私にとっての幸せは――
ともあれ、そういうわけで桐壺帝は帝位に即かず、源ちゃんと同じく臣下に――まあ、源氏の姓を賜ったわけではないみたいだけど。あと、帝位に即いてないんだからそもそも桐壺帝ではないんだけど……まあ、そこはご容赦を。他の呼び方とか知らないし。
さて、そうであるからして私――再び桐壺となった私も、もはや更衣ではない。まあ、帝の后の呼称だしね。
だけど、そこは神様の思し召しか――位は違えど、私に対する呼び方は変えないよう調整してくれたようで。
……うん、やっぱり彼には――帝には、こう呼んでほしい。誰よりも……それこそ、藤壺だった頃を凌ぐほどの愛情を注いでくれていた、あの頃の名で呼んでほしいから。
「……ふふっ」
「ん、どうしたんだい更衣」
「ううん、なんでもっ」
突然、笑い声を洩らす私に不思議そうに尋ねる帝。そんな彼に、軽く首を横に振りつつその綺麗な手をそっと握る。
……うん、やっぱり。これが、私にとっての幸せ。位なんて関係ない――ただ、一番大好きな人と寄り添い生きていく……これ以上、望むものなんて何もない。だから……これからもずっと、ずっと――