ご無沙汰?
ともあれ、何とも楽しいリアクションをしてくれる青年と共に浜辺を歩いていく。えっと、たぶんまだ須磨にいるはずだけど――
「…………ん?」
「……ん、どうかなさいましたか紫の君さま」
「……あ、ううん」
ふと声を洩らす私に、少し首を傾げ尋ねる惟光。そして、そんな彼に軽く首を横に振り……いや、うん、まさかね。まさか、流石にこんな遠くにまで――
「――お〜久しぶりじゃの〜パープル〜」
「そのまさかだったよ!!」
相も変わらずふらふらやって来る酔っ払いもどきへ声を上げる私。いや何処にでも来るんかい!! あと、誰がパープルだよ。
「……あの、如何なさいましたか君さま。突然、奇声などお発しになって」
「へっ? あっ、いや何でもな……あれ、いま奇声とか言った?」
唐突にも程がある私の叫びに、呆然とした表情で控えめに尋ねる惟光。……いや、奇声とか言わないで? 急に叫んじゃったのは申し訳ないけど。
……ただ、それはともあれ――
(……ねえ、神様。おおかた分かってはいたけど、やっぱり……)
そう、声を潜め話し掛ける。……いや、もはや何の意味もないんだけどね。分かってはいるけど……まあ、それでも気持ち的に。
ともあれ……声が届いたのか何となく察したのか、納得したような笑みを浮かべる神様。そして――
「――ああ、もちろんわしの姿はお主以外には見えておらんし、当然のこと声も聞こえとらん。つまり、惟光にはお主が急に虚空へ叫んだように見えてるだけじゃから安心して良――」
「すっごい嫌なんだけど!!」