初夜 Chapter1.
空港で遼と別れ、卓は海斗と家に帰宅し、初めての夜を過ごす
初夜 Chapter1.
あの日を思い返すと、恥ずかしくて顔が赤くなる。
あんな大声で愛の告白を、
しかもあんなに大勢の前で・・・
でもあの時、
空港で海斗の姿を2年ぶりに見て、
あぁ・・・
俺はこんなに・・・
俺も好きだったんだって思えた。
・・・「それは俺も同じだよ卓」
ちょっと!海斗!
人のナレーションに勝手に入ってくるなよなぁ。
まぁまぁ良いじゃないか!
その時の卓の顔は今でも覚えてる。
こんなに愛おしい人はこの世にいないと思えた。
卓とようやく付き合えた真実がまるで嘘みたいで
その日の夜の、、初夜のことも俺は鮮明に覚えてるよ
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「ただいま!」
「おかえり、卓。」
久しぶりのシェアハウス。
何一つ変わっていない。
「なつかしいなぁ・・・」
卓はそう言いながら玄関で乱雑に靴を脱ぎ
そのままリビングへと向かった。
懐かしいリビングに卓の目が潤んだ。
そうか・・・
2年間、海斗はここでずっと俺を待っていたんだ。
卓はソファーをみつめた。
確か俺はいつもここに座ってたよなぁ。
卓は自分がいつも座っていた位置に座った。
「うぅ・・・たくぅーーー!」
海斗はソファーに座っている卓を
後ろからぎゅっと抱きしめた。
「卓がここにいるぅー。ずっとこの日をぉ・・・」
海斗の心からの叫びと表情を見て、
卓は嬉しくなり、なされるがまま海斗のぬくもりを感じた。
「ありがとう・・・。
海斗。おまたせ・・・」
以前は毎日顔を合わせていた2人だが、
2年という歳月が、お互いの存在の大切さについて
改めて考えさせてくれた。
「もう17時か・・・
今からご飯作るの面倒くさいから外食にする?」
卓は海斗に聞くと
「えー!ここで食べたい!
せっかく卓がこの家に帰って来たんだから、ここが良い!」
「じゃあ出前にするか・・・」
「良いね!ピザにしよう!」
海斗はそう言いながら、卓の隣に座り
腕を卓の肩に回して引き寄せながら
自分のスマホを見せた。
「一緒に選ぼう」
画面にはメニューが表示されていた。
「なんか・・・海斗急に積極的じゃね?」
卓は恥ずかしくなったのか
茶化すようにそう言うと
「だってぇ、卓が俺の事好きになってくれたんだよ。くっついてたぃー」
海斗ってこんなに甘えんぼだったんだなぁ・・・
なんか可愛いなぁと卓はクスっと笑った。
海斗との体の温かさ。
この景色・・・この温度・・・
今までの時間は、全てこの瞬間のためにあったんだと思えるほど
卓にとって海斗は大切な存在に変わっていた。
2人でくっつきつつメニューを選んでいると海斗はぼそっと
「ねぇ・・・俺ピザも良いけど・・・卓も食べたいな」
と呟いた。
あまりの強烈な発言と
柔らかな海斗の表情と
生暖かな吐息に、卓はびくっと立ち上がった。
「ふ、ふろ沸かさないと!ねぇ!ほら!疲れてるからさ」
卓はすくっと立ち上がり風呂場に向かった。
胸が…ドキドキする・・・
卓は自分の胸を抑えながら風呂場の扉をあけた。
卓は風呂の掃除をしながら、
この風呂場で一緒に体を洗った、
あの雨の日の事を思い出していた。
初めて海斗の裸を生で感じたあの時間。
柔らかくて、人肌を初めて感じた。
あの日の出来事を思い出し、また胸がざわつきはじめた。
そういえばあの日も海斗は凄く積極的で、
あいつの本心を初めて感じた日だ。
あの日、俺に告白して…俺が断った時、
もしあの時、海斗が俺のことを諦めていたら、
俺はここにいなかったかもしれない。
あいつはどんなときも
俺の事をずっと好きでいてくれたから
今こうしていられる。
卓はその気持ちに目が熱くなった。