決断
「…………」
そう、真っ直ぐに話す源ちゃんを無言で見つめる私。まあ、やっぱりそうだよね。
さて、朱雀院の姫君とは女三の宮――突如、源ちゃんの正妻となった14才の女の子。そしてまさしく今、彼はその件について話していて――
「……その、言い訳がましくはなるが、私はお断りする所存だったのだ。だけど……ご病気のためか、院があまりにも弱られていてね。そのような状態で、頼る者が私しかいないと仰せられて、それで……」
すると、私の反応をどう解釈したのか、少し覚束ない口調で事情を説明する源ちゃん。まあ、当然のこと事情も分かってるんだけどね。
……まあ、それはともあれ返事を。今一度、改めて彼の瞳を真っ直ぐに見つめる。そして――
「……どうか、お謝りにならないでください。他ならぬ朱雀院さまのご要望なのです。お断りできようはずなどないことは、不束者の私でも承知しております」
「……紫の君」
そう伝えると、少し驚いた様子で呟く源ちゃん。怒ると思ったのかな? まあ、そう考える方が自然かも。
「……さて」
「……紫の君?」
思わず、そんな言葉が洩れる。……まあ、分かってはいたけど……うん、やっぱりそうみたい。軽く首を傾げる源ちゃんへ、徐に口を開いて言った。
「……お願いがあります、源氏の君。どうか――私に、出家の許可を頂けませんか?」