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溺愛したくもなるよね。
「…………わぁ」
「ふふっ。もう幾度も目にしているはずなのに、まるで初めて見るような反応だね更衣」
「あっ、いえ……その、あまりにもお美しくて」
それから、翌朝のこと。
思わず感嘆を洩らす私に、少し可笑しそうに微笑み告げる帝。そんな私の眼前には、言葉に尽くせぬほど美しい赤ん坊――この物語の主人公、光源氏の姿が。もちろん、親になったことなどないので知ったようなことを言うのもどうかと思うけど……うん、これは溺愛したくもなるよね。
ところで……ひょっとして、私が生きていたらその後の彼の人生ももっとまともな……いや、この言い方だとまるで彼の人生がまともじゃないみたいだけど……ともあれ、私が生きていたら、この子は物心もつかない頃から親との死別などという悲痛な経験をすることもなかったわけで。……うん、どうにか生き抜かなきゃね。