外の話
「お〜」
「お嬢様可愛い…んんっ、そういった行いはあまりしないでくださいね」
「あ、はい?」
現在、屋敷の外どころか更に、王都の城壁外の中よりちょっと治安悪めの場所に来ました。大丈夫かな?
まぁ、先生が付き添いとして来てくれているから安心できる。その先生の案内で、探索者ギルドにやってきて登録した。絡まれたりはしなかったよ。良かった。ギルドマスターが震えていたような?大丈夫か。
その後、ギルドから10分くらいの場所にある遺跡のような構造物の前までやってきた。周りを見てたら先生は職員らしき方から渡された石を見せて教えてくれた。
「お嬢様、これがアーティファクトというものです。探索者はこのダンジョンからアーティファクトを発掘して、ギルドに売却したり自分で使用したりするのです」
「なるほど。先生も持っているんですか」
何気ない疑問だったけど、先生に聞いてみた。そしたら先生は腰の剣を指して、
「えぇ、このショートソードがそうですよ。評価3の【鉄鬼の魔剣】と呼ばれるアーティファクトで、自己修復機能と斬撃を遠くに飛ばす能力、剣の巨大化能力を持ちます。」
「評価?ってなんですか」
「教えていませんでしたね。評価は探索者ギルドが定めたアーティファクトの価値基準です。評価1なら能力は一つだけ、評価2なら能力が二つあるとかですね。あと、評価が高いと値段も比例して跳ね上がります。」
「じゃあ、その剣は貴重なんですか?」
「そうですよ。たいていの探索者は評価1か2のアーティファクトしか持っていないので」
思いもしない場所で先生の凄さがわかったような気がする。そして、その上がまだまだ存在するらしいことも。
◇◇◇
「ダンジョンってジメジメしてる」
「最初はそういう感想になりますよね。私もそうでしたよ」
「そーなのかー」
「お嬢様、そのような言い方はあまりしないで下さい。貴方は世間では深窓の令嬢として通っていますから」
「分かってるよ先生」
「はあ」
ダンジョンに入ってみて最初の感想は酷いものだ。思ってた通り、まぁまぁ高めの湿気と涼しさを感じる。ラノベのダンジョンとかこういう表現してるよね。楽しい。
「あ、アーティファクト」
「え!お嬢様、何処ですか!」
「!?…こ、このキレイな石みたいなの」
「幸先いいですねお嬢様!」
「あぁうん」
運が良いけど、先生キャラ変わり過ぎじゃない?少し怖いんだけど。何なのこの人。最近じゃ一緒にお風呂入ろうとしてきたし。なんか悪寒を感じて拒否したけど。
いや関係ないか。話を戻してこの石みたいなアーティファクトなんだろうか。知りうる限りだと、投げると爆発する【ニトロメタル】、使い捨ての身体強化ができる【バフストーン】なんかが当てはまりそう。何なのか気になるし、早く帰って調べてもらおう。
「先生、帰りましょう。」
「え!あぁ、これを調べるんですね」
「はい!気になるので!」
「元気がありますね。まぁ最初はこれくらいにして戻りしょうか」
このあとギルドで調べてもらった結果、【魔法の琥珀】というジャンクだったそうです。効果の無いアーティファクトはジャンクとして一纏めにして捨てられたり、装飾品として使えるものは加工して販売するそうで、この琥珀もその類いだそうです。まぁ持って帰って飾りますが。
あー楽しかった。また来たいな。
▽▽▽
side ギルドマスター
今日、この探索者ギルドのギルドマスターとして三年ほど任されている俺は、大変な目に遭っていた。
なぜも何もグリーンストーン公爵家の御令嬢がこのギルドとダンジョンに来たのだから。なんで?通達の手紙を三度見したが俺はおかしくないはずだ。職員には通達したが、何か粗相をしでかさないよな、大丈夫だよな……あぁぁ、胃が痛い。
あぁ、何とかなったか。疲れた。特に精神面で。とにかく粗相をしないように俺も、職員も気を張ってたからな。他の探索者にもある程度話しといて良かったぜ。判断を間違えなくて良かった。本当に。
「ハァぁぁー」
「ギルマス、随分と疲れたようだな。大丈夫か?」
「ん、あぁ、ピーターか。お前にも通達したろ、貴族様が来るから気ぃつけろと。」
「そういえばそうでしたね〜まぁ俺はダンジョン潜って躱しましたが」
「クソッ羨ましい」
「ハハッ」
「それやめろ、何かウザイ」
この飄々としてる、笑い声が馬鹿みたいにうざったいこいつは探索者「ピーター」
評価4のアーティファクト【伝達の神風ヘルメスウィンド】を所有しているこのギルド最強の探索者だ。ていうかダンジョン潜ってたのかよ。こいつも苦しめばいいのによ。
まぁ、何はともあれ、貴族様がなんてこと無いジャンクを手に入れてくれて助かった。偶にいるんだよな、アーティファクトが手に入らなくて大騒ぎする貴族糞馬鹿ゴミ野郎が。
あの貴族の少女がそういう傲慢なタイプじゃなくてよかったぜ。ついでに手に入れてた琥珀も売ってほしかったが、飾ると言われれば引き下がったが、まぁ、問題ねぇだろ。
「そういえば、あの『剣鬼』が来てたぞ」
「え!マジですかギルマス!」
「おう、貴族の付き添いでな」
「まじか、ダンジョン潜らずにギルドで待機してればよかった。畜生!」
「おいおい、机を叩くな。それよりもお前がいなくてよかったぜ。本当に、話がややこしくなるか騒ぎになりそうだったからな。」
いやー本当に、ピーターは『剣鬼』様ガチ恋勢だからな。絶対に貴族に突っかかってたぜ。いなくてよかった。てか、なんか震えてね、こいつ………
「あぁあぁあああああ嗚呼あゝあああアァあぁあ!!悔しい!!なんてことしてたんだ!俺は!」
「うるせぇ!」
はあ、まぁ明日からは何時もどおりだ。こいつ叩き出したら寝るか。