。

「そっか…あの時の俺は海斗が目の前からいなくなるのが怖かった。

だけど遼の事も諦めきれなかった。

結局俺はどっちも手に入れたかったんだよね。

よくよく考えるとずるい奴だよなぁ」

「今更かよ!卓は結構我儘(わがまま)でずるい奴だってことは分ってたから」

海斗の返答に図星な卓

「じゃあ俺のどこが好きなんだよ」

と卓は言うと

「どこが好きだと言われると困るなぁ…

でもそうだなぁ…

どこが好きかって言われると・・・」


例えば、ふとした瞬間

君がそばに居て微笑んでくれる。

バカな事いって笑かしてくれる。

お化け屋敷でやたらツッコミいれるとこや

気分が良い時に歌うへんてこな鼻歌や

俺を見つけた時に走ってくる君の姿や

食事の時美味しそうに食べる君の姿。

そんな仕草1つ1つ全部。


ぼーっとした時にちょっと前歯が出た時の顔とか

笑った時に涙流して大笑いした時の顔とか

俺の横でうたた寝してる時の顔とか

怒らせたときに見せる八の字になる眉とか

びっくりしてきょとんとした顔とか

君が見せるちょっとした表情や感情

その全てが愛おしくて

その全てを独り占めしたい


世界中の誰よりも君の事を好きだから

君のそんな些細な我儘やずるい所なんて

(かす)んでしまう


なんて言葉じゃ

足りない位君の事が好きだから


「卓が好きな所はこの世界の言葉をどれだけ探しても見つからない」

と海斗は答えた。

「そんな恥ずかしい答えをぱっと出しちゃう所がすげぇよ」

と卓は笑って答えた。


「あぁーもぅ卓のせいでのぼせて来ちゃったよ」

と海斗の顔はさっきよりもさらに赤く火照っていた。


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