表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/124

明石

「……お疲れ、惟光これみつくん。大丈夫?」

「……はい、君さま。ご心配のお言葉、ありがとうございます。君さまこそ、大変お疲れかと存じます」

「……うん、ありがと」



 その後、暫し経過して。

 覚束ない足取りで浜辺へと上がりつつ、互いを労う惟光と私。そんな私達が到着したのは明石――言わずもがなかもしれないけど、明石あかしきみの住まう地で。


 ところで、どうしてこんなに疲れ切ってるのかというと……まあ、小さな船にて此処まで漕いできたから。ええ漕いできましたよ。えっさほいさと二人で漕いできましたとも。……うん、ほんと疲れた。



 ……ただ、それはそれとして。


「……なんか、良いところだよね。須磨も明石ここも」  

「そうですね、きみさま。私自身、やはり京都みやこが恋しくはありますが、それとはまた違った風情があるかと」

「そう、そうなの!」  


 そう、沁み沁みと話す惟光に強く同意を示す。そう、そうなの! 京都はもちろん好きだけど、それでも須磨も明石もまた違っ――


「…………あっ」


 すると、不意に声が洩れる。風情漂う立派な邸宅の辺りにて、すっかり馴染みのある美青年と初めて目にする美少女の姿があったから。場所、時期双方から明石の君と見て間違いだろう。お互い、まだぎこちなさはあるものの――それでも、既に多少なりとも惹かれ合っている様子は遠目からも窺えて。そんな二人の姿に、私は――



「……帰ろっか、惟光くん」

「……へっ? あの、光君ひかみきみにお逢いになるのでは――」

「……うん、そのつもりだったんだけど――ごめんね? 付き合わせちゃって」

「……いえ、君さまがそう仰るなら」



 そう言うと、困惑を浮かべながらも素直に従ってくれる惟光。……うん、悪いことしちゃったな。折角、協力してくれたのに。

 


 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ