北海道 Chapter5.
北海道 Chapter5.
卓と海斗はレストランを後にして
きりん舎とカバ館の方へ向かうことにした。
道中に出店がありダーツのミニゲームをやっていたが、客は1人もいなかった。
卓はその出店に興味を持ちスタスタと歩いて行った。
海斗はその後について歩く。
テントの前には大きな的当てのダーツがあった。
的には特賞が一番小さな的で残りは残念賞だった。
「やっていきますか?」
元気の良いお兄さんがテントの中から声をかけてきた。
卓はやりたいと言った目で輝かせていた
「じゃあ2人で1回ずつやります。」
海斗はそう言いながらお金を払った。
1回500円。特賞はホッキョクグマのぬいぐるみで、矢は一本のみ。
最初は卓の番。
集中し狙いを定め、
気合を込めておりゃあああと
投げた。
矢は一直線に的よりも外へと飛んで行った。
「あぁぁぁ!おしぃ!」
「いやぁ全然惜しくないだろ!」
海斗はそう言いながら、卓に言った。
「よーく見てろよぉー!」
と海斗は言いながら店員さんから矢を受け取った。
気が付くと、卓と海斗のテンションの高さと
賑やかな声に人だかりが出来始めていた。
「見てろよぉぉぉ」
海斗はそう言うと狙いを定めた。
矢はきれいに放物線を描いて、特賞の的にあたった。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
「すげぇぇ!当たった!当たった!」
卓と海斗は大喜びして、気が付くと周りから、拍手喝采の渦になっていた。
「じゃあ景品のホッキョクグマのぬいぐるみですね」
そう言うとお兄さんは卓にホッキョクグマを渡した。
海斗が当てたはずなのだが、
お兄さんも卓が欲しがってるんだろうなとすぐに分かったんだろう。
卓はありがとうございますと言いながら両手で受け取った。
さっきまでガラガラだった出店には人が増え始めていた。
「なんか俺らのおかげでお客さん沢山来たみたいだね」
卓はそう言いながら笑うと
「まさに客寄せパンダみたいだな。ま、パンダよりずっと可愛いけど」
「なんだよそれ・・・でもありがとう」
卓は少し照れながら、海斗に笑顔を見せた。
2人は次の目的地きりん舎に向かって歩いた。
きりん舎はキリンの頭の上の高さからみられる所と、
足元から観察できる二つのブースに分かれている。
卓たちはまず上を目指しキリンの頭の高さからの位置で観察した。
普段みられないキリンと同じ目線の高さに興奮した卓は目を輝かせていた。
「すげぇまつげ長い!めっちゃべっぴんさん」
卓はそういった。
キリンは餌箱から起用に長い舌を出して、はっぱを食べ始めた。
「すげぇ!こんなまじかに見るの初めてかも」
卓はとても興奮していた。
海斗はそれを幸せそうに見ていた。
きりん舎を地下に行くと、キリンの足元から観察することが出来た。
細長い足をゆっくりと動かしている。
下から見上げるその体の大きさを体現するように、卓はキリンと同じように首をのばしてみていた。
「なんか卓ってさ。周りを幸せにするよな」
海斗の言葉に卓はびっくとして
「なんだよ。急に幸せにするって・・・海斗の方が幸せにするだろ」
「いや、なんというか・・・素直で真っすぐで見ていてあぁ・・・幸せだなぁって」
「何か子ども扱いしてない?それ・・・」
卓の言葉に海斗は
「さぁ次行こう」
と言うと
「あぁ!図星だなぁ!」
と卓は海斗の後に続いた。
きりん舎とカバ館は地下で繋がっていて、地下からカバが泳いでる姿が見えた。
前足と後ろ足を動かしながら器用に泳ぐカバを一通り見て卓達はカバ館を後にした。
卓たちが次に訪れたのはサル山だった。
大きな岩山にニホンザル達が群れを作っている。
低位置から高位置まで360度いろんな角度から観察することが出来る。
この施設は卓にとって最高に魅力的だった。
餌を取り合うサルや窓ガラスの奥に隠れる子ザル、毛づくろいするサル。
いろんなサル達がこの1つの岩山にいた。
「ニホンザルと一括りに言っても個性が色々あるんだなぁ」
卓はぼそっと呟いた。
そういえば、高校生の時、
喫茶店のマスターが言っていたのを卓は思いだした。
生物は生き残るために同じ種族に個体差を作った。
大きな者、小さな者、賢い者、臆病な者、呑気な者。
それが多様性。私たちは皆違う者だが、それは間違いではない。
誰にも優越などつけられることはない。
それをまさに今このサル山の中で卓は目の前で肌で感じていた。
「なぁ。海斗・・・皆違って皆良いんだな」
卓のぼそっと呟いた言葉に海斗は頭の中にはてながいっぱい出てきたが
「俺は人と違う卓が好きだよ」
と応えた。
卓と海斗はサル山を後にして、再び園内を周り始めた。
いろいろな動物を観て回りながら2人は東門の方へと向かった。
東門の入り口付近の撮影スポットがあり
ホッキョクグマやペンギン、あざらしなどのオブジェが飾られていた。
「1枚どうですかー?」
そこではカメラマンが写真を撮り、その写真を購入することが出来た。
せっかくだし、記念に1枚撮ってもらう事にした2人はカメラマンへお願いをした。
そこには撮影用の被り物があり、自由に使って良いことになっていた。
卓はアザラシの被り物を、海斗はホッキョクグマの被り物を被った。
ポーズは2人とも既に決めていた。
海斗は卓に向かってぐわーっと口を開いて食べるポーズを、
卓は、ひぇーっと手をぐーにして怯えているポーズで写真を撮った。
「良いですねぇー最高ですぅ」
カメラマンも笑いながら言うと、卓と海斗の北海道の記念がまた1つ出来た。
東門を出る頃には15時になっていた。
卓達が入ったのは正門のため、まだ見ていない側から周ることにした。
チンパンジーやオーラウータンやエゾシカの森を通り、
オオカミの森を通り過ぎてもうじゅう館に入った。
もうじゅう館はガラス越しでみるタイプで、トラやクマが近くに観察できた。
「おっかけねぇー」
と2人はびくびくしながらも、もうじゅうを観察した。
猛獣間をでる頃は、夕方にさしかかっていた。
そして2人は最後に
卓と約束していたオオカミの森へと向かうことにした。




