テンプレ通りには進まない
「海白 春さん、貴方は転生モノでよくあるトラックによる事故死をなされました。その死に様が目にとまったため、異世界に転生する権利が与えられました。わーいパチパチ」
意味がわからん。なんだここは。そして誰だこの人。頭が上手く回らない。なんというか変な気分だ。とにかくまずは冷静に考えてみよう。
ここは辺り一面見るだけでSANチェック入りそうなくらい神々しさと得も知れないヤバさが入り混じる真っ白な空間。んで、この人は……人?は多分神様だろうな。顔わからないけど姿的に多分女神かな?
「せいかーい!そうですよ。私は貴方の住む世界とは違う世界の神であり、秩序と混沌を司る二律背反を体現している女神様ですよー」
思考を読むのは神様の標準的な能力ですか?別に読まれて損はないどころか楽なのでいいですけどね。転生モノでよくあるし。
「えぇ、えぇ、ラノベや漫画だとよくあることですからね。神が相手の思考を読んで会話するなんて。それはそうと冷静ですねー」
そうですよねー…自分でもここまで冷静でいられるのかと驚いてますよ。
あと、冷静になってきたから気になるんですけど、最初に言ってた異世界に転生する権利ってなんですか?何処に転生するんでしょうか
「あぁすっかり忘れていました。転生先ですが…現代ファンタジーの世界ですね。貴方のいた地球とほぼほぼ同じですが、ダンジョンが存在します。そして、この世界ではダンジョンから手に入るモンスターを召喚して戦わせられるカード、【モンスターカード】があります!これを使ってダンジョンを探索しますよ!」
おぉーその世界は、ラノベで見たことあるので大部分は分かりますけど、もしかしたら違うかもなので色々説明お願いします。
「かしこまりましたー
では、まず現代ファンタジーの舞台は貴方のいた現代に瓜二つです。また政治云々も殆ど同じなのですが、ダンジョンを探索する者達を探索者といい、彼ら彼女らを支援する法律があります。探索するには15歳以上でなければいけない法律もありますけど、注意するような問題も有りません。」
「次に、肝心のダンジョンについてですが、ランクがあります。このダンジョンにつけられたランクに応じて難易度が変化しますが、ダンジョンの階層は一切関係ありません。モンスターの強さが基準です。なので数階層程度のAランクダンジョンや100階層をゆうに超えるFランクダンジョンなんてものもあります。頑張ってくださいね!」
あのー、転生に関して一つ質問なんですけど、いいですか?
「はい、何でしょうか?先ほどの説明に何か疑問があったりしましたか?」
ダンジョンのモンスターとして転生するのはありでしょうか?
「………」
流石に駄目ですかね。ただの思いつきだったので断られること前提ですので。でも面白そうなんですよね、僕がこれまで読んできたラノベや漫画で現代ファンタジーの話でも主人公は皆、人間なので。モンスターとして生きてみるのもいいかなって…
「それいいですね!採用!それではモンスターとして転生させます!」
まじか。ラッキー
それじゃあお願いします。
「構いませんよ。こちらとしましても初めてのことですので大盤振る舞いで行きます。それじゃあ早速作りましょう!」
よし、どんなモンスターになって見ようかな〜
それにしても女神様、ノリ良すぎでは?話してて楽しいからそれでいいけど。
◇◇◇
これ何?よく分からない人形が魔法陣の中に立って、いや浮いていますが…それにディスプレイに色々ありますけど。
「これを元にして、貴方が転生するモンスターを造形します。さぁ、まずは容姿からですよ!
それと、モンスターは基本的に人の形に近いほど上位種になりますので、強力なモンスターにするのでしたら人型にしておくのがオススメです」
なるほどです。なら強いほうがいいので人型で決定するとして、髪は白色かな。瞳の色は右目は金色で、左目は青色にして、取り敢えずAPP18位の容姿にしたいな。
「そうだ、海白 春さん、性転換って気になりませんか?」
え?何言ってるんですか女神様?
「いえ、貴方なら女性になっても支障がなさそうだなと。男の娘みたいな容姿だし。あと極めて個人的な都合ですので、できれば性別を女性にしてくれないかなと」
まあ、面白そうなのでそれ採用します。となれば色々と考えを変えて……胸の大きさは小さめでいいか。
「え!いや絶対大きいほうがいいですよ。勝手に変えちゃいますよ!それに貴方は男ですよね。大きいほうが好きなんじゃないですか!」
いや邪魔そうだから。あと僕、男ですから確かに大きいほうがって、あぁもう、
こんな事話したくないし面倒なんでそっちで決めといて下さい。
「…ふふふ……はい!いいですよ」
妙に元気ですね。まぁ、外見についてはこんなものでしょうか。
目の前の美少女は、ロングの白髪で金と青のオッドアイをしており、身長は166cmと表示されている。胸の大きさは女神様が勝手にいじくり回した結果Cカップ位になっている。これについてはあまりわからないけど。
「さてと、これにて外見は完成ですね。次に、モンスターとして最も大事な部分である能力値とスキル、そして特に大事なランクについての設定をしていきましょう」
まずは説明下さい。なんとなくは分かるけども、詳細とかは何も知らないのでそれからです。
「勿論ですとも。まずモンスターの能力値は攻撃力・防御力・魔力・抵抗力の四つになります。HPやMPといったものはありません。また、基本的にランクに応じて能力値の限界が決まっています」
「そして、スキルについてですが、種族として習得しているスキル、そのモンスターの才能によって習得しているスキル、モンスターが努力や特定のアイテム等によって後天的に習得しているスキルなどがあります。これも、ランクに応じて習得できるスキルの限界が決まっています」
ランクはとんでもなく大事ですね。それで、僕は何ランクのモンスターになるのでしょうか?種族とかスキルとかも。
「それは、貴方が全て作るんですよ」
………まじかよ
◇◇◇
あの後、ランクを最高のSランクにして、種族をできるだけカッコいい名称に、能力値とスキルを合ったものにした。その結果がこれだ。
―――――
種族∶天嵐の護聖霊
名前∶
ランク∶S
攻撃力∶3550
防御力∶5500
魔力∶8000
抵抗力∶7500
スキル∶[天嵐][天候操作][精霊魔法][守護聖域][神盾][癒しの光][空中機動][魔法無効][マルチキャスト][エンチャント][最上位精霊]
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ランクは S が一番上でGランクまで存在する。そして各ランク毎に、能力値の上限は大きく変わり、GランクからDランクまでは上限が1000ずつ増加し、CランクからAランクまでは2000、Sランクは5000も増加するため能力値の上限は15000となる。
スキルの方はランク一つ上がるごとにスキルの習得上限が5つずつ増えていく。Sランクは40個までのスキルを習得できる。
僕が習得したスキルは、全部で11個。どれも強力なものばかりらしい。スキル名で強いと分かるものが多いね。
「さて、それではそろそろ転生するとしましょうか。準備は良いですか、海白 春さん」
「はい、勿論ですよ」
「貴方の声を聞くのは始めてですよ。それも転生する身体で聞くのが最初とは…」
「なんかごめんなさい」
「別に構いませんよ。それでは、貴方の次の生活がどうか幸多からん事を」
視界が歪む。白かった空間がより白く、輝いているように感じる。その光景を最後に「海白 春」の意識は途絶えた。