……ほんと、いつも通りで。
「――おはよ、帆弥。……あれ、どうかした?」
「あ、ううん何にも! おはよ、真姫」
通学路にて、少し不思議そうに尋ねる女子生徒にすぐさま首を横に振る私。彼女は山崎真姫――二年五組のクラスメイトで、数少ない私の友人で。
……そうだ、一応、真姫にも尋ねてみ……いや、止めとこ。母みたく、精神科を勧められでもしたらそろそろ心折れそうだし。
「……こうして、彼女は五人の貴公子から求婚を受けるも――」
それから、数時間経て。
三限目、迫り来る眠気に耐えつつそっと窓の外を眺める。……あれ、結構寝たはずなんだけどな。
それにしても……うん、ほんと何にも変わんない。普通に起きて、ママがいて、真姫と一緒に登校して……あと、割愛したけどなんか複数の女子に軽い嫌がらせを受けて――そして、今こうして授業を受けて。ほんと、昨日までと同じ……ほんと、いつも通りで。
……やっぱり、ただの夢? ただの、長くておかしな夢? ……もう、二度と――
「…………あれ?」
「ん、どうかしたか沢山」
「……あ、その……」
ふと声を洩らした私に、不思議そうに首を傾げ尋ねる先生。……いや、どうかしたも何も――
「……あの、先生。確か、今日は昨日の――源氏物語の続き、ですよね? なのに、どうして――」
「……? いや、ちょっと待ってくれ沢山」
そう尋ねるも、なおも不思議そうな表情を浮かべたままの先生。そして、
「……源氏物語って、なんだ?」